
俳優・綾野剛が主演する映画『星と月は天の穴』(監督:荒井晴彦/製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ)の娼婦・千枝子を演じる田中麗奈を中心とした場面写真が解禁となった。新井監督絶賛の女の情念を見事に演じきり、新境地を切り開く演技に注目。
⼈間の本能たる〝愛と性〟を描き、観る者の情動を掻き⽴ててきた荒井監督。新作『星と月は天の穴』は、長年の念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化。主演に綾野剛を迎え、過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴った作品。
今回解禁となるのは、なじみの娼婦・千枝子を中心としたカット。演じる田中麗奈は、荒井監督も「ここまでやってくれるとは思わなかった!」と絶賛した。田中といえば映画『がんばっていきまっしょい』で主演を飾り、爽やかで快活な鮮烈なイメージを持つ人も多いが近年はそのイメージすら一新するかのような、重厚感すらも漂うものにシフトしつつある。今作では女の情念を見事に演じきり、これまで見せたことのない表情や佇まいを見せるなど、まさに新境地を切り開く役柄。

田中が演じるのは、綾野剛演じる主人公・矢添の馴染みの娼婦・千枝子。矢添を憎からず思っており、彼に対しては他の客以上の“情”がある。しかし関係は進展することなく、時だけが流れ、女として自身の人生の選択をする時であることを自覚している女性。
愛をこじらせている矢添に決して踏み込むことなく淡々と寄り添う一方で、矢添の一番の理解者であることも見受けられる。さらには、己の幸せのために大きな決断を下していく千枝子の姿は切なくも軽やかで、咲耶演じる紀子とある種対照的な人物像。
ままならなさ、どうしようもなさを抱える心の内を全て言葉にはしない。しかし、それが全身から溢れ出る色香となって、役柄への説得力が増している。田中自身も「今でも千枝子を思うと胸がキュッとします」と語る通り、千枝子が持つ矢添へのある種の愛と諦念、複雑な女心の内が物語に与える影響は大きく、娼婦という役柄ながら、少なからず人間の共感を呼ぶことだろう。
田中と荒井監督との出会いは2017年、荒井が脚本を務め、三島有紀子が監督した『幼な子われらに生まれ』。田中は浅野忠信とともにバツイチ同士で結婚した夫婦を演じ、血のつながらない家族に対する葛藤、再生を描いたこの作品で第91回キネマ旬報ベスト・テン 助演女優賞、第72回毎日映画コンクール 女優助演賞ほか、作品としても第41回モントリオール世界映画祭審査員特別大賞など数々の賞に輝いた。
2度目が、荒井が脚本を務めた『福田村事件』(2023年/森達也監督)だったが、実は、田中は、荒井が監督を務めた『火口のふたり』(2019)『花腐し』(2023)にも惹かれていたとコメントしており、今回の作品の出演には「お話をいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです」と語っている。
一方、荒井も「まさか出演してくれるとは思わなかった」と田中の参加に望外の喜び、さらには「ここまでやってくれるとは思わなかった」と期待を大きく上回る田中の演技に感嘆の声を寄せている。制作陣を唸らせたという、公園のブランコのシーンは必見。

主人公の矢添克二を演じる綾野剛は、これまでに見せたことのない枯れかけた男の色気を発露、過去のトラウマから、女性を愛すること、愛されることを恐れながらも求めてしまう、心と体の矛盾に揺れる滑稽で切ない唯一無二のキャラクターを生み出した。矢添と出会う大学生・紀子を演じるのは、新星 咲耶。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れる。矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じるのは、田中麗奈。綾野演じる矢添との駆け引きは絶妙、女優としての新境地を切り開く。さらには、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らが脇を固める。
【STORY】 いつの時代も、男は愛をこじらせる――
小説家の矢添(綾野 剛)は、妻に逃げられて以来10年、独身のまま40代を迎えていた。離婚によって心に空いた穴を埋めるように 娼婦・千枝子(田中麗奈)と時折り軀を交え、妻に捨てられた傷を引きずりながらやり過ごす日々を送っていた。そして彼には恋愛に尻込みするもう一つの理由があった。それは、誰にも知られたくない自身の“秘密”にコンプレックスを抱えていることだ。そんな矢添は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分自身を投影することで「精神的な愛の可能性」を探求していた。ところがある日、画廊で運命的に出会った大学生の瀬川紀子(咲耶)と彼女の粗相をきっかけに奇妙な情事へと至り、矢添の日常と心が揺れ始める。

綾野 剛
咲耶 岬あかり 吉岡睦雄 MINAMO 原一男 / 柄本佑 / 宮下順子 田中麗奈
脚本・監督 荒井晴彦
原作 吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ レイティング:R18+
映画『星と月は天の穴』は12月19日よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショー。
©️ 2025「星と月は天の穴」製作委員会


