歌舞伎俳優・松本幸四郎（70）、中村福助（52）、市川染五郎（39）が13日、都内で来年2月から東京・日生劇場で上演される『二月大歌舞伎』製作発表会見に出席した。
来年4月に新しくなる歌舞伎座公演を前にした日生劇場での公演。『義経千本桜 吉野山』『新更屋敷月雨暈』が2013年2月4日から26日まで上演される。
会見の冒頭から幸四郎は今年8月に舞台の奈落に転落し重傷から急死に一生を得た染五郎を念頭に、「こういう日が来るのは一時は夢のようだと思っておりました。夢のようでございます。父・幸四郎としてごあいさつ、お詫び、お礼をさせて頂ければと思います。こういうことを歌舞伎の口上として申し上げたいと思っております」と、息子の生還に声を震わせながら切り出す。
福助も「幸四郎兄さん陣頭の中、染五郎さんの復帰公演にご一緒できて嬉しく思っております。（染五郎の方を見て）思わぬ休暇ができてエネルギーをいっぱいためて、みなさまの前で復帰できるのは本当に幸せなことだと思います」と、述べる。
当の染五郎は、終始神妙な表情を浮かべ「大きな役を頂いてありがたく思っております。また、2月に舞台に立たせていただくことを感謝しております。自分がいなかったかもしれないと思おいますと、生かされた責任を全うして2月から戦い続けたいと思っております。責任をもって務め上げたいと思っております」と思いを語った。
染五郎の大けがだけでなく、今年は今月5日に急性呼吸窮迫症候群のため歌舞伎俳優・中村勘三郎さん（享年57）が亡くなるという、歌舞伎界には悲しい出来事があった。幸四郎はそんな1年を振り返り、「いろいろあって一言で申出が得られる年ではないです」と、複雑な胸中を明かしたが、「私は歌舞伎の人間でありながら、過去とか未来を考えてませんで、自分にとって大事なのは、今このときなんです。私達は芸をしている、その瞬間、瞬間なんです。今を大事に、今を愛おしく思う。悲しみや苦しみがございましたが、お客様の悲しみを希望に、苦しみを勇気に私達役者は変えなければならないと思います」と、熱弁した。
勘三郎さんについては、密葬で勘三郎さんの妻・波乃久里子さんと話したという幸四郎は、「『幸四郎ちゃん。奇跡は起こらなかったよ』と言われました。私はそんなことないよ、勘九郎くん、七之助くんの2人の立派な息子がいるからきっと奇跡を起こしてくれるよと言いました」と、語りかけたという。
染五郎も、「とにかく今を、とにかく大事に生きるということにして、生き続けるというのを思って1つ1つ大事に生きていきたいと思っています。（勘三郎さんは）常に歌舞伎に危機感を持っていたのではないかと思います。その精神を受け継いで、生きてる歌舞伎というものを作っていきたい」と、そのスピリッツを継いでいく決意を明かしていた。
『二月大歌舞伎』は東京・日生劇場で2013年2月4日から26日まで上演！
