映画監督・北野武(65)が18日、都内で映画『アウトレイジ ビヨンド』(監督:北野武/配給:ワーナー・ブラザ-ス映画、オフィス北野)ジャパンプレミアに出席した。
この日は、北野監督とともに俳優・西田敏行(64)、三浦友和(60)、加瀬亮(37)、中野英雄(47)、松重豊(49)、小日向文世(58)、高橋克典(47)、新井浩文(33)、塩見三省(64)、中尾彬(70)、神山繁(83)の総勢12名が登壇し、作品にかける思いを込めて舞台あいさつを行った。
第69回ベネチア国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミア上映された本作。映画祭を振り返った北野監督は、「『アウトレイジ』で、カンヌ映画祭に呼ばれて。酷い暴力映画だというのと、究極の暴力映画だと絶賛されたりで賛否両論。ニュースに暴力の話ばかりが取り上げられ腹立たしかったんで2を撮ろうと。で、2になったら、今の時代暴力映画で映画祭に出すのかって言われて。こっちは好きで出してるんじゃくて、向こうから来いってんで出してるわけで」と、客席を沸かせる。
だが、実際には不安もあったようで、大歓迎で喜ばれホッとしたという当時の心境を明かしながら、「賞の関係で言うと、時代の流れで、ヤクザとか暴力映画がまさかグランプリもらっちゃいけないだろうとも言われ、まあ、そうかと。名誉だけもらっておこうと」と、無冠に終わったことについてはサバサバした表情で。
現地では“世界のキタノ”らしく、その土地のファンクラブのメンバーと飲みながら、「かなり冷静に、正直に答えてくれる友だちばかりだけど、暴力映画の最高傑作だって言ってもらえてホントにうれしかったね。まあ、酒おごったのはオレなんだけどね」とエピソードを話し、またまた客席は大爆笑と盛大な拍手が。
作品の仕上がりについては、「高倉健さんの任侠もの、そのあとの深作監督の仁義なきシリーズというように、ヤクザとか暴力映画の歴史は作られてきた。このあとは『アウトレイジ』という映画が、新しい時代のエピソードというか“時代”だ、という映画が撮れたと思う」と、自信のほどを伺わせ、「ご覧のとおり、主役を張れる役者ばかりそろえてギャラも相当かかって大変です。みなさんがお友達を誘ってたくさん観ていただければ、どうにか赤字も解消できる!」と、ジョークを効かせてあいさつを締めると、客席からは万雷の拍手と歓声が寄せられた。
今回、北野組初参加の俳優陣の中では、西田が元気いっぱい。「関西花菱会の若頭…」と、コワモテぶりにあいさつを始めるが、すぐさま「浜ちゃんです!」と、ニッコリ笑顔に切り替えこれには客席も大爆笑。「念願の北野監督の役者としてこの映画に出させてもらってうれしく思っています。仕上がった作品も観せてもらって面白かった。ホントにスッキリしました。それから、ボクは生き残ってるんですが、ということは…」と続け、早くも次回作出演オファーに大いに期待している模様。本作は、関西弁と東京弁が入り混じった怒鳴り合いも大きな見せ場となっており、怒号飛び交う撮影で、西田は思い切り怒鳴って体調が良くなったそうで、「スッキリしました。血圧も正常に戻りまして、ホントにありがとうございました」と、ジョークを飛ばした。
西田と同様に、北野組初参加となった塩見、高橋、松重らの俳優陣もそろって、「緊張したが、憧れだった北野組に参加でき幸せ」と、喜びを語る。新井の、「普段、他の映画ではたいてい自分が一番のコワモテなんですが、今日ご覧のとおり、一番可愛いです」とのコメントには、客席も納得の笑いで応えることも。
以前の取材で、北野監督に“コテコテの演技に監督のオレがヘトヘト”と、言わせた中尾は、「監督もクサイ役者ばかりそろえて、一番楽しんだのは北野監督でした。この作品は、映画が忘れてしまっていた活動大写真みたいな感じで。観終わったあと爽やかな、仕事して良かったなというスッキリした気分です」と、満足げ。
神山も“北野バイオレンス”を堪能した模様で、「暴力を楽しむということは、ギリシア時代以来、現在まで続く大問題であります」と語り、「俳優の皆さんの話を聞いてると、みんな楽しんだということばかりであります。そう言う私も結構楽しみましたから、ご覧になる方は文句無しに楽しめる」と、太鼓判を押す。
前作からの生き残り組、小日向が、北野組として再演を果たせたことを喜ぶと、中野は、「前作は包帯ぐるぐる巻でほとんど顔が写ってなかった。今回は出てるんだとちゃんとわかっていただけると思います」と、客席を和ませる。加瀬は、「前回に引き続きの役をやりました。今回は出世して若頭になったのですが、どうやら器ではなかったようでひどい目に合いますが」と、意味深なコメント。
三浦も、「ここに集まりの皆さんは、もちろん1本目のアウトレイジを観ていらっしゃった方々だと思います。とにかく、自分は一番上の、一番最後まで登りつめましたので、その人間の末路を観ていただきたいと思います」と、加瀬同様に大いにファンの期待を煽り、客席を沸かせていた。
北野武映画史上最大、全国200館以上での劇場公開となる、映画『アウトレイジ ビヨンド』は10月6日より新宿バルト9&新宿ピカデリーほかで全国公開!