映画『真夜中のカーボーイ』、『クレイマー、クレイマー』、『レインマン』などで知られる米俳優ダスティン・ホフマン(75)が9日、都内で行われた自身初の監督作品『カルテット！ 人生のオペラハウス』(配給:ギャガ)来日記者会見に女優・樹木希林(70)とともに出席した。
ホフマンが映画のプロモーションで公式に来日するのは21年ぶりということで、場内には多数の報道陣が。英国の美しい田園風景に建つ音楽の館を舞台に、オスカー名優陣と名音楽家たちが共演。引退した音楽家たちが暮らすビーチャム・ハウスの面々は、経営難を打破するため、伝説のカルテット(四重唱)復活を期待する。だが、過去を引きづる4人の人間関係は壊れたままで…。
前日に行われた同作のジャパンプレミアでは、年老いたミュージシャンに長年仕事が与えられていない現状に涙したホフマンだったが、この日は登場するなり、「映画を観てくださった方は、楽しんでいただけたと期待しています。もし観ていない人がいたら退室してください」とジョークを飛ばし、ゴキゲン。前日と同じく妻に映画監督初挑戦を促されたエピソードを話したところで、自身のiPhoneのカメラで報道陣を記念撮影し、笑いを誘った。
報道陣から「誰もが楽しめる作品にするために工夫したことは？」と聞かれたホフマンは、「例えばマギー・スミスは目が悪くて、映画と同じように実生活でも杖を使っています。20代、30代の人は年を取ることを考えずに生きていると思うが、お客さんもいつかはこうなることをわかってほしい」と返答。
75歳にして初監督を務めたことについては、「老いた年齢の革命“オーバーエイジレボリューション”の最初にいると思います。この映画では、実際に引退したオペラ歌手やジャズミュージシャンを集めて、ドキュメンタリータッチにしたかった。みんな引退したくないし、人生が終わったわけじゃないんだということを主張したい。年だからできないと言われる筋合いはない。こっちが決めることなんだという精神で、この映画に臨みました」と、熱く語った。
イベント途中で、樹木がゲストとして登壇し、「奥様がやられている会社の匂いがある数珠のようなものをいただきました。私は年を取って物を整理したいので、物をいただきたくないと思っていたんですけど、申し訳ないのでいただきました」と、ホフマンからプレゼントを受け取ったことを明かす。さらに樹木が「私は何もお土産がないんですと申し上げましたら、監督が青年のような返事をなさいました。『後でお金をくれ』って」とぶっちゃけると、場内爆笑！
ホフマンと同じステージに立っていることに感激しきりで、「私が役者を始めた頃にマイク・ニコルズ監督が『演劇の究極は掛け合い漫才だ』ということを聞いて、それを肝に銘じてきました。『卒業』の主演の方にお目にかかれると思っていませんでしたので、きょうはカメラを持ってきました。ロンドンにいる孫が写真を送ってくれと言ったもので」と、カメラを手に笑みを浮かべる。
同作を鑑賞したという樹木は、「映画の絵画的な美しさと役者たちの技術もさることながら、魅力的に生きる能力を集めて、監督が指揮者になった。年を取るのはステキだなと思いました。日本では、年を取ることはステキなことになっていないので、いい機会をいただきました」と称賛した。
ここで、ホフマンは「ここらへんで本当のことを言うべきですよね」と切り出し、「40年前、一緒によくデートしました。そのときは非常にホットな女優さんでした」と、ジョークで報道陣を笑わせる。すると、ホフマンは樹木の肩を抱いて寄り添い、頬にキス！ 一斉にフラッシュがたかれる中、樹木が「私は40年間別居している夫がいますので、非常に困りました。いまだに焼きもちを焼き続けていてくれているので、殺されないようにしたいと思います」と、内田裕也(73)のことをネタにすると、場内がドッと沸いた。
MCから「頬にキスされて幸せですよね？」と聞かれた樹木だったが、「そんなこと考えている暇はありませんでした」と素っ気なく答え、「私はちょっとした懸念や破綻を好みますけど、実生活ではもう70なので、収めたいなと。子供たちや孫たち、夫にも芯から愛情をいただけるような私になりたいというのが、これからの人生の目的です。さんざんやんちゃしてまいりましたので」と、今後について真面目にコメント。同作のヒットを祈願して、ホフマンとともに鏡開きを行った。
ホフマンと手をつなぎながら退場する樹木に対し、『オセロ』の中島知子(41)が松竹芸能と契約を解除したことについて報道陣がコメントを求めたが、これに答えることなく、樹木は会場を後にした。
4月19日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開。
