北朝鮮・金正日総書記の専属料理人を務めていた藤本健二氏が26日、東京・文京区の講談社で、著書『引き裂かれた約束-全告白・大将同志への伝言-』(講談社)の発売を記念した記者会見を行った。
北の若き最高指導者・金正恩氏と、藤本氏の会談キャンセルの背景、金正恩氏の真の生い立ちと人間像、藤本氏の家族を襲った悲劇などが詰まった一冊。藤本氏は、黒のバンダナにサングラス姿で登場し、報道陣の前で金正恩氏宛の手紙と同書を封筒につめ、ハングルで宛先を書き、自身のサインも入れた。
まず、藤本氏は、「『9月1日には必ず帰ってきます』と、正恩氏と約束したが、政府から『1週間帰るのを遅くしてくれ』と言われて、私は首を横に振りました」と、日本政府が約束を反故にしたことを指摘。さらに「『いま国会中で、野田(佳彦)首相が書簡を書けない』と言われ、私もやむやむOKしてしまった。その1週間後、ホテルで大臣と会ったとき、彼は書簡も信書も持たず、手ぶらでやって来たので、あ然としました」と、当時拉致問題担当大臣だった松原仁氏(56)を批判した。
なお、正恩氏への手紙の内容については、「11年ぶりに共和国へ帰って、素晴らしいVIP待遇を受けて、身にしみじみと伝わってきた。そのことを決して忘れてはいけないと手記を発表しました。また、奥様の正女のご懐妊にも『丈夫な赤ちゃんをお産みください』と祝電を打ちました」と、赤裸々に明かす。
報道陣からの質疑応答では、「松原元大臣がホームページで、『藤本氏の事情で先延ばしにした』と反論されているが？」と聞かれ、「私の事情ではありません！」と感情を露わにする場面も。続けて、「『9月1日(に帰国すること)は避けられません』と言ったつもりです。正恩大将との最初の約束ですから。それはできません！とお断りしたんです」と、正恩氏との絆を強調。
また、12月16日に行われる衆院選については、「怒りをぶつけようと思っても、もう民主党終わりですよね。100％政権はありません。自民党になるでしょう。私の知人が安倍(晋三)総裁と強いパイプがある。近々落ち着いたら、ご挨拶に行こうと話もしています」と、次期政権は自民党が握ると予想し、日本と北朝鮮の問題の改善を期待した。
一部週刊誌で、藤本氏が覚せい剤の売人と報道されたことには、「反論するにしても時間が必要ですし、落ち着いたら何らかの手続きを取ろうと思います。事実とは違います。記事では、97年に中国の大連でそんな取引をしたことになってますが、私は96年から98年まで沖縄にいましたから。インタビューした人が、完全なデタラメ言ってますよね」と完全否定し、法的措置も辞さない姿勢を示す。
最後に、「日本海の丸一旅館は、夕焼けがキレイで、いつかあそこに正恩大将を連れて行きたい。日本と共和国が握手して、肩を組み合う日が、一日も早く訪れてほしい」と、自身の希望を語った。
『引き裂かれた約束-全告白・大将同志への伝言-』は、1575円(税込)で発売中。
