NO IMAGE

博報堂グループが、社会知ネットワークを使って知恵を流通させる「Innovation Cloud」を開始

  • 2014年11月2日
  • 2022年10月22日
  • SOCIETY
博報堂グループが、社会知ネットワークを使って知恵を流通させる「Innovation Cloud」を開始
博報堂が社会知を利用したコンサルの新たなる形を提案

 広告代理店『博報堂』のグループ会社で、ブランディングと事業変革に関する経営コンサルティングを行う、『博報堂コンサルティング』が30日、東京・赤坂Bizタワーで、新しいビジネスアイデアを創出するクラウドソーシング「Innovation Cloud(イノベーションクラウド)」を2014年10月30日より開始したとの発表会を行った。

 「Innovation Cloud」とは、「顧客企業が抱える様々なマーケティング課題を解決するためのビジネスアイデアを、博報堂コンサルティングがネットワーク化した社会知(MBA学生、クリエーター、マーケターなど)を活用して提供する仕組み」だ。

 大命題としては、「現在流通していない知恵(ビジネスアイデア)を、社会知ネットワークを使って流通させる仕組み」だ。

 『立命館大学大学院』経営管理研究科 教授 副研究科長の鳥山正博氏は、「社外の知を社内の知と合わせることにより、これまでにないイノベーションが生まれる。今回の試みというのは、イノベーションのイノベーションとも言えるのではないか」と、絶賛する。

 このような発想に至った経緯について、株式会社博報堂コンサルティング 執行役員 楠本和矢氏は、「新しいことに取り組んでいきたいけど、会社に人材がいない、マーケティングのノウハウがない。外部リソースを使いたいが、実効性、期間、コストの問題など阻害要素が多く、なかなか踏み切れない」といった顧客企業からの声を現場で聞いてきたという。

 そこで、社会知のネットワークを使いながら、幅広い視点で、かつ短期間で、コストもぐっと抑えて、マーケットソリューションを必要としている企業に提供する仕組みに至ったという。

 社会知ネットワークの利点は、社内には存在しない価値観、参加メンバーが持つ多様な視点や独創的な発想をもって、ビジネス課題を解決するアイデアを創造し、オンライン上で提供できること。内部からは生まれにくい、俯瞰的な視点で企業の未来を創り出せることだ。

博報堂グループが、社会知ネットワークを使って知恵を流通させる「Innovation Cloud」を開始ひ

 具体的にどういった仕組みなのかといえば、(1)顧客企業が同社に案件を提示、(2)同社がサイト上にて会員にオリエン、(3)会員からのアイデアを1週間から10日ほどの期間で応募、(4)同社と顧客企業が採用案検討・決定、(5)会員へ結果発表と賞金支払いが行われる、というもの。

 しかし、クラウドソーシングの構造的な問題として、「安く使い倒す」→「登録者のモチベーションの悪化」→「アウトプットクオリティの低下」→「登録者/サービスの位置づけが低下」という悪循環に陥りがち。

 そこで、「アウトプット品質を担保する」仕組みとして、「会員を優秀なメンバー限定」と「博報堂コンサルティングがキュレーション」すること。

 楠本氏は、「アウトプット高品質」として、「優秀なメンバーに厳選をした。国内有名大学の社会人MBA学生やフリーのクリエーター、マーケティング関連に携わっている人など1000人集め、質の高いビジネスアイデアを出せるメンバーを厳選して組織化」。

 博報堂コンサルティングが間にはいることで、「顧客のビジネス課題を正確に特定できること。会員(社会知ネットワーク)が考えやすいように、的確にオリエンテーションできること」と、説明。

 さらに、「ハイパフォーマンス維持」として、「学び」の提供をする。

 1.入選案については、必ず顧客企業+コンサルタントが、コメントをフィードバック。また、案件によっては、すべての投稿案にコメントを付与。

 2.活躍した会員には学びの提供として、クライアント/博報堂内における案件ディスカッションへの参加依頼、「プラチナ案件」の案内、協業スタッフとしての参加募集、各種イベントへの優先案内などの特典を用意。

 同サービスは、10月30日にグランドオープンしたが、7月からトライアルプロジェクトという形で6件の案件を進めている。

博報堂グループが、社会知ネットワークを使って知恵を流通させる「Innovation Cloud」を開始

 その中で、既に実施した顧客企業として、フィットネスクラブを運営する『株式会社ティップネス』企画部長 上野和彦氏が、活用事例を述べる。

 フィットネスクラブ業界は、健康・運動志向の意識が高まる一方、人口比4%程度と参加者人口が増えない(欧米は10%ぐらい)。これを打破したい。原因として「運動」はポジティブイメージだが、フィットネスクラブは「ストイック」「きつそう」というネガティブなイメージがついてしまった。

 そこで、2020年(という5~6年)先を見据えた事業をどうするか。フィットネスクラブから、「コンディショニングクラブ」へというコンセプトに基づく新しいサービスを通じて、今までフィットネスクラブに縁のなかった方々が多く参加している状況を作りたい。

 「Innovation Cloud」活用に至った理由は、「発想の広がりに限界があり、新しい視点や切り口を求めていた」「スピーディーに案をまとめることが必要であった」「比較的低コストで実施が可能。導入判断に時間がかからない」の3点。

 特に、コストに関しては、コンサルティング会社とガッチリ組むと、決済は社長決済となり、判断が降りるまでに数ヶ月かかる。予算も年間予算に組み込まなければならないなど、時間がかかる。ところが、「Innovation Cloud」は、担当部署レベルで決済できるので、時間もコストも短縮できるという利点があった。

 結果、約10日間で157案のアイデアを収集・提供したという。これは、「私の部署には部下8名おりますが、案を160出すのには数ヶ月かかる」(上野氏)

 感想として、「当社のような中規模でかつサービス業種の企業は向いているサービスだと思います。人材が抱負なわけではなく、クリエイティブなタレントに乏しく、アイデアが偏りがちになる傾向にあります。そういった中で、いわゆるプロシューマー集団(生産と消費を一緒にやっているような方)に、アイデアを募るのは有効。アイデアそのものがすぐ使えるというよりも、その裏側のコンセプトやモデルの変更を活性化させる。時間、考える手間を考えるとリーズナブルだと思います」と、納得の結果だったようだ。

 同社は今後、アイデアの提供だけでなくクラウドに集まったメンバーにも注目し、アイデアの受賞歴や発想を博報堂が評価、紹介することで能力ある個人とそれを欲している企業の架け橋になればという、リクルーティング領域への展開も視野に入れる。

 さらに、元々の趣旨である中堅企業、中小企業に実行性のある、コストパフォーマンスの高いマーケティングソリューションを展開できればと考えている。

 

博報堂グループが、社会知ネットワークを使って知恵を流通させる「Innovation Cloud」を開始


広告