今月5日に57歳で亡くなった歌舞伎俳優の中村勘三郎さんの葬儀・告別式が11日、東京・文京区の自宅で行われた。
この日は雲ひとつない快晴の青空。午前11時から行われた葬儀は密葬とされていたが、10日に行われた通夜に引き続き多くの弔問客が訪れていた。
12時45分、中村福助(52)、中村獅童(40)、江川卓(57)らがひつぎを担ぎ玄関から現れると期せずして「中村屋!」という掛け声が飛び交い、天使を型どられた紙ふぶきと銀色のテープが舞い上がった。喪主を務める長男の勘九郎(31)、次男の七之助(29)は京都・南座の行われている『當る巳歳 吉例顔見世興行』のために駆けつけることはできなかったが、勘九郎の妻の女優の前田愛(29)が位牌を持ち、隣りには勘三郎さんの妻の好江さんが孫を抱きしめ沈痛な面持ちで見守っていた。
故人と親交が深かった野間脩平さん(69)が、好江さん、勘九郎、七之助による連名のあいさつ文を代読。「短い人生でありましたが素晴らしい先輩、後輩、仕事仲間、お友達、ファンの方たちに囲まれ、楽しい人生、素敵な人生、格好いい人生をまっとうすることができたと思ってます」と早過ぎる勘三郎さんの死を悼んだ。
131日にわたった集中治療室での闘病の日々では、11月の初旬に3ヵ月ぶりに声を出すことができたという勘三郎さん。その時の言葉も「好江、雅行(勘九郎)、隆行(七之助)、(前田)愛、七緒八(なおや、勘九郎と前田の長男)」と家族の名前を呼び「ありがとう」と感謝の言葉だった。
「大きな、大きな光を失ってしまいましたが、彼が残してくれた偉大なる愛情を心のお守りにして生きてゆくことが私たちの使命だと思います。波野哲明(なみの・のりあき)を主人に、父に持てたことを私たちは誇りに思っています。最後にもう一度、ありがとうございました」と結ばれると、列席者からは涙が流れた。
出棺時には歌舞伎の舞台のように拍子木の音が鳴り、「中村屋!」「十八代目!」という掛け声が力強く響きわたる中、勘三郎さんを乗せた車はしめやかに自宅を後にした。
本葬は今月27日正午から東京都中央区築地の築地本願寺で営まれる喪主は長男の中村勘九郎(31)、次男の七之助(29)。午後2時から一般焼香を受け付ける。