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若者の貧困描く『東京難民』「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない」

若者の貧困描く『東京難民』「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない」
「6年後の東京五輪より今の“東京難民”を」

 映画監督の佐々部清(56)が27日、都内で映画『東京難民』(監督:佐々部清/配給:ファントム・フィルム)の公開を記念したPOSSE試写会トークイベントを行った。出演者は原作者の福澤徹三、NPO法人POSSE事務局長の川村遼平。

 映画『東京難民』は、現代の日本を舞台にどこにでもいる大学生がふとしたことをきっかけに家も学籍を失い、社会的身分を奪われた“難民”になる姿を描いた問題作。主人公・時枝修(中村蒼)は父親の失踪のため授業料の未払いで大学を除籍され、住んでいるアパートからも強制的に退居させられる。ネットカフェに泊まりながら日雇いの仕事をする彼が見る世界は……

若者の貧困描く『東京難民』「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない」
映画『東京難民』トークイベント

 「僕も無数の仕事をする中で社会を勉強していった経歴」という福澤は専門学校の講師をするうちに変化する社会の状況を目の当たりにしたという。「十数年前は今より求人も多くて、いい会社からも来ていた。それがどんどん変遷していって、会社の質も落ち、今では会社自体に入れない、入っても続けられない。そういう構造的な問題が見えてきた」と同書のきっかけを語った。

 今の社会の状況をリアルに描いた小説に、当初は受け入れられなかったという佐々部監督。「でも最後まで読むと、まずテレビじゃやれない企画だった。今の日本でしか作れない。この作品が今の日本に合ってるのかな」と語った。

 テーマとなった若者の貧困について佐々部監督は「実はいうと、僕も去年の10月から“東京難民”状態で無収入。中年の人たちにも、ひょっとしたら相当リアルな話。それぐらい社会が疲弊している。政治を司る方にも6年後の東京五輪より今の“東京難民”を見て欲しい」と呼びかけた。

 NPO法人としてまさに若者の貧困の現場で活動する川村さんは「すごいリアルでありえる話」と話し「若者にはなんのセーフティーネットが無い状態。中高年の人たちの意識と若い人たちの意識の間にひとつ溝があるなと感じました」と指摘。福澤も「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない。これからシャレにならない状況に加速していくのでは。『こんなことも知らないの?』という人もいるけど、若い人は実際には情報を持っていない」と危機感をつのらせた。

 川村さんは「一昨年ぐらいまでは“ブラック企業は若者の甘え”と言われていて、その時の政府の方針が“若者を骨太にしよう”だった」と苦笑しながら「現在の状況がこの作品にエンターテインメントとして重なった」とコメント。佐々部監督は「世に送り出す中で、10人中2人に伝われば。例えば去年の暮れに宮下公園からホームレスを追い出すということをやった。それってどうなのよ、そんな意識をちょっとでも持っていただけたらいいな。必要な映画かなと思って作りました」と希望を込めた。

 映画『東京難民』は2月22日全国ロードショー!

若者の貧困描く『東京難民』「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない」
佐々部清監督
若者の貧困描く『東京難民』「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない」
作家・福澤徹三
若者の貧困描く『東京難民』「単に“若者が甘えている”という状況ではすまない」
NPO法人POSSE事務局長・川村遼平
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