7月1日に市制100周年を迎えた川崎市が6月29日に中原区の多数のスポーツ施設群を有する都市公園・等々力緑地で川崎市市制100周年記念事業「かわさき飛躍祭(ひやくさい)」が開催された。19時キックオフの川崎市制100周年記念試合「川崎フロンターレVSサンフレッチェ広島」戦を前に敷地内に設置されたステージトラックで、「中村憲剛FROとブルーインパルスパイロット江尻卓さんのトークショーが行われた。2回にわたってお届けする。
(取材・撮影:伊藤直樹©ニュースラウンジ)
MC メンバーが変わるまで3年と言うことですけど、江尻さんは今は何年目ですか?
江尻 私まだ1年経っていない。7月20日でまる1年になります。
中村 ブルーインパルスに入るのって。すっごい難しいって伺いましたけど、タイミングとかもあるじゃないですか。
江尻 3年のそのタイミングで変わるので、自分が3年のタイミングで行ける時にいないと当然ダメですし。
中村 そこは狙ってた。
江尻 ん…?。(苦笑いで答えづらそう)
中村 (そんな江尻さんの様子を見て)ごめんなさい。なんかごめんなさい。でも計算しないといけない。そうですよね。いや、結構それ大事じゃないですか。サッカーもそうなんですよ。やっぱりその、年齢層別れてて、僕じゃ若手の時に中堅の方とか、別に同じポジションの中にどこが誰いるかとか、 移籍で誰かなって考えますから。それに当然それに近い試合に出るために考えますから。運も必要です。誰何歳がいつどのタイミングで来るかみたいなのもありますからね。だから、見極めですよね。もうそうなってくると、そういうだけじゃなくて、状況を読む力も必要となってくるそうで。
江尻 ええ、それはそうですね。はい、すいません。運だけじゃなかったです(と、最後は、狙って計算して狙っていたことをほぼ認めさせていた)。
中村 いや、それも日頃から準備されてるからですよ(と、逆にフォローする中村FRO)。
MC 航空自衛隊のパイロット(ブルーインパルスのパイロット)に就きたいと思ったきっかけは、お父様の影響だったとか。
江尻 私の父が初代の映画『トップガン』が非常に好きで、小さい時からずっと洗脳教育を受けました(笑)。それを見て私はもう自由にこの空を飛ぶ。飛びたいっていうので。
MC 憲剛さん。やっぱりあれだけのアクロバット飛行なので、メンタルの強さって相当なんだろうなと思うんですけど、 どう思われますか。危険と隣り合わせって。
中村 僕は高所恐怖症なんですよ。ジェットコースターも全然ダメ。三半規管も多分弱いんで。 あの重力に負けるタイプなんですよ。だから本当にすごいなと思います。メンタルですか。それともこう三半規管から鍛えるんですか?
江尻 三半規管は人によりますけど。慣れてきますね。ずっとああいうことばかりやってると。それが当たり前のようになって。
中村 そうですね。飛ぶこと自体は怖くはないですね。
江尻 そうですね。慣れですか。飛んでもクルッて回れって言われた時って、(イヤ)それは!?…とは思わなかったですか?
江尻 思います。
中村 1番最初にクルッて回ったのいつですか。
江尻 それでも、学生でもやるんですよ。実は自衛隊の学生もで、ウイングマンっていう操縦者になるための資格を取るときにグルッと回ったり、スピンしたりします。ただ、相当上の高い高度でやってるんですよね。
中村 高い高度の方が怖くないですか。
江尻 高いと何かあってもすぐ落ちるわけじゃないから。大丈夫っていう意味で高度が高いんですよ。でも、今日みたいに低いところでやるっていうのは、実はブルーインパルスしかないんですよ。最初は怖かったです。やっぱり地面が見えるので。
中村 それも慣れですか。
江尻 克服したので慣れですね。不思議なもんで慣れてきました。
中村 メンタルというか、その怖さを、どう克服していくんですか。ほんと、繰り返すことで?練習と一緒ってことですか?
