
映画『ギリギリの女たち』(監督:小林政広/配給:ブラウニー)初日舞台あいさつが28日、東京・渋谷ユーロスペースで開かれ、主演の女優・渡辺真起子(43)、中村優子(37)、藤真美穂(33)とともに小林監督(58)が登壇した。
震災をきっかけにニューヨークから宮城・気仙沼の唐桑町にある実家の一軒家に帰ってきたダンサーの長女・高子(渡辺)。同じく、故郷を離れ東京で主婦をしている次女・伸子(中村)と実家で再会したが、会話は15年ぶりでぎこちなく、どこかかみ合わない。そこに、置き去りにされ1人で家を守り続けてきた三女・里美(藤真)が現れ、2人の姉に対し怒りを爆発させることに。バラバラになってしまった3姉妹だったが、傷つき合いながら互いの気持ちを吐き出していくことで心境に変化が起こり再生へと向け歩き出してゆく。俳優・仲代達矢が主演し話題となったロードムービー『春との旅』や『愛の予感』など、国際的な評価の高い小林監督の最新作となり、35分ワンカットで回したり、101分をわずか28カットで構成するという挑戦的な作品となっている。
まずは、2006年に一般人男性と入籍し今年8月に出産予定と報じられていた中村が、大きなおなかをいとおしそうに見つめながら、「出産ギリギリでございます」と語り、「妊娠しました。役でとても大好きな台詞を叫んでいるんです。『子供作るぞ!』というものなんですけど、そう言ったらたら無事にこんな感じになって、ありがとうございます」と、お茶目に笑うなど和やかな面もあった舞台あいさつ。
しかし、撮影されたのは東日本大震災が起こった半年後の8月、気仙沼の唐桑町には被害の爪あとが生々しく残っており、登壇者全員には撮影していいのかという葛藤があったという。小林監督は、「行くまではよかったんですが、行ってから、ここで映画を作るのかという惨状でした。2週間くらいの期間でしたけど、うろうろして悩んだんです。地元の人から反感を買っているかなと思ったんです」と、胸が詰まったそう。
それでも、撮影への背中を押してくれたのは地元の住民だったそうで、小林監督は、「『非日常でイベントみたいなのがあってもいいなじゃないか』と背中を押してくれたんでやれるようになった」と振り返り、「そのときは喜劇のような作品を作るのが不謹慎かなと思ったけど、1年経って、そのときの僕らの思いはどうでもいいことだと思いました」と、いまの思いを。それに続き渡辺も、「毎日毎日考えた。撮影をするというだけじゃなく、地元の方と、『天気がいいね』とか言葉を交わしながらできた映画です」と、しみじみと語った。

また、中村は、1カット1カットが長尺の作品になったことに、「あまりの緊迫感に気絶するかと思った。現場が息が詰まった状態だった。苦しかったかな」と、女優として試される部分があったという。藤真も「いつ怒鳴り声が来るか日々怯えていました。撮影前から白髪が出はじめて、すごい食べてたんですけど、普段はやせるのに今回は太ったんです。ストレス以外のなんでもないんじゃいかと思いました。渡辺さんと小林監督が10回夢に出ました」と、苦労があったそうだ。
最後に、藤真が、「すごい題名ですが、見終わった後、女性はとくにですが、スキップできちゃうような作品になっています。ぜひ、観終わった後に、周りの大切な人を抱きしめてもらえれば」と、作品のことを思い出し感極まって瞳をうるませると、中村も、「土地と人との関係家族の物語かなと思っています。いろんな家族のあり方が、それがかえって普遍的な家族の絵につながっているのかなと思います」と、声を震わすことに。
そんなさなか、小林監督が「ちょっと変わった映画ですけど、作ってるスタッフとキャストの生き様みたいなものが割とむき出しに出てくる映画です。よかれ悪しかれ、あれが僕らのあのときのできたことだと思います。観やすくしていく作業を一切しなかったのでどう思われるかわかりませんが、この映画はそういう作りがベストだなと思っています」と、作品にかける思いを明かした。
映画『ギリギリの女たち』は28日よりユーロスペース、シネ・リーヴル梅田ほか、全国順次公開され、『第24回東京国際映画祭特別上演作品 震災を越えて』、『第41回ロッテルダム国際映画祭』、『第13回全州(チョンジュ)国際映画祭』にも出品が決まっている。











