元サッカー女子日本代表(なでしこジャパン)で現在WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)『サンフレッチェ広島レジーナ』SB近賀ゆかり選手が2024年12月26日に東京・銀座のKDDIのコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」で行われた「未来人財共創ワークショップ”未来のサッカーを考える日本代表”になろう。」に参加した。
(取材・撮影:伊藤直樹©ニュースラウンジ)
このワークショップは、未来人財である小中学生を対象に、サッカーの未来を考える機会を提供するワークショップ。二部構成で実施され、事前に応募した中から、第一部は小学4〜6年生のサッカー競技者が30名、第二部は中学生、高校生の女子のサッカー競技者3名が参加。サッカー日本代表の森保一監督(第一部参加)をはじめ、元サッカー日本代表の鈴木啓太氏(第一部参加)、元なでしこジャパンの近賀ゆかり選手(第ニ部参加)によるトークセッションをはじめ、元サッカー日本代表とともに「どうしたら日本のサッカーが強くなるのか」、「どうしたら日本のサッカーが盛り上がるのか」など、サッカーの未来を考えるイベント。
初めに近賀選手は、「2011年にいろんな力を借りて優勝したことで、ほんとに女子サッカーがすごく日本のいろんな方に知っていただいて、応援していただけるようになった。やっぱり結果を出すことって大事だなって思いましたし、同時に本当にいろんな人に支えられてこういう結果が出たなっていうのを自分としても実感したので、こういうことを続けていくことがすごく大事だなと思いますし、もっともっと大きくするためには、結果もそうですし、いろんな人の繋がりがもっともっと大事になってくるかなと思っています」とあいさつ。
近賀選手がサッカーを始めたころは、「女子サッカーのリーグがあるってことも知らなかったので、プロを目指したいとか、日本代表に入りたいとか思ったことは全然なかったです。高校卒業して(2003年)初めてトップリーグの『日テレ・ベレーザ』(現・日テレ・東京ヴェルディベレーザ)に行ったけど、その時はプロ選手っていうのがほとんどいなかった。働きながらやるとか、大学行きながらやるっていうのがスタンダードなサッカー環境だったんで、プロ選手っていうのがあんまり想像できなかった(※近賀選手も日本体育大学に通学しながらだった)。2011年FIFA女子ワールドカップサッカーで優勝した時も、日本代表選手にもかかわらず、多くの選手がアルバイトしながらサッカーをしていました」と、女子サッカーの当時の環境を語る。参加していた女子競技者たちもメモを取りながら、真剣な眼差しで耳を傾けていた。
<中学1年生、高校3年生2人からの質問>
――(高校生)高校3年生で引退してしまって、今社会人のチームを探してるところなんですけど、でも社会人でやった方がいいか少し迷ってしまっていて、でもやりたいっていう気持ちがあるならやった方がいいのか、どうしたらいいか悩んでいます。
近賀 おっきな悩みだね。やりたい気持ちがあるんだったら、やったらいいなって思います。それはなぜかというと、女子サッカーを一緒に盛り上げてほしいっていう気持ちも本当にあるし、1回離れちゃうと、また戻るのちょっとなとか思っちゃうんだったら、こういうタイミングで1回やってみて、違うなって思ったら別に私はやめてもいいって思っている。社会人のチームで、どれぐらいの頻度でやりたいか、ちょっとやっていたいのか、週1回だけなのか、毎日がっつりなのかは人もそれはそれだし、それに合ったチームを探して、ちょっとでも続けてもらえたら嬉しいなと思います。
ーー(中学生)私は小学校の頃に少女チームに入っていて、中学生になる時に、周りの地域に女子チームが少なかったのでサッカーを続けるか迷っていたんですけど、入った中学校に女性の先輩が1人、男子サッカー部に入って続けています。私も(男子サッカー部に入部して)続けていますが、試合に出れる機会が少ないとか色々感じることがあって、女子だけでサッカーができる環境を増やしていけたらなって思っているんですけど、そういう活動をしていく上でアドバイスとかあったら教えていただきたいです。
近賀 中学生に上がる年代でサッカーを、女子サッカー選手を離れてしまう選手が多いようで、それはやっぱりやる環境がなかなかないなど、いろんな理由があると思うんだけど、仲間を集めるっていうのは、もしかしたら大事かもしれなくて。私はそういうのをもっといっぱい発信してほしいなって思うかな。で、それこそ私たちみたいに、何かこういうイベントとかで、そこの年代をサポートするような、いろんなイベントだったり、いろんな活動っていうのをもっともっと増やしていきたいなっていう気持ちがある。それこそ今回、みなさんのような方たちといっぱい繋がって、そういうイベントもできたらいいなって思うし。じゃ、女子サッカー部を作るためにはどうする?
