岸田政権が「新しい資本主義」実現に向けた取組として、2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を決定した。この計画は、2027年度までに投資額を現在の10倍、10兆円規模に拡大し、将来10万社のスタートアップを創出し、時価総額10億ドル以上のユニコーン企業を100社創設するというもので、日本の産業をもっと活性化させ、第二の創業ブームを実現することを目的にしている。
※スタートアップとは、革新的な新しいビジネスモデルを考え、新たな市場を提供することで、短期的に事業価値を高めて成長する企業や組織のことを指す。
(取材・撮影:伊藤直樹©ニュースラウンジ)
トップ写真は、「CxO-Pass」について語る『アクシスコンサルティング株式会社』代表取締役会長COO 伊藤文隆
政府の大号令もあり、2020年に4015社だったスタートアップの設立数は、2023年には9781社と倍以上で、2024年も約10,000社(9891社)が設立された。(スピーダ スタートアップ情報リサーチ『2024 Japan Startup Finance』より一部抜粋)
これに伴い、スタートアップの成長を加速させていく上で、ニーズが高まっているのがCxO(業務執行役)だという。そこで、コンサル業界に精通した転職エージェント『アクシスコンサルティング株式会社』が3月6日自社オフィスで「急増するスタートアップのCxOポジションの採用実態と最新動向が分かるメディア向けラウンドテーブル」を行った。
CxOとは、Chief × Officerの意で、企業の特定分野における最高責任者を指す総称ポジションのことで、『アクシスコンサルティング株式会社』代表取締役社長COO伊藤文隆氏は「今までは、事業運営、各マネージメントはですね、各部門のマネージメント、事業運営を軸に考えて、いろんな業務を執行しておりましたけども、CxOというのは、いわゆる経営課題に対して経営視点で業務を執行していくスペシャリティを持った方」と説明する。
近年、COO(最高執行責任者)やCFO(最高財務責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)、CTO(最高技術責任者)など、社長の右腕となる様々なCxO(業務執行役)が誕生しており、大手企業ばかりか、ベンチャー企業とかスタートアップの会社でもCHRO(最高人事責任者)はかなり増えているという。
日本国内のスタートアップが会社の成長を加速させていく上で欠かせないCxOの求人は、年間で約5850件(2024年末時点でのスタートアップ社数約10,000社より、『株式会社StartPass』独自調査)に上るとも言われている。
しかし、その一方で、「これから日本の労働人口どんどん減り、優秀なハイエンド人材(=企業や社会の課題を解決し、価値創造を推進できる人材)がこれからどんどん不足していく時代に突入していく。これはスタートアップだけでなく、大手企業でもCxOのポジションの確保に苦しんでいる。今ですら足りないのに、これからさらに需給バランスが崩れていく時代に入ってくる」(前出・伊藤文隆氏)と説明する。
続いて、「日本をスタートアップしやすい国へ。」というミッションに掲げているスタートアップ企業である『株式会社StartPass』執行役員 COOの早川浩之氏は、スタートアップにおけるCxOの採用実態と最新動向について語る。
スタートアップに対して、人、物、金、情報など様々な角度から経営課題を解決していくような支援をしている会社である『株式会社StartPass』に早川氏自身も副業、業務委託から入り、3ヶ月の期間を経て昨年の7月に執行役員という形で正社員として加わったという。
昨年末から年明けにかけて、私たち独自で、スタートアップファンダー向けに、主にシードありき中心に100社近いところでアンケートを取った結果を示しながら、「やはりラウンドを重ねるにつれて、CxOという肩書きを持った方々が増えてくるというのがお分かりになるかと思います。特にこのプレシリーズとかシリーズAといったラウンドになってきますと、ほぼ多くのスタートアップが、やはりファウンダの方1人ではなくて何かしらのポジションを持ったCxOという方々がジョインしてくるというところが改めて確認が取れているような状況です。ポジションで言うと、CTO(最高技術責任者)、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)に在籍している方が多い」と説明。
ところが、「潜在的なニーズとしては、さらに前のフェーズ、シード期のところから本当に優秀な方がいれば、状況によっては欲しい。ポジションの傾向としては先ほどと同じではありますが、COO、CTO、CFO ないしは、よりこういう事業をスケールアップさせていただくために、マーケットの観点からCMO(最高マーケティング責任者)といったところのポジションのニーズが高まっているということも見えております」と報告した。
そこで現役のコンサルタントの4分の1のデータベースを持ってる『アクシスコンサルティング株式会社』とスタートアップの約10パーセントが契約する『株式会社スタートパス』が共同で、コンサルタントがスタートアップのCxOポジションを副業から始められるマッチングサービス『CxO-Pass』を2024年9月に開始したという。
『アクシスコンサルティング株式会社』の伊藤氏は、『CxO-Pass』の特徴について
1つ目が未公開の求人に出会える
2つ目がファンダーと面談ができる
3つ目が副業で相性確認ができる
と3つ挙げた。年代と役職、人数と経験者数としては、1番大きいのは30代の方が6割ぐらい。30代のうちにCxOの経験を積むというのはすごく大きなことだと思うんですね。
大きな会社になると、多分CxOの経験は50代ぐらいの方が多いと思うんですけども、我々のコンサル経験者の方、それからスタートアップのこれから成長していくであろう企業さんとのマッチングで言うと、中には20代の方も候補者になる。だから、こういった20代、30代の方でのCxO経験者がこれから増えていくというプールを我々が作っていきましょう」と語った。
日本国内で2024年にCxOポジションを募集している年間求人数が約5850件ぐらいあるんですが、当然その(ニーズに応えられるCxO経験者の)人数はいない。それでは、副業でCxOをやる場合、どれぐらいかというと、週8時間(1日・20%稼働)で、平均月収が20万円。平均契約期間は3ヶ月契約~だという。
伊藤氏は、「収入のために働いている方はほとんどいらっしゃらなくて、結果的にこの収入になっていますということですけども、どちらかというと、多分、CxOの経験を積んでいくということもプライオリティが高いんじゃないかなというふうには思っております。また、スタートアップにとっても、「昼間は大手企業の経営企画に対して戦略の提案をしています」という方たちが週末にスタートアップに対して戦略のアドバイスをしているってすごく多分価値があることだと思います。
大きな会社に対してバリューアウトプットしているのと同じようなレベルのものを、スタートアップ5人10人ぐらいの会社がノウハウとして使えるというのはすごく大きなことだと思いますし、そういった方と副業を通じて、相性を見極めるとか、パフォーマンスを見るということで、ゆくゆくはCxOとしてジョインいただくことができたということで、マッチングのところも非常にご評価いただいているということでございます」と成果を語る。