江尻 そうですね、練習と一緒なんですけども、やっぱりこう、我々、地上準備がもう9割以上って言われていますので、地上で綿密に計画して、実際やるときも何回も、イメージフライトと呼ばれている、要は自分が今飛んでるような状態で、操縦感を動かして、今こう曲がったなとかっていうようなのをずっと、ひたすらずっと繰り返します。あとは上空で、例えば緊急事態が起きた時は、今日もちょっとありましたけど。そういう時に、じゃあどうするっていうのは常に考えて、地上の時から考えてますので、あとは、上空になったら、そうなったら、じゃあこういう形でやっていきますのでと。メンタルというよりは、運はなんでしょうかね。いい準備がいいメンタル作るみたいな、そういういい言葉ですね。
中村 あると思います。ちゃんときちんと練習、厳しい練習を積んで 試合に臨むのと、そこそこのトレーニングして臨むのでは、試合の時のその緊張感と不安感みたいなのもあって、全然。やっぱりそうですよね。そこそこの練習の時の不安です。
江尻 我々ちょっとそこそこの時はちょっとないので、あんまりは。
中村 そうですよね。結果、そこそこの練習だったっていう。その時は全力でやってるんですけど、もっとやれたみたいな。ちょっと冷や汗が(笑い)。
MC 憲剛さんも、いつも完全完璧な準備をすれば、いろんな不安を取り除けるっておっしゃってるんで、そこは本当に共通してると思いました。で、お2人がオンとオフの切り替えもどんなふうにされてるのかなっていうのは気になります。オフって何されるんですか?
江尻 私、趣味がドライブとか、あとはツーリングとかゴルフもしたりとか。私、単身赴任なんで、普段は家族と離れて住んでるんで、休みで本当にオフの時に。休みの時は家族と会って子供と過ごす。そういったところがやっぱ1番リラックスできるかなと。
MC こういう緊張感のある仕事の中で、切り替えって憲剛さん大事ですよね。
中村 大事だと思います。むしろ、そこのメリハリがついてる人はもうほんとにメリハリがつけばつくほど、いい仕事ができるんじゃないかなっていう風には思います。サッカー選手は90分試合して、かなり やっぱコンディションを回復しなきゃいけないですね。あとご飯も食べなきゃいけなかったりするんですけど、そういう意味では、体の負荷もそうですけど、頭もかなり疲れるんですよね。特にもう90分、プロの中でやるっていうのは、ほんとへとへとになる。そこを1回ちゃんとオフ、リフレッシュするために、頭から切り離したり…。
江尻 そうですね。はい。我々も一緒で、ずっと仕事のことだけを。先ほど地上準備をすごくする、イメージフライトをするって言ったんですけど、それはもちろんするものの、やっぱり何もしない、何も考えない時間は重要だと思っていて、ずっと仕事のことしかやらないと、やっぱりパフォーマンスが落ちてきます。いくら準備をしてもそれが発揮できる状態にな、はいってならないように、やっぱりオフでしっかり切って、また切り替えてっていう、その頭と気持ちの切り替え、そういったところが非常に重要だと思います。
MC お2人の今後についても伺いたいなと思うんですが、江尻さん。ブルーインパルスとしてはっていう目標でもいいですし、個人的なものでもいいんですが、今後どのようなことをこう目標とされてらっしゃるんでしょう。
江尻 個人的というよりは、飛行隊ブルーインパルスとしては、今日のように皆さんに展示をして、全力で展示をして喜んでもらえるような、ちょっとでも笑顔になっていただけるような、 そういったところを目指して頑張っていきたいと思います。
我々ブルーインパルスはまだ今後、今シーズン、いろんなところに全国各地行きます。航空祭になると今日とは全然違ったような 科目を色々やりますので、是非皆さん、今日ここに来てくださっているように、生で我々のフライトを見て楽しんでいってもらえればと思いますので、どうぞ今後ともまたよろしくお願いします。
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異色トークショー。共通する部分もあったり、逆に全く違う発想があったりと、お互いに刺激になったようで、トークショー終了を名残惜しんでいた。中村FROはまだまだ聞き足りないことがたくさんあるようで、「2人をまた呼んでください」と、トークショー第2弾を熱望した。
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