3月1日~7日は「春の火災予防週間」ということで、川崎市内の各消防署でも「火災予防」に関する講習や実習、ポスティングなどの呼びかけが週末を中心に行われている。
その一環として3月8日に川崎市高津消防署では、発生が危惧されている首都直下地震等の大震災に迅速に対応するため、区内事業所職員と消防団、消防隊が連携した訓練を実施。各機関が協力して情報及び調整を図ることで防火意識の高揚を図り、有事における連携の強化を図った。
訓練は、首都直下を震源とするマグニチュード7.7及び川崎市域で震度6強の地震が発生。その影響によりキヤノン株式会社玉川事業所A棟食堂で火災が発生し、従業員の初期消火が効果無く延焼拡大。火災の影響により1階に4名の歩行不可能な要救助者、4階に歩行可能な2名が逃げ遅れ、避難後に気分悪化を訴える急病人が2名発生するとの想定で実施された。
地震発生から消防車・救急車到着まで10分と想定。消防車到着と同時に1Fから消化班の消防隊員と救急隊員が1FからA棟建物内へ消化と共に救助者の救出へ。その間、外では、はしご車可動させ、4Fの逃げ遅れた2間の要救助者を救出に向かう。
さらに、敷地内にエアテント・応急救護所が設置される。傷病者多数のため高津救急隊が統括救急隊として。現場の救急を取りまとめ、DMAT、医師の要請、トリアージポスト、救護所の位置を設定。傷病者一覧の作成、搬送先、医療機関の確保及び搬送の調整が実施される。
これらはほぼ同時並行的に行われる。それらは現場に設置された指揮本部に逐一現状報告がなされ、それに伴い、増員要請や各隊に任務を振り分けていく。
救助者をA棟から救出すると、A棟内の消火班が引き続き消化を行い救護班が活発に動き出す。応急救護所に運ばれてきた要救助者の状況を的確に把握するため、トリアージが行われる。ドラマ『東京MER』(TBS系)の人気で、一般の人にも名前が浸透したトリアージ。要救助者の優先順位を色で識別していくもので、赤色は生命危険でいますぐ治療必要。黄色は処置までに数時間の余裕がある、緑色は命の危険がなく外来で十分、黒色は心肺停止、救命見込みなし。呼びかけて意識の確認し、要救助者の病状の色の部分まで破り、腕に巻いていく。トリアージポストごとに要救助者を運び、さらに、エアテントに運んで救急車で病院へ搬送していく。
今回は、要救助者は8人で、赤が3名、黄色1名、緑4名だった。その後、火災は沈下し、傷病者も次々搬送され、傷病者全て搬送されたところで約1時間の訓練は終了となった。
訓練を終えて玉川事業所長は、「我々(事業所員)は自衛消防隊として初期消火など初期対応が中心となりますが、今後、実際に災害等が発生した場合には、迅速な消化・救護等が行えるよう、各消防隊の皆さまと連携を取っていきたい。今後も日ごろから防災について考えていき、防災意識を高めていきたい。そう再認識させられた有意義な訓練だった」と、防災意識を強調した。
また、高津消防所長は、「春の火災予防週間の一環と関東大震災から100年が経過。さらに、年明け大きな地震もございました。そういった関係で地震の発生を想定した訓練を実施させていただいたところでございます」
古くは関東大震災(1923年9月1日11時58分)、29年前の阪神淡路大震災(1995年1月17日5時46分)、東日本大震災(2011年3月11日14時46分)、直近の令和6年能登半島地震(2024年1月1日16時10分)まで、発生時間に関わらず、家屋や建物は燃え、海も火の海になるほどの大火災が起きている。
続けて、「実際に大災害が発生した時に、119番をしてこのように消防車がすぐに駆け付けられれば非常にいいことなんですけど、やはり、今回の石川県の地震を見ればわかるように、119番してもなかなか現場に到着できない事案が多数発生しました。その時はやはり消化、そういったものを使って自助で活動していただいて、少しでも被害を軽減していただければ、幸いでございます。今後も継続して訓練していただければと思います」と、こちらも消火器具の使用による初期消火の重要性をお願いした。
最後に「煙体験」を行った。黄色いドームの中には煙が充満しており、視界が遮られた状態で歩いていく。黄色く光を通しやすいシートだったため、歩行先や左右の“壁”が買ったが、これが黒い色やコンクリートの壁、夜だったりすると方向が全くつかめなかった。
体験した方たちは、「迷いそう」「前後左右が分からなくなりそう」「低い姿勢というのがよくわかった」など、体験することの重要性を口にしていた。
1 実施日時
令和6年3月8日(金)午前9時50分から11時00分まで
2 実施場所
川崎市高津区下野毛3丁目16番1号
キヤノン株式会社 玉川事業所
3 訓練実施機関
キヤノン株式会社玉川事業所
川崎市高津消防団
川崎市高津消防署