
歌舞伎俳優・市川猿之助(36)が8日、都内で開催された、Audi Forum Presents 市川猿之助X長塚誠志写真展『市川亀治郎“飛”』オープニングレセプションに、写真家・長塚誠志氏とともに出席した。
6月に四代目猿之助を襲名し、この夏開かれる自主公演が最後の“亀治郎”としての活動となる、猿之助が、02年に『亀治郎の会』を主宰し独自の道を歩きはじめてからの10年の歩みを振り返る同写真展、会場に到着した猿之助はさっそく長塚氏の説明を受けながら厳選された48点の作品を鑑賞すると、集まった報道陣の質問に答えた。
四代目猿之助襲名に関して聞かれた猿之助が、「なりましたねえ、まだ友だちとか、人によっては亀治郎さんって言う人も。長塚さんも、時々亀治郎さんて言ってる」と笑うと、「もう十数年亀治郎さんって言ってるから、つい出ちゃう。切り替えたいんだけどなかなかね、猿之助さんって出てこない」と、長塚氏も笑顔で答える。
「撮りためたものからすれば、(展示されている数は)全然少ないですけど。ま、あらためて、これだけやってきたんだな」と、感慨深げに語る猿之助は、「どういった十年間でしょう、あんまり覚えてないですね。これだけの写真という記録があるから、なんとなくこういうことがあったんだな、と。これがなければあんまり覚えてないですね。そう言う意味では写真はありがたい」としみじみと。
国内外の自動車CM写真の第一人者でもある長塚氏は、「今回展示する作品は、僕が全て勝手に選びました」と、笑顔で説明。「こういった作品で、ジャンプをしている写真というのは少ないと思う。たくさんの人に見てもらって、評価して欲しい」と語る。写真展のタイトルどおり、飛んでいる作品が多いことについては、「狙ったわけではなくて、面白くて撮っていったらこんなにたくさん飛んでいる写真がたまっていたということで。何でもかんでも飛べばいいってもんじゃなくて、役によっては飛べないものもある。なるべく飛べるものは飛んでいる」と、猿之助が解説。
続けて、「飛ぶって結構、難しいんですよ、きれいな形で。それをとらえるのもまた難しい。長塚さんは長年車の写真を撮られてきた方だから、動くものを撮る腕前が素晴らしい。なかなかないと思いますよ、こんなきれいに撮れるなんて」と、長塚氏を賞賛する。長塚氏は「撮る側からすると、髪の毛から足の先にいたるまで、神経を研ぎ澄まして、きちんとコントロールして飛べる方はほんとに少ないんじゃないかと思います。衣装を着て、その役になっていないと飛べないとおっしゃるくらいだから」と、猿之助の写真に対するこだわりも明かした。
猿之助が、写真に対するこだわりを、「浮世絵のように撮ってくれと。ま、役者絵ですね。と言った結果がこうなりました。見ていただければ、なんとなくわかっていただけるんじゃないかな」と語ると、長塚氏は、「はじめはそういう宿題をいただいて、とっても重い宿題だった。新しい浮世絵を作るって大変なことだからね。それで、日々努力をしてみたらこうなったかな。まだまだ先はあると思いますけどね。写真の持ってる力、気合、また、猿之助の“気”を見て欲しいと思います」と、自信を見せ答えた。
長塚氏はフィルム面が8インチ×10インチの大型カメラで撮影することで知られているが、出番のわずか数分のうちに、舞台裏の仮設セットで大型カメラを駆使、その一瞬を完璧に捉えるという。その撮影は、情景や光の加減が最高の状態に達した時に“1枚だけ撮ればいい”というスタイルで、「問題は枚数じゃない。その瞬間の亀治郎を捉えること」というポリシーで10年間撮影を続けてきた。猿之助は、「その場で確認ができるデジタルカメラではないから、でき上がるまで見せてもらえなかった。今日初めて見た作品もあるくらい」と笑いながら、「それでもシャッターを切った瞬間、これはいいとか、悪いとかわかるもんなんですね。初めて撮ってもらったときは400枚近く撮っていたのが、慣れてきたら5枚くらいで終わるようになりましたから」と振り返った。
自主公演として続けてきた『亀治郎の会』を終えることについては、「全てやりきったので寂しいことは何もない」と、力強く語る猿之助、「来年、『猿之助の会』もありません。興味があるヨーロッパに旅行したい」と抱負を述べる。『亀治郎の会』とともに“亀治郎”としての有終の美を飾ることとなる同写真展、どんな人に見てもらいたいかを尋ねられた猿之助は、「どなたかとか特定の人にではなく、全ての人に見てもらいたい。それぞれに思い出があるから、どれがお気に入りの一枚かというのは選べない。特に、歌舞伎を見たことがない人には見てもらいたい」と熱っぽく語り、会見を終えた。
Audi Forum Tokyo Presents 市川猿之助X長塚誠志 写真展『市川亀治郎“飛”』は9日から27日まで、渋谷区神宮前の『Audi Forum Tokyo』にて入場無料にて開催。同所営業時間は午前10時~午後7時まで。















