歌舞伎俳優の尾上菊之助（35）が29日、都内で歌舞伎座新開場柿葺落『九月花形歌舞伎』の製作発表を行った。出席者は市川染五郎（40）、尾上松緑（38）、市川海老蔵（35）、片岡愛之助（41）、中村勘九郎（31）、中村七之助（30）、作家の夢枕獏（62）。
この春改装工事を終え、リニューアルされた歌舞伎座で9月から行われる『九月花形歌舞伎』。若手役者が集結し昼の部では古典の大作『新薄雪物語（しんうすゆきものがたり）』と『吉原雀』に、夜の部では夢枕原作の新作歌舞伎『陰陽師』に挑む。
今年2月に中村吉右衛門の四女・瓔子さんと結婚した菊之助。先日、瓔子さんが妊娠5ヵ月、12月に出産予定と発表されたばかり。菊之助は報道陣から祝福されると「ありがとうございます」と笑顔。「家族が増えるということは嬉しいことですし、それ以上に責任感が強くなると思います。より一層歌舞伎に精進させていただきたいと思います」と喜びを語った。
昼の古典と夜の新作という対比も魅力の同公演。4月に再開場した歌舞伎座が3ヵ月で60億円超の興行収入を記録したことも話題になったが、染五郎は「『新薄雪物語』は、これ以上大きな作品はないと言われるぐらい傑作であり、大作であると言われる作品。記録と記憶に残る作品を目指していきたい」と意気込みを語った。松緑も「私の歌舞伎役者人生としても有意義な月になると思います。力強い同輩と一緒にがんばっていきたいと思います」と語った。
菊之助は「いつの時代にも問われることは何をもって歌舞伎かということです。江戸時代に花開いた歌舞伎の、身体、意識、呼吸を役者が体現することで歌舞伎になると信じています。私自身も古典と新作を楽しみたいです」。これだけ同じ世代が集う舞台も初めてということで「またこのメンバーで10年後、20年後観てみたいと思う作品を演じたい」と愛之助。勘九郎は「昼の部では染五郎さんの息子役ということで若々しく務めさせていただければ」と笑いを誘い、弟の七之助も「一番若いというのが居心地が良い。存分に甘えて意見を言って、一緒に稽古を作っていきたいなと思います」と笑顔で抱負を語った。
また、『新薄雪物語』では染五郎演じる兵衛と、松緑演じる伊賀守が互いの子供のために陰腹を切るという見せ場があるが、松緑は「切腹ということも理解しがたい。ただ僕自身、38年の人生の中で幾度か腹を切って死んでやろうと思ったことがある。相手の意志も確認せずに、お互いが“こうであろう”という思いの中で腹を切っていく。そして、それがお客さんに伝わらないと意味がない。初めて（松本）幸四郎の叔父に稽古をつけてもらうのですが、子供のころからつちかってきた染五郎さんの信頼関係がシンクロして舞台に出せれば」と語った。
『九月花形歌舞伎』は9月1日から25日まで歌舞伎座で上演される。
