女優・柳英里紗(22)が16日、都内・新宿武蔵野館で行われた映画『チチを撮りに』(監督:中野量太/配給:デジタルSKIPステーション)初日舞台挨拶に俳優・滝藤賢一(36)、女優・今村有希(31)、中野監督(39)とともに出席した。
死にゆく父の顔を写真に撮る“おつかい”と、行き着いた先での人生の修羅場で奮闘する姉妹を通して、母の思いや家族の絆を描いた作品。今月9日、10日に『第63回ベルリン国際映画祭』ジェネレーション部門にて上演され、拍手喝采を浴び、まさしく凱旋となった。
昼キャバでバイトしているフリーターの姉・葉月役の柳は、「ベルリンは遠かったですね。だいたい14時間(フライト)で、かなり遠い道のりでしたけど、行って本当によかった。怯えながら行ったんですけど、1回目の上映は1045席完売で、赤いマークがついていて、本当に嬉しかったです」と、興奮の映画祭を振り返る。
ジェネレーション部門は10代向けの作品ということで、柳は「若い子がたくさん観てくれて、学校用の番組の取材を受けたりしました。小さい子が緊張して話しかけられなくて、お母さんに『質問して』って頼んで、後ろに隠れたり。かわいい子がたくさんいました」と、笑顔でコメント。
滝藤演じる死にゆく父の妻・西森都子役の今村も、「昨日夕方に帰国したんですけど、最初行く予定じゃなかった。でも、年末帰省したとき父から『行ってこい』と言われたので、個人旅行ではございますが、行かせていただきました」と、ベルリンの思い出について語った。
中野監督は「1045人は本当にビビりました」と、驚きの表情で、「向こうの方って感情を前に出してくれるので、反応がとてもよくて。僕は自分の映画を観ながら笑ったりしないんですけど、自然と笑ってしまうぐらいだった」と、現地でのリアクションはかなり手応えがあったことを告白。
同作の撮影中のエピソードについて、柳は「監督の演出はとても面白いですね。インの１～２週間前から始まっていて、家族全員に会わせてくれた。松原菜野花ちゃんとは初対面なのに、新宿で『きょうがお母さんの誕生日という設定でプレゼントを買ってきてください』という課題を与えられた。そこから姉妹という役作りをさせてもらいました」と、その独特の手法を讃えた。
なお、舞台挨拶は午後10時から行われ、柳の妹役として出演した松原菜野花(16)は高校生で労働基準法のため、出席という形ではなく、客席からコメントを出すことに。松原は「私は人見知りなので、全然話しかけられなかった。でも、2人で話すしかないから…」と、そのときのことを回想すると、柳は「初めて会ったとき、私が水玉のワンピースを着ていて、菜野花が水玉のＴシャツ着ていた。生地もまったく同じで、同じ紺色だったので、この子とはいけるなと思ってたよ」と、実の妹に語りかけるように、優しく呼びかけた。
中野監督の08年の作品『琥珀色のキラキラ』も、新宿武蔵野館で同時上映され、同作に出演している滝藤は、「覚えてないっちゃ覚えてないんだけど、僕は怖かったですね。飲んでるときは穏やかなんですけど、演出のときは目つきがドＳっていうか、凄く厳しくなりますね」と、中野監督を告発！ だが、その本心は「とても粘られる監督さんなので、好きというか絶対的に信頼できる監督さんですね」と称賛していた。
ここで、中野監督が姉妹の母・佐和役の渡辺真起子(44)について、「強い人で、自分の意見をガンガン言う人なので、最初はちょっとたじろいだんですけど、押し返すかたちでやりましたね」とコメントしたところで、渡辺から監督のもとへ電話が。
大阪で舞台公演があったため、舞台挨拶に出席できなかった渡辺は、電話出演というかたちで参加。観客からは拍手が発生し、中野監督が「真起子さん聞こえますか？ 超満員の立見で初日を迎えることができました」と話しかけると、渡辺は「おめでとうございます。皆さん寒い中、ご来場ありがとうございます。いま舞台公演終わって声ガラガラですが、まぎれもなく母の渡辺です」と返答。
柳の「お母ちゃん！」という声にも「ハイ～」と陽気に答えた渡辺は、「面白かったと思っていただけたら、お友達、会社の同僚、ご家族などに伝えていただいて、少しでもたくさんの方々に作品が届くことを願っています」と、観客にメッセージを送った。
最後にベルリン土産として、ドイツのグミが柳から観客に振る舞われた。
16日より新宿武蔵野館レイトショー他全国順次公開。
