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「帽子内環境」に初めて科学的なメスが!「帽子をかぶるとハゲる」は本当か?

「帽子内環境」に初めて科学的なメスが!「帽子をかぶるとハゲる」は本当か?
帽子をかぶると髪や頭皮に悪影響がある?

 多くの人が、「長時間、帽子やヘルメットをかぶっていたら蒸れて髪の毛に悪そう」とか「毛が薄くなる原因では?」と思っているが、実際に、「帽子をかぶることが頭皮にどのような悪影響を及ぼしているのか」は、科学的にほとんど検証されてこなかった。

 そこで、これら“都市伝説”を科学的に検証しようという『帽子内環境研究会』(代表:東京メモリアルクリニック・平山 佐藤明男院長)が発足。5月30日、「帽子内環境研究会発足メディアセミナー」を都内で開催した。

 同研究会は、帽子を被ることで、帽子内の環境がどのように変化し、さらに頭皮や毛髪にいかなる影響があるのか、を科学的に探索し、同時に「健康的な帽子のかぶり方」を生み出すことをめざし、2016年1月設立された。

 メンバーは、北里大学医学部寄附講座再生医療形成外科学教授で、横浜市立大学医学部形成外科学 非常勤講師の東京メモリアルクリニック・平山 佐藤明男院長と九州工業大学 大学院情報工学研究院、電子情報工学研究系 コンピュータ・LS部門の小西直樹准教授、順天堂大学公衆衛生学講座の和田裕雄准教授の3人。

 1週間に何らかの理由で帽子やヘルメットを2時間以上被る人は、工場作業員(約740万人)、土木・建築作業員(約400万人)をはじめ、警備員、警察官、調理師、鉄道員、野球選手、競輪選手、競馬騎手などの職業人やスポーツ愛好者、サイクリング・バイクなどの乗車時、帽子愛用者といったプライベートでの着用など、のべ約2000万人いるという。

「帽子内環境」に初めて科学的なメスが!「帽子をかぶるとハゲる」は本当か?

 代表を務める佐藤先生によると、先生のもとを訪れる制服として(帽子を)着用している患者さんから、「帽子は頭皮や髪に影響があるんじゃないか!自分がこうなったのは、その影響じゃないか」と、いった質問がよく聞かれるという。

「帽子内環境」に初めて科学的なメスが!「帽子をかぶるとハゲる」は本当か?
代表を務める佐藤明男院長

 帽子内の湿度、温度や血流など、帽子を被った状態がどのような環境になっているのかを科学的に検証した簡易実験を、今年4月13~17日、東京都内で実施。成人男性51人が新品のヘルメットをかぶり、3時間、エアロバイクをこぐ有酸素運動を行った。運動中はヘルメット内部の温度と湿度をリアルタイムで計測。さらに運動前、運動後、そして運動後に洗髪した後の計3回、頭皮の血流と汚れ具合、付着している細菌の量をそれぞれ測定した。

 結果は、被帽により頭皮は汚れやすく、菌種は変化しないが菌量は増加していたことがわかった。被帽後、放置を続けると汚れ・菌種・菌量が増加する可能性があるため、洗髪による汚れや菌を洗浄すると効果が高いということが分かった。

 次に小西准教授が、同実験からわかった帽子内の温度・湿度状況について報告。温度・湿度共に帽子を被ってから最初の30分間で上昇し、その後高い値で留まった。その際、ヘルメット内環境は、シンガポール(年間平均31℃/87%)やマレーシア・クアラルンプール(年間平均32℃/80%)、コロムビア(年間平均30℃/87%)の“熱帯雨林気候”や国内で、毎年、猛暑の記録で話題となる埼玉県熊谷市の8月の平均値とほぼ等しいことがわかった。不快指数に当てはめてみると、80~85で全員が不快と感じるレベルにあることがわかった。

 なお、血流に関しては、残念ながら今回の血流測定データからは普段と被帽状態との差異はわずか1%程度と大きな差は認められなかった

 当日は欠席となった順天堂大学の和田氏からは、公衆衛生学の観点から熱中症の対策について紹介された(代読は佐藤先生)。被帽してジョギングすると暑熱環境レベルは31℃を超える人が多いため、リスクはⅣ(大きなリスク)~Ⅴ(非常に大きなリスク)になるという。暑熱環境対策として、“30分から2時間に1回は休憩と水分補給が必要で、水かぶりも有効”と紹介された。

「帽子内環境」に初めて科学的なメスが!「帽子をかぶるとハゲる」は本当か?

 1.暑熱環境レベルの改善(照明器具や窓ガラスの工夫、空調の利用、作業の見直し)
 2.作業レベルの改善(機器の利用など)
 3.衣服・装備の改善
 4.総合リスク評価時の考慮要素の改善(暑さへの馴れ、労働時間、水分補給など)

 同セミナーでは、特別講演として横浜労災病院皮膚科部長 齊藤典充先生が、「頭皮と毛髪の健康」に対して、皮膚科から見た頭皮影響・感染症について特別講演を行った。過剰なケアにより髪の毛、頭皮を傷つけ、抜け毛を増やしていることもあったり、適度なケアとバランスの良い食事の重要性について説明。また、米国皮膚科学会から提示されているヘアケアのアドバイスも紹介し、頭皮・頭髪を健康に保つための対策について述べた。

 セミナーの最後に、同研究会の今後の方針として、今回の実験で導きだせなかった「マイ帽子、マイヘルメットを用いての実験」、「不快指数と被験者の主観の相関関係分析」や、社会に向けた活動として、「研究会WEBサイトでの継続的情報発信」、「研究課題の公募」などを予定しているという。

 

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小西直樹准教授
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横浜労災病院皮膚科部長 齊藤典充先生
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菌種・菌量が増加する可能性がある
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運動30分後には帽子内環境は“熱帯雨林気候”


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適度なケアとバランスの良い食事が重要
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『帽子内環境研究会』セミナー
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菌量は増加
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不快指数80%台


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帽子内環境は“熱帯雨林気候”と同じ
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帽子内環境は不快
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洗いすぎ、ケアしすぎは逆効果
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食事も大事


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今後の方針




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