12日午後5時(日本時間13日午前5時)からブラジル・サンパウロで行われた、『2014 FIFAワールドカップ(W杯)ブラジル大会』グループAの「ブラジルVSクロアチア」(アレナ・ジ・サンパウロ)戦。
開幕戦ともなったこの試合で、日本代表より一足先に「W杯ブラジル大会」のピッチを踏んだのが、西村雄一主審(42)と相楽亨(さがらとおる)(37)、名木利幸(42)の両副審からなる日本の審判団。日本人がW杯の開幕戦で審判を務めるのは初めての快挙。3人は最後まで毅然(きぜん)とした判定を続けたが、西村主審のPKが物議を醸している。
問題のシーンは1-1で迎えた後半26分ころのこと、クロアチアDFロブレンがブラジルFWフレジをペナルティーエリア内で倒したとして、西村主審はロブレンにイエローカードを提示し、ブラジルのPKを宣告。これをネイマールがきっちり決めて2-1としたシーンだ。
PK直後もクロアチアの選手たちは猛抗議し、試合終了後には、クロアチアのニコ・コヴァチ監督は、「あれがPKならバスケの試合だ。バスケだったらあの種のプレイはファウルになる」と怒りをあらわにした。
問題のシーンをビデオで見てみると、クロアチアDFのロブレンの左手がブラジルFWのフレッジの左肩にかかり、シュート体勢に入っているように見せながら、オーバーアクションでフレッジが倒れた。しかし、クロアチアDFのロブレンの左手がブラジルFWのフレッジの左肩に手をかけて押さえ込んでいるのは事実だ。ルール上、何の問題もない。だからといって、そんな簡単に倒れてしまうほど脆いフィジカルでないことも事実だろう。
でも、あきらかにシミュレーションとも言えないのではないか。しいて言うならばフレッジの“技あり”であり、クロアチアサイドからすれば、「厳しい判定だ」とまでは言えるが「誤審」だとか、「主審は素人同然だった」(ニコ・コバチ監督)と言うのは言いすぎだろう。
歌手の宇多田ヒカル(31)も13日、自身のツイッターに「I hope Croatian people don‘t hate Japanese people after their unfortunate match against Brazil today…」(ブラジルに負けた不運な試合の後でも、クロアチアの人々が日本人を嫌いにならないでほしい…)と英語でツイートしていたが、その3時間後に、「周りのサッカーファンがみんな誤審だって騒いでたから鵜呑みにして失礼な冗談を書いてしまった 西村さんごめんなさいorz」と、再ツイートしている。
ジャッジ、特に接触プレイの基準はその国によって大きく差がある。ガツガツと身体ぶつけあっているプレイスタイルのところでは、「ノーファウル」だろう。ところがセッショクプレイを好まないところでは、「ファウル」だろう。
これはサッカーに限ったことではない。野球も国際大会となれば、いろいろな国から審判が集まってくる。日本国内でもストライクゾーンに関しては、高低に甘い人、左右に甘い人、高めが乾く低めが甘い、内角が辛くて外角が甘いなど、特徴がある。審判の癖を見抜くのも技術だし戦略の一つだろう。
全体的に見れば、前半26分にはブラジルFWのネイマールに対しても、イエローを毅然と出しているし、多少の接触プレイや反則は、アドバンテージを見ながら試合をブツブツと切らず、動かすようにしていたと思う。決して、クロアチア監督が、「彼はブラジルとクロアチアに対し、異なる判断基準を持っていた。我々を共通なルールでさばいていなかった」ということはないし、あのプレイがホームアドバンテージだとも思わない。
いずれにしても主審からしてみれば、「難しい判断だった」ことは間違えない。主審によっても「PK」「シミュレーション」「立ちなさい」と、まちまちの判定となったプレイだろう。それは選手も審判も普段プレイしているリーグでの「慣習」によるところが大きい。「慣習」は「慣習」であって、「正誤」とは別の問題である。