川崎市高津区に完成した新たなごみ焼却処理施設「橘処理センター」が4月1日から本格稼働するのに合わせ、3月22日に「橘処理センター」施設内で完成式と内覧会が行われた。また、同日の午後から市民向けにも内覧会が開催された。
旧処理センターは市制50周年の1974年に完成し、2015年まで稼働していた。約9年をかけて新たな施設に生まれ変わり、市制100周年の2024年4月から可動する新施設は、「ごみ焼却処理施設」とミックスペーパーを処理する「資源化処理施設」からなる。地球環境問題への対応として、新たな排ガス処理施設を導入し、全国でもトップクラスの排ガスの自主基準値を定めるなど、環境の保全に配慮したごみ焼却処理を行っている。
「ごみ焼却処理施設」は、ごみ焼却時に発生する熱を利用してボイラーで蒸気を発生させ、高効率の蒸気タービン発電機により、旧施設の５倍に相当する最大約14,100キロワットの発電を行う。これは、13000世帯分の電力を賄うことができる電力に相当する。
施設稼働に必要な電気として使うほか、4月から稼働する地域電力会社『川崎未来エナジー』を通じて、学校を始めとした公共施設に使われる。また、発生する蒸気の一部は隣接する川崎市民プラザに供給され、冷暖房や温水プール等の熱源として利用される。
「橘処理センター」と合わせて市内にある廃棄物処理施設「王禅寺処理センター」（麻生区）、「浮島処理センター」（川崎区）から出るエネルギーで、地元の小学校を始め、ほぼ全ての市立学校の電力と区役所を始め、市内201の公共施設の電力を賄うことでき、まさに「地産地消のエネルギー循環」といえる。
福田紀彦市長は「エネルギーセンターにもなり、ミックスペーパーの処理施設も併設しているので、リサイクルセンターにもなり、コミュニティーセンターにもなるなど、いろんな付加価値の付いた施設になる。30年前はゴミ危機宣言を出した都市が、近年では、３年連続で政令指定都市でもっとも、一人当たりのごみを出す量が少ない都市になった。環境先進都市というものを作り続けていきたい。100周年の節目の年に意義ある意味ある施設ができたことに感謝いたします」と、あいさつした。
内覧会では、ごみ焼却施設を見学。ゴミ収集車の搬入からごみ投入されるプラットホーム⇒ごみを貯めるごみピット及びごみクレーン⇒ごみ焼却炉内部映像で「燃やされるごみ」を体感できる通路⇒中央制御室⇒減温塔やろ過式集じん機など、ごみ焼却処理の様子が分かりやすく紹介されていく。
また、児童・子供たちの見学にも対応して、楽しく学んでもらおうという工夫が随所になされている。たとえば、長い廊下を利用したさまざまな展示物もその一つで、「川崎市の自然プロムナード」と題して、「橘処理センター」の周りの虫や花や木などの自然を四季（夏、秋、冬、春の順）の絵で示し、ところどころ「夜のセンターではどんな生き物が見つかるかな？」などのクイズも。また、巨大なごみクレーンは「巨大なUFOキャッチャーだ」と興奮するそうで、天井に描かれた実物大のクレーンの下に立てば、子供20人ぐらいひとつかみされるほどの大きさであることがわかる。
■施設概要
川崎市橘処理センター（川崎市高津区新作1丁目20番1号）
施設概要 敷地面積：24,488.63㎡，建築面積：13,902.71㎡，延床面積：31,918.44㎡
ごみ焼却処理施設
処理能力：600ｔ／日
エネルギー回収率（発電能力）：21.5％以上（14,100kW）
資源化処理施設
処理対象:ミックスペーパー
処理能力:45ｔ／５時間
（取材・撮影：ニュースラウンジ／伊藤直樹）