ーー(中学生)私の学校では土曜日に自分がやりたいことをする時間っていうのがあって、その時に、その学校内で、女子限定でサッカーをやりたい人に声かけてやりました。今までやったことない人とかも楽しんでもらえたんで、その、最初はなんか、きっかけ作りからはじめて…。
近賀 そういうのいいね。私たちとかも一緒に行けたら楽しいですしね。やっぱ仲間を増やすってことはすごく大事だと思ってさ、一緒にやったらなんかいい。頑張ってください。行動力が素晴らしいです。
ゲストトーク後には「サッカーを楽しむ人を増やすには?」をテーマにワークショップを実施。近賀選手も同じテーブルに座り、体験を交えながらディスカッションに参加した。
女子中高生と近賀選手で話し合いの中では、「老若男女問わず、親子連れや若い子たちに来てほしい。サッカーに興味ない周りの子たちをどうすればスタジアムに来てくれる?」と近賀選手が質問を投げかけると、「なでしこジャパンと韓国代表の試合でME:I(ミーアイ)が来てパフォーマンスしたんです。サッカーのこと知らないでME:Iを観に来たともだちもそのままサッカー観たら楽しいって言ってくれたので、K-POPや女性に人気のアイドルグループを呼ぶ、「放送がないので、地上波テレビの放送を増やしてほしい」「校外学習として芸術鑑賞の代わりに招待してもらったら」など、様々なアイデアが飛び出した。近賀選手も「、男子の日本代表には、今かっこいい選手いっぱいいるし、例えば男子の日本代表戦を一緒に見て、かっこいい“推し”見つけたりできたら、ちょっとサッカーやろうかなみたいな。サッカーに興味持ってもらって、そこからサッカーが広がったらいいなって思う」と女子中高生に触発されたのか“砕けた意見”を出していた。
最後に、本日のワークショップを振り返って、近賀選手は「想像を超えるいいアイデアをいただいたということもありますし、いま女子サッカーとして抱えている問題もここで改めて知ることが出来ましたし、だからこそみんなと一緒に女子サッカーを盛り上げて、女子サッカーが日本のサッカーを盛り上げる。そんなサッカー界にしていきたいなと思えた素晴らしいイベントだったので、参加させていただいてよかったなと思います」と誓いを新たにしていた、イベント終了後も、参加した女子中高生に「また会おうね!絶対に会おうね」と、エールを送っていた。
【近賀ゆかり選手のプロフィール】
2005年から2016年の11年間、長きにわたり日本代表の右サイドバックを牽引。2011年のFIFA女子ワールドカップドイツ大会の優勝、2015年のFIFA女子ワールドカップカナダ大会では準優勝、2012年ロンドンオリンピック銀メダルを獲得に貢献した。
サッカーを始めたのは小学校3年生、高校時代は選手権に2度の準優勝を経験。卒業後は日テレベレーザに8年、INAC神戸レオネッサに3年在籍。アーセナル・レディースFCへの移籍。その後、海外移籍や国内復帰を経て、現在「WEリーグ」のサンフレッチェ広島レジーナで4シーズン目を迎える。そして今シーズン、なでしこリーグ~WEリーグで通算300試合出場を達成した。
サッカー競技者を対象にKDDIが218名を対象に事前に実施したアンケート(*)では、『大人になってもサッカーを続けたいと思いますか?』という問いに対し、『続けたい』と回答した人が、男子82.9%、女子77.1%という結果になりました。ともにサッカー継続意向は高かった中、『男子選手と女子選手が競技を続ける中で「環境差」を感じたことはありますか?』という問いに対し、『よくある』と回答した人が、男子が13.4%と低くなったのに対し、女子は43.8%と高い結果となり、プレー環境における調査で差が見られました。
そのような調査結果を踏まえ、事前に応募していただいた中から、第一部は小学4〜6年生の男子サッカー競技者が31名、第二部は中学生、高校生の女子のサッカー競技者が3名が参加し、「サッカーを普及させるためには」をテーマにワークショップを実施。ワークショップの開催にあたり、KDDIの坂本伸一(ブランドコミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 部長)より、「私たちKDDIは、みなさんとともに、2030年に「つなぐチカラを進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」ことを目指しています。みなさんと一緒に日本サッカーの未来を描いていきたいと思います。」と参加した子どもたちに挨拶しました。