お笑いコンビ『インパルス』板倉俊之(35)と堤下敦(35)が6日、東京・渋谷ユーロスペースで行われた『樹海のふたり』(監督:山口秀矢/配給:アーク・フィルムズ)の初日舞台あいさつに、女優の“エンクミ”こと遠藤久美子(35)、山口監督とともに登壇した。
板倉は、「子役時代からずっと芝居に打ち込んできて、35歳にしてようやく、主演というものをいただけたので長かった。おもちゃのCMから、ここにたどり着けて嬉しいです」と、ボケる。
そして、堤下が真面目にあいさつしていると、板倉が、「(堤下は、)ジャニーズJr.から始めたので」とふると、それを受けた堤下が、「あの頃は本当に苦労して、何もいいことなかったんですよ。バク転できれば売れると思っていたんですけど、声がかからなくて・・・」と話をつなぐも、最後は、「富士山も世界遺産になりまして、とてもいいタイミングでこの映画が公開されてとても嬉しいです」と、まじめに締める。
そんな雰囲気に乗っかって、板倉の妻役を演じたエンクミも、「私はいつぐらいから演ってたんですかねぇ」と板倉にふると、「元々女スパイだったんですよ。しかも二重スパイだった。表に出るということが勇気いるんですけど、逆に出た方が狙われない」と、まさかの展開。エンクミも、「そうですね。小さいころからスパイを・・・それぞれの人生があるんですねぇ」と、乗っかる。
すると、板倉が、「そんなそれぞれの人生が交錯する映画になっております」と、キレイにまとめる。それにエンクミが、「前回(完成披露試写会の舞台あいさつ)全然しゃべらなかったから、考えてきた気がします」と、ズバリ。板倉も「見抜くの禁止(笑い)」と、タジタジ。
監督は、「富士山が世界遺産になったのが光の部分だとすれば、いまも行われているであろう、影の部分があるということですね」と、自殺志願者のドキュメンタリー番組を作るために富士の樹海に行き、そこで、視聴率と他人の人生を商売にすることの狭間で悩む2人の落ちこぼれディレクターのドキュメンタリーを基にした映画のストーリーを説明する。
映画初主演にして、初めての舞台あいさつに臨んだ今の心境について板倉は、「不思議な気分ですけどね。芸人やる時点で、映画の主演なんてないだろうと思っていたので」と、神妙に語る。
セリフのある役者が35人いて、主役の2人だけが半年以上かかっても決まらなかった。そんなとき、プロデューサーからインパルスというお笑いの2人組がいると紹介されたという。監督は、DVDを見て、人間観察をしっかりしたシュールなコントがイメージにピッタリということで、2人に会ったところ、板倉が富士の樹海を舞台にした小説を書くために、樹海に何度も足を運んでいたことを知る。
監督は、「半年悩んでいたものが15分でやりましょうとなった」と、不思議な縁に導かれたというと、堤下が、「僕は、板倉のバーターですから」とすねる。
MCが、「烏丸せつこさんと濃厚なシーンを演じたじゃないですか」と、堤下をフォローすると、「監督が、R指定を付けたくないので、ギリギリのラインで演じてくれと、いわれて、けっこうギリギリを演じてくださって、濃厚な時間を過ごしました。残念でした。できれば最後まで・・・」と、ニヤケる。
おすすめシーンについてエンクミは、「板倉さんは、仕事の苦悩。障害児の子供がいる家庭の苦悩。いろんな苦悩を抱えているんですけど、息子を抱きしめるところがある。板倉さんと息子の雰囲気が好きで。堤下さんは、子どもが書いた絵を見た時の表情がすごく素敵だった」
エンクミのいいシーンについて板倉が、「ベランダから手を振ってくれるところ。僕の心のハードディスクには焼き付いています」と、板倉が身も心も疲れ果てている状態で、樹海から帰ってくるのを、エンクミがベランダから手を振るシーンを上げる。
エンクミも「逆から見てもいいシーンでした。板倉さんがポツンとしているのもいい。抱きしめたくなる感じです」と言うと、板倉は、「抱きしめてくれればよかったのに」と、悔やんだ。
ストーリーは、落ちこぼれのプロデューサー2人が、起死回生に「『樹海』に足を踏み入れる自殺志願者のドキュメンタリー番組」を制作。大ヒットとなったが、取材対象者たちの人生に触れた時、視聴率と良心の板挟みに悩む姿を描いた、実話から生まれたヒューマンドラマ。
同作は、7月6日より東京・渋谷のユーロスペース他全国順次公開