ブレザーの制服を着た俳優・畑芽育が、学校の屋上に呼び出した先輩役のお笑い芸人・出川哲朗に向かって「告白」する大手菓子メーカーブルボン プチシリーズの「甘いめいちゃん」篇と、ちょっとすねるように訴える「しょっぱいめいちゃん」篇に注目した。
【CM推し】は、弊社サイトの編集長が興味を持ったCMを取材し、掘り下げていくオリジナル企画。
（取材：編集長・伊藤直樹）
出川さんと畑さんが高校生の先輩後輩役に挑戦した青春ショートドラマ「甘いめいちゃん」篇と「しょっぱいめいちゃん」篇は、ブルボンの公式TikTokアカウントや公式YouTubeチャンネルで見られるショートドラマ。
「甘いめいちゃん」篇では、真剣な表情から「先輩、実は話があって。私…ずっと大好きで」と照れたように告白する。「その…なんというか、、、先輩も同じなんじゃないかなぁ」というと2、3歩駆け寄り、「この気持ちわかってくれますよね」と、キラキラした真剣なまなざしでと思いを伝える。少し間を置き「だからお願いします。そのプチください」という。ここは予定調和のオチだが、さらにクスッと笑える2段目のオチが出川さんの「え、、あ、はい」というとぼけた表情でのリアクション。
「しょっぱいめいちゃん」篇では、コンクリートの地面を蹴って、ちょっと愚痴を言うように、「先輩ってさ、言ってることコロコロ変わりますよね」というと、目線をそらし、横を向きながら、「好きにすればいいんじゃないですか？」と、あきれた感一杯に言う畑さん。「はぁ」と2度ほどため息をつくと、2、3歩駆け寄り、ちょっと頬を膨らませたような怒り顔で「昨日はチョコチップ推してたのに、今日はうす焼推すんですね」と、語気を強めて言う。それを受けた出川さんは、ちょっとビクッとなりながら「ああ、、、」というと、少し相好を崩し「ああ」と言い、なんどか頷く。
このCMの【推しポイント】は、セリフとギャップで魅せる2段オチの妙。それを成立させているのが何度見ても笑ってしまう出川さんのリアクション芝居と存在感。その前フリでの畑さんの制服姿が似合っていて可愛く、演技も上手いからこそのギャップが面白い。
そこで、このCMを担当した広告代理店のクリエイティブディレクターに企画趣旨や発想のポイント、撮影エピソードや秘話などのお話をお伺いした。
この青春ショートドラマを作った意図をお伺いすると、「縦型動画を作ったのは、今まで、プチシリーズは、子育て主婦が中心だったので、ティーンを中心とした若い女性ユーザーにも幅を広げていきたい」という商品戦略から、SNSでのCM展開を考えたという。
そこで、SNSで影響力ある若手の女優として、畑芽育さんを起用。テレビドラマや映画でも学生役が多いイメージがあることから、「畑さんが活きるシチュエーションとして、学生さんの役」になったという。結果は、可愛くて、全然普通に違和感なく現役の女子高生に見えると、現場でも絶賛だったという。
一方、出川さんは元々プチシリーズのCMに起用されていたが制服姿について、「出川さんが制服着ているのはそもそも違和感がある。さらに、出川さんの体形に合うサイズの制服もそんなにあるわけではなく……芽育さんの似合いすぎている制服姿とのギャップが強調されたほうが、最後のオチとして登場してくるのは面白いかなと、リアクションの演技といい、その佇まいの存在感といい、出川さんの天才的なところをうまく引き出せたかな」と、キャスティングに大満足。
「甘いめいちゃん」篇は、「大好きな先輩に告白」するという設定だが、「しょっぱいめいちゃん」篇は、付き合っている付き合っていないではなく、年頃の女の子、思春期の女の子が、手前にいる先輩に塩対応する程度の設定で、セリフを見てもらったうえで自然体での演技だったという。ただ、「甘さ」「しょっぱさ」の強弱をつけて何パターンか撮ったが、「撮影現場ではどれもいいんですけど、編集していたら、今、流れているのが可愛さと面白さのバランスがよかった」ということで、今のパターンが採用されたという。
出川さん：ちゃんと絡むのは初めてじゃないですか。正直、大女優の匂いがしましたね。今日1日で。最初のCMの打ち合わせの時、監督が「リハーサルしとこうか」って言ったら、芽育ちゃんが「いや、本番で」』って。
畑さん：すみません本当に(笑)早くこの場(本番のセット)に行きたくて。
出川さん：だからそれがもう大女優の匂い。まだ新人だったら、「監督もう1回いいですか?もう1回お願いします」とか言うじゃない。それを「本番1発で」って。
という出川さんも、あまり練習をしすぎると型にハマっちゃうそうで、リアクション芸のレジェンドとしては瞬発力を重要視しているようだ。そのことについて畑も、
畑さん：私もそれでいうと、出川さんの“俳優魂”みたいなものを隣で感じていたんですけど、監督からの「ハハッって笑うんじゃなくてフッとニヒルな感じで」っていう要求をすぐにお芝居に出せる。もう俳優さんじゃないですかって思ったんですけど。
出川さん：俺は監督の要望のほかに、常に48通りの芝居を考えてますよ。常に監督に何言われても、ピピピピピって。その48通りの中の1つをやってるだけで、あと47通りやれって言われたらいつでもやりますけれど。
と、最後は出川流のジョークを交えて話したが、2人とも今回は勢いと自然な演技を大事にしたようだ。
最後に、CMを担当した広告代理店のクリエイティブディレクターからの【推しポイント】を伺った。
「縦型のほうは、芽育ちゃんの感情移入した演技と一気に落差のある出川さんの反応。我々も編集しながら何十回も観ているんですけど、スタッフの誰かが必ず毎回、出川さんのリアクション演技に笑うんです。ストーリーとしては一度見ればわかるでしょうけど、現場のリアルな面白さを何度も観てほしい。また、出川さんと畑さんはCM初共演。2人の並んでいる姿は、いまのところプチシリーズでしか見られないので、そのシュールながらも、よく見るとおもしろい画力（えぢから）を味わってほしい」とのこと。
このあと、出川さんがなんと言おうとしていたのか聞いてみると、「意図としては、ストーリーの文脈的に『自分の推しプチ』を話そうとした」そうで、うがちすぎたようだ。ただ、「本筋ではないやり取りを入れていくことで、テレビCMが心に残ったりすることもあるので、あえてああいうくだりを入れた」とのこと。
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