女優の八千草薫(82)が8日、都内で映画『くじけないで』(監督:深川栄洋/配給:松竹)の完成披露試写会に登場した。出席者は武田鉄矢(64)、伊藤蘭(58)、檀れい(42)、芦田愛菜(9)、上地雄輔(34)、ピエール瀧(46)、深川栄洋監督(37)、そして主題歌を手がけた歌手の由紀さおり(64)。
90歳を越えてから息子の勧めで詩を書き始め、98歳で処女詩集『くじけない』を上梓。2作目となる詩集『百歳』と合わせ200万部のベストセラーとなった柴田トヨさん。同作は、トヨさんの半生を『60歳のラブレター』の気鋭の深川監督が描いた感動作。
トヨさんを演じた八千草は「とても嬉しゅうございます」と着物姿であいさつ。観客に主題歌『わたしのうた』を披露した由紀の歌声に「由紀さんの歌がとても素敵なので柴田トヨさんも喜んでいると思います」と話した。
息子役を演じた武田は「母を亡くして早10年、架空なんですがおっかさん、かあちゃんと呼べる幸せを感じることができました。なんとなく亡くなった母の声が聞こえてきました」と感慨深く語った。医師役を演じた上地は「仕上がりを観た時に涙が止まらなくて、いろんなことに気づいたり、改めて確認できた。こんな作品にたずさわれて誇りに思います」と語った。
脚本・監督をつとめた深川監督は「一番最初に感じたことを脚本に、それを映画にしました。トヨさんの詩は人生がつまっているし、優しい素朴な視点に満ちている。2時間後にみなさんの心に宿るものがあると思います」と語った。
90歳という年齢の役に八千草は「自分より年上の方というのは頭で考えていたよりずっと難しく何度かカメラテストをしました」と撮影を振り返り「柔らかい感受性を90歳過ぎても持っているってどういうことだろう。自分はそういうことができるかと思いました。(詩の中の)『いつでも人生これからだもんね』という言葉を私も大事にし、思い出しながら少しずつ歳を重ねていきたいなと思いました」と想いを重ねた。
八千草は「トヨさんの詩は素敵なんだけどちょっとお茶目なところがおありで、悲しいこともちょっと角度を変えて“ふふふ”と笑って終わる。『こおろぎ』っていう詩も“深夜 コタツに入って 詩を書き始めた/私 ほんとうは と 一行書いて 涙があふれた”…キュンとくるんです。トヨさんのあったかい気持ちが伝わってくるんですね」と瞳を輝かせた。
最後に武田は「過激な言葉でいうと、“不幸せ上手”なんですよ。みんな幸せを探しているけど、幸せな人だけが幸せを探してない。トヨさんってそういう人なんです。あるものをずっと数えていく。息子がいる、歩ける、字がかける…幸せなんですよ。それが100万人を超える人に支持された。生き方がとても柔らかい。みなさんも幸せになるコツみたいなものを感じていただけたら」と呼びかけた。
『くじけないで』11月16日全国ロードショー。