俳優・井浦新(38)が14日、東京・内幸町のイイノホールで行われた、東京映画記者会(在京スポーツ7紙)が選ぶ「第55回ブルーリボン賞」で、映画『かぞくのくに』(監督:ヤン・ヨンヒ/配給:スターサンズ)で在日コリアン女性の兄を演じて、助演男優賞に輝いた。
「帰還事業」により家族と離れ北朝鮮に移住し、25年後に病気治療のため3ヶ月の期限付きで戻ってきた。懐かしい再会もつかの間、どうしようもなく家族と違う立場に置かれた兄を静かに時に激しく演じたことが評価された。
井浦は、「どうもありがとうございます。大変嬉しく思っております。作品賞のヤン監督と、主演女優賞の安藤さくら、特別賞の若松監督。僕にとってとても大切な3人と、ステージに立たせてもらったことが光栄に思っております。この場を借りて感謝の気持を伝えさせてください」というと、静かに語る。
ヤン監督や若松監督の娘さんが控えている座席の方に向き直ると、受賞前の安藤サクラも舞台袖のところから、身体半分のぞかせる。
井浦は、まず、ヤン監督の方に向き、「監督の人生をかけた闘いに僕を誘っていただいてありがとうございました。監督のお父さま、お母さま、お兄さまに心から感謝しております。これからも素晴らしい作品をつくりつづけ、闘い続けて下さい」と、思いを込めて語ると、ヤン監督は、ハラハラと涙を流しながら、何度もうなづいていた。
続いて安藤サクラの方を見て、「(在日コリアン女性の兄)ソンホという役は僕一人ではつくり上げることはできませんでした。サクラさんが一緒に向き合って、戦ってくれたから演じ切ることが出来ました。感謝しています」と言うと、安藤も、何度もうなづく。
そして、若松監督(の娘さん)の方を見て、「『かぞくのくに』の現場に入る前、『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』『海燕ホテル・ブルー』の2つの作品で完全燃焼させてもらいました。2つの作品を乗り越えたからこそ、『かぞく-』の現場に真っ白な真っさらな気持ちで望むことができました。ありがとうございました」と、述べる。
最後に正面を向き、「お父さん、お母さん、五体満足に産んでくれてありがとうございます。2人に、そして僕の家族にこの喜びを伝えたいと思います」と語った。
井浦新は、若松監督の作品の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)『キャタピラー』(2010年)『海燕ホテル・ブルー』(2012年)『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012年)『千年の愉楽』(2013年)などに出演している。
若松監督への特別賞受賞ついて問われると、「監督見事に怒っていました。現場ではあのぐらいの志を持って作品作りをしていた監督です。怒りは全て映画への愛だと思っています。監督は生前、『賞というものは特にいらない』とおっしゃっていましたが、いつも賞を頂くことがあると、喜んで頂いていました。今回は間違いなく、大喜びしているに違いありません。監督のもとへ、賞の報告をしに行きたいと思います」と、述べた。
【各賞の受賞者と作品】
作品賞 『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)
外国賞作品賞 『レ・ミゼラブル』(東宝東和の新井重人・取締役宣伝担当)
監督賞 内田けんじ(「鍵泥棒のメソッド」)
新人賞 マキタスポーツ(『苦役列車』)
特別賞 故若松孝二監督(三女で若松プロの伊藤宗子が代理で受け取る)
助演男優賞 井浦新(『かぞくのくに』)
助演女優賞 広末涼子(『鍵泥棒のメソッド』)
主演男優賞 阿部寛(『麒麟の翼~劇場版・新参者』『テルマエ・ロマエ』『カラスの親指』)
主演女優賞 安藤サクラ(『かぞくのくに』)
※在京スポーツ7紙・・・サンケイスポーツ、スポーツニッポン、スポーツ報知、デイリースポーツ、東京スポーツ、東京中日スポーツ、日刊スポーツ。