日本を代表するフォークグループ『アリス』が18日、都内で42年目にして初めての日本全国47都道府県をワンツアーで巡る全国ツアー完走と、10月26日、27日の大阪2DAYSと10月31日~11月2日の日本武道館3DAYSに向けた合同インタビューを開いた。
今年は2013年にはニューアルバム『ALICE Ⅺ』の発売とコンサート史上初となる全県をワンツアーで周る59公演12万人を動員するなど、過去最大級の活動再開年となった。完走したばかりの3人に、音楽評論家の富澤一誠がインタビューした。
アリスは、1971年に“チンペイ”こと谷村新司(64)、“ベーヤン”こと堀内孝雄(63)、“キンちゃん”こと矢沢透(64)の3人で結成された。1981年に活動停止。その後、1987年、2000年、2005年、2009年と、4度期間限定で活動再開をしている。
富澤 「本当の意味での全国ツアーとなった59公演を振り返っての感想は」
谷村 「やりがいありました。初めは気が遠くなる感じだったけど、1週間ぐらい過ぎて身体が慣れ、ペースができてきました。いろんなこと思い出しました。たくさん待ってくれている方がいて、その方たちのエネルギーに癒されました」
堀内 「いいムードのままノリノリでこれた。乗り越えられるのはすごいこと」
富澤 「普通は全国ツアーといっても大きい都市だけなことが多いですが、あえてなぜ全国を回ろうと思ったのですか」
矢沢 「昔だったら周らずに6大都市とか20ヶ所だったんですが、全国を周って満員になったことは、待っててくれていた人たちがいた。その方たちをおろそかにしていたことに、悪かったなと若干、そういう気がしました(笑)」
谷村 「アリスは3人で楽器持って全国を周っていたのが原点(※1974年には年間303ステージという記録を作った)。初めていく街にたくさんの人たちがいて、応援してくれた人たちがいる。初心を思い出した。原点回帰。東日本震災の時に、東北3県に行けなかった。今回は、仮設住宅にも楽器を持って歌を届けたいという思いがありました」
富澤 「4年前の2009年には、20本のライブをしましたが」
谷村 「2009年の(復活ライブの)時は、懐かしい曲を聞いてもらおうと思ってやりました。2013年は新しいアルバムを発売し、今の気持ち、今を伝えられること。現在進行形のアリスを観てもらいたいなぁとの思いがあり、勢いのあるステージになった」
富澤 「1987年の『ALICE X』以来、26年ぶりのニューアルバムを発売しましたが、曲作り、レコーディングは大変だったんじゃないでしょうか」
矢沢 「大変だというのは、傍で見て判断することです。やっているほうは、レコーディングもツアーも楽しいから疲れを感じないです」
谷村 「一曲一曲に違うメッセージが入っている。『ユズリハ』は堀内と。次の世代、その次の世代を感じながら書きました。いままで、そういう発想はなかったし、そういう歌はなかった。『Western Dream』は、キンちゃんとやった。アメリカに憧れてカッコいい音楽をやっていたが、オリジナルを作らなきゃと思えた。今ならではの作品です」
堀内 「11枚目作ったおかげで、何が新しくて何が古いかがミックスされている。懐かしさだけのほじくり出しではなく、うまく融合した。結果、あの頃はよかったねといっても過ぎたこと。それよりも、アリスって面白いな、いいバンドだなと。背中を押す力になったと自負しています」
富澤 「だから、“解散”ではなく、“活動停止”と。進化し続けていると」
堀内 「気持ちが前向きだから前進し続けられる。嬉しいですよね」
富澤 「再結成、再始動というと、昔の名前で出ますになるバンドが多い。そんな中でアリスは、今が旬のバンドということ? ライブを観させていただいて、3人のバランスが活動休止前は、いびつになったときもあったけど、今は正三角形になっていると思いました」
谷村 「3人ともそう感じていると思います。音楽は楽しいと実感できたツアーです」
堀内 「あのころもよかった。テイストが変わって、同じ歌うたっているのに、今の64歳はちゃんと歌っている。技量的に落ちなかった。それが支えている。今の方が上手い。あのころは、チンペイさんの(高い)声を聞いて羨ましかった。いま、高い声が出るようになり、追いつきました(笑)」
谷村 「僕は逆に低い声が出るようになった。2人のキーが一緒になって来て、以前から(2人の声は)似ていたんですが、今回は輪をかけて似てきたかも」
矢沢 「(ドラムも)だんだんパワフルになっている」
堀内 「いいポジションが彼なりにある。それがよかった」
富澤 「10月31日~11月2日の3日間を武道館で行いますが、1978年には日本人アーティストとして初めて日本武道館3日間公演を成功させる新記録を作り、翌79年には武道館で7日間公演を行い、伝説を作った歴史がある場所」
堀内 「特別な場所だったから出来たという。時代を超えて超えて武道館にブチあたった。すごいことです」
谷村 「3人で初めて行ったとき国旗が吊ってある。ここは武道をやるところというイメージだった。ビートルズが武道館で音楽をやってくれたことでできる。特別な感じがする場所です」
富澤 「3日間の内容というのは、差支えない範囲で教えていただけませんか」
谷村 「ツアーのメニューをやります。ツアーに来れなかった方もいらっしゃっているので、ツアーはこんな感じでしたというにおいを残しながら、やれなかった曲をいっぱい聞いてもらえるようにリハに突入しました」
富澤 「最終ゴールは?」
谷村 「武道館は特別な場所なので、やれるチャンスがあればやりたい。前回は東京ドームまで行ってしまいましたね(笑)」
富澤 「その後は?」
谷村 「いまのところは考えていないです。それぞれのソロの世界に戻っていく。久しぶりにコンサートに来た。何十年ぶりに来た。3世代でという人もいらっしゃっていました。ソロの世界を応援してほしいなぁ。みんなの声があがって、やりたいなと思ったらアリスがあるかも」
富澤 「40年以上やってきていて、殿堂入りみたいになってきていますが、レコーディングやツアーにご自身をかき立てるもの、鼓舞するものはなんですか」
堀内 「しがみついているんじゃないですか。大好きだから許容されるかどうかわからないけど、それがなくなったら止めればいいじゃん。真のところは種火が残っている。気持ちが残っているうちは70歳までいきたい。まだ燃えてます」
谷村 「音楽で、次の世代、その次の世代に生きていこうとしている人が多い。3人が64歳なって、全国ツアーできる。そんなグループがいる。これはその人たちにとって目印・目標じゃなくて、音楽は終わりがない自分が終わりだと思わない限り終わりはない。それぞれがまだまだすごくいい、音楽性・メロディーラインを持っていて嬉しかった。切磋琢磨して、次の機会を虎視眈々と狙って、ソロでできれいばいい」
矢沢 「なぜ音楽やっているか。好きだからしかない。朝起きてギターを弾く。ドラムのフレーズをこうした方がいいという事を考えられるのは現役と同じ。昔と変わっていてない。終わりを告げない限りはやっていくんだ。存在していることがメッセージ」
「アリス コンサートツアー2013~It’s a Time~」FINAL 3DAYS
日付:2013年10月31日~11月2日
場所:日本武道館
料金:全席指定 8400円(税込)
問い合わせ:キョード―東京 0570-55-799
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