国民的アニメ『サザエさん』の磯野波平役などで知られる声優の永井一郎さん(享年82)の通夜が2日、東京・青山葬儀所で営まれ、声優・古谷徹が故人を悼んだ。
「永井さんとお会いしたのは僕が劇団ひまわりのころでした」と、語り始めた古谷。
「私は5歳から子役をやっていたんですが、初めてのアニメーションが東映アニメーションの『海賊王子』のキッドという役をやらせて頂いたんですけど、そんな僕が13歳のときに、ライバル役の虎フグ船長というのを永井さんがやってらして、永井さんも僕も、アニメのレギュラーは初めてで、だから、その後、そのアニメの話が出ると、『古谷くんとは同級生だから』っておっしゃってくださっていたんです。けれど、僕はアニメの声優としてはまったく初めてだったので、口パクに全然合わなくて、それを見ていた永井さんが、『君の肩を叩いたら次のセリフをしゃべりなさい』と言ってくださって、肩を叩いて頂いたタイミングで僕がセリフをしゃべって、アフレコをやらせて頂いていたんです。ある意味では永井さんにアニメの声優としての技術というか芝居というかを教えていただいた恩師です。その2年後に『巨人の星』があって、僕はブレークすることができたんですけど『海賊王子』という作品を経験がなかったら『巨人の星』のオーディションに合格しなかったかもしれない状況でした」
永井さんと最後に会ったのは、「昨年、たぶん事務所でお会いしたのが最後だったと思います。永井さんはよく事務所にもいらしてて、待合室などで、よくお会いしました」という。
さらに、古谷は奥さんと結婚する際に永井さん夫妻に仲人をしてもらったという思い出も。「もう結婚して30年になるんですが、永井さんご夫妻に仲人をやっていただきまして、アニメデビューがご一緒だったのもありますし、うちの家内も『無敵ロボ トライダーG7』とか少年声(主人公・竹尾ワッ太役の間嶋里美)でやってまして、永井さんもレギュラーで出演されてて、家内はかなり教わったと言っていて、そういう状況だったというのもあります」
ほかにも、スキーが好きだったそうで、「声優でスキーに行っていて、よくご一緒させて頂いたんです。綺麗で優雅な滑りを永井さんはされていました。ここ4、5年くらいは『無理だよ』とおっしゃってました」とも。
また、古谷は「糖尿とか患ってらっしゃって、インスリンの注射とかを持ち歩いて自分で打ちながら芋焼酎を飲んでいらっしゃいました。ガンダムでもナレーションをされていたので、ずっとご一緒させて頂いて、その後もちょこちょこ何度もお会いさせて頂きましたし、同窓会みたいな感じでみんなでやったときに、永井さんにそんな注射打ちながらお酒飲むのやめた方がいいですよと言ったら、『芋焼酎を飲むと滑舌が良くなるし良い声も出るんだ』とおっしゃっていました。お医者様にもちゃんとお話してのことだったんでしょうね」と、印象的だったエピソードを明かしていた。
『サザエさん』での波平としての永井さんと、普段の永井さんのことを問われた古谷は、「普段の永井さんは温厚な方で『バカモン!』なんておっしゃる方じゃないですから、ちょっとさすがに、役者さんなんだなと思ってましたし、波平さんの声にピッタリじゃないですか。本当にそこに存在しているみたいで、僕らだけじゃないですけど、観ている方にとっても日本のお父さんという感じで、イメージがありました」と、話す古谷。
最後に、「永井さんにいま伝えたいことはありますか?」と問われると、「とにかく感謝の言葉しかないですね。本当にありがとうございました。もう一度スキー一緒に滑りたかったです」と、メッセージを寄せていた。
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