歌舞伎俳優・坂東玉三郎(62)が28日、都内で日本ロレックスpresents『アマテラス』製作発表に元宝塚歌劇団の女優・愛音羽麗(あいねはれい)らとともに出席した。
歌舞伎の立女形であり、人間国宝である玉三郎による新生『アマテラス』が、2007年の再演以来、6年ぶりの上演が決定。有名な日本神話の『古事記』を題材とした同作は、玉三郎の光あふれる神の舞と、太鼓を中心に伝統的な音楽芸能をベースとする『鼓童』のダイナミックかつ繊細な音の世界の2つが融合したもので、観客の心を大きく揺さぶり好評を博した。
会見には玉三郎、愛音をはじめ、松竹株式会社専務取締役・安孫子正氏、TBSテレビ取締役・八木康夫氏、『鼓童』代表の見留知弘氏(42)、音楽監督の吉井盛悟氏(31)も出席。主人公・アマテラスを演じ、演出も務める玉三郎は、「2006年に初演したものがここで再演になることは、思いもよらなかった。とくに今年は3ヶ月連続公演です」と再演を喜び、「私は本当は主演と演出はしないんですけど、演出をしないと皆さんの演奏者とのコラボレーションにならないということで、演出も担当させていただくことになりました」と、00年から続く『鼓動』との絆の深さを語った。
昨年10月に宝塚を退団した愛音に対しては、「(共演できて)嬉しい限り。私も愛音さんも男も女もやる俳優なので、そういうご縁を感じる」と、女形の自身と男役スターだった愛音をネタに、場内の笑いを誘う。愛音は今回の上演にあたり、『鼓童』の稽古場で稽古を重ねたようで、玉三郎は「寒い稽古場でも裸足で熱心に稽古されていて、本当に愛音さんをお迎えしてよかったなと思いました」と称賛した。
アメノウズメ役の愛音は、宝塚時代から玉三郎の舞台を拝見して勉強していたといい、「舞台のためなら何でもなさるという姿勢に心から尊敬しています。私なりの表現でアメノウズメを演じたい」と呼応。
報道陣からの質疑応答では、アメノウズメに愛音を抜擢した理由について聞かれた玉三郎が、「元団長の植田さんにご相談したら、この子だったら大丈夫だからと推薦をいただいたので、本当に植田さんには感謝しています」と、宝塚歌劇団の特別顧問・植田紳爾氏(80)に礼を述べながら明かした。
これに愛音は、「宝塚を出たところなので、右も左もわからぬ状態で、不安と緊張でいっぱい」と恐縮していたが、「玉三郎さんや皆さんが『大丈夫だよ』と大きな船に乗ったように受け止めてくださっている。その流れに身をゆだねて、私が出演させていただくという意味をしっかり噛み締めて、私が加わることで新たな色、世界を作っていけたら」と決意表明。
さらに「男役として表現の追及をしていたので、女性役として踊ったり、歌ったりは、いまリハビリ中でございます」と笑いも入れつつ、「今回、玉三郎さんは神様。男性ですけど、あのように美しいので、男性、女性という性別を越えた魂として演じられたら」と意気込んだ。
『鼓童』の見留氏は、「また玉三郎さんと共演させていただいて、本当に嬉しい。6年経つと演奏者も若返っており、今回のメンバーは直接玉三郎さんに指導いただいたメンバーです」とコメント。
同じく『鼓童』メンバーの吉井氏は、「今回は大役ということで、誠に恐縮に思っておりますが、気合を入れて頑張っていきたい。神話をモチーフにしているので、原始的な日本の神秘の部分を和太鼓を中心としたオーケストレーションで作っていきたいと思います。以前とは違う新曲も挟ませていただきます」と、音楽監督としてのこだわりをのぞかせた。
7月4日から28日まで東京・赤坂ACTシアターにて上演。その後、9月5日から29日まで福岡・博多座、10月5日から27日まで京都・南座で上演される。
