俳優・田口淳之介が1月3日都内で行われた出演映画『僕の中のブラウニー』(監督:相馬雄太/配給:夢何生)の初日舞台あいさつに登壇した。終始、子役の発言を見つめる田口の顔は父親のように優しく包み込むようなまなざしを何度も向けていたのが印象的だった。
取材・撮影:伊藤直樹©ニュースラウンジ
イベントには、NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』 (24/NHK)、『仮面ライダーガヴ』(24/テレビ朝日)など、多くの作品に出演し、この映画では、震災で妹を失い、新しい学校に馴染めずにいる中、【ブラウニー】という妖精の存在を信じ、探し始める主人公・和樹役を演じる平野絢規(11)くん。主人公・和樹の同級生・小田原雅人役の天野塁(11)くんが登壇。
2002年公開の映画『模倣犯』以来、23年ぶりの映画出演となった田口は、「このタイミングで素晴らしい作品に携われたことが嬉しいですし、僕には子供はいないですけど、こんな可愛い子たちがいたら楽しいだろうな。本当にそんなあったかい感じで撮影ができたので、すごく楽しかったです」と感想を。
田口の役どころは、主人公の少年が、数年前の震災で失った妹は、「妹は死んだのではなく(妖精)ブラウニーに連れ去られた」と信じて妹を探し始める。その手助けをする【物語のキーパーソン】となる和泉大輔役を演じているが、「僕も39歳なので、本当に(共演した子供たちの年齢が自分の)子供でもおかしくないような子供たちなので、僕の役どころはアドバイスというか導きを与えるような役どころなので、役の大輔になって、ちゃんと聞かせてあげようと1文字1文字を大事にしようと思いました。ちゃんと心に染みてくれたらよかったかなと思いました」と語った。
相馬監督からは、「役作りのイメージはスナフキン。スナフキンのような落ち着いた感じでお願いします」と言われていたそうで、「まさにその通りに演じてくれたので本当にありがとうございました」と、監督のイメージ通りの演技だったようだ。
この映画のキャスティングは全て相馬監督自身で行ったそうで、田口を選んだ理由として衝撃的な事実が語られた。「田口さんはですね、実を言いますと僕、数年前に、もっと前からちょっと軽度なパニック障害にかかったことがありまして。ご飯が食べられなかったんですね。その時にたまたまDVDで『リーガル・ハイ』を見たんです。田口さんは蘭丸という役でご出演されていて、その蘭丸というキャラクターが、すっごい美味しそうにご飯を食べるんですよ(笑い)。それ僕、ソファーでぼーっと見てたら、すごいなんかこっちまで食欲が湧いてきて。気持ちもすごく晴れやかになってきて。それ以来、田口さんの演技をずっと見ているんですけど、田口さんの演技って人を元気に幸せにする力があるなっていう風に強く思っていて。それ以来、僕はもう商業(映画)を撮る時は絶対に田口さんをキャスティングしたいとずっと思って、田口さんにお願いしました」とベタ惚れでのオファーだったことを明かした。これには田口も「ありがたいですね。それは知らなかったです。いや、嬉しいです」と、喜んだ。
さらに、2025年の抱負を問われた相馬監督が、何本か公開映画や撮影に入る映画の予定があることを語った後、「あともう1個、ちょっと自分が今個人的に強い興味関心があるのが、埼玉県のクルド人問題、クルド人に対する差別問題っていうところが、僕はすごくいろんな思いがあって、これを映画にしたいという気持ちがあるので、ちょっとこの計画、構想を練って今年中に1本作りたいなっていう思いがあって、ぜひその時、田口さんに出ていただきたいです」と、まさかの壇上でのオファーに、田口も一瞬、目を見開くほど驚き、「こんな風にオファーがくるんですね」と、笑顔で快諾した。
田口は、「2024年はものすごく色々な新しいことにチャレンジした年でした。なので、2025年、今までやってきたものをしっかり練り直して、来年40歳になるので、そこに向けてこの1年間を使って、こうやって映画も出演させていただくことできたので、演技の方だったりとか、 映像もそうですし、舞台等もそうですし、色々皆さんの前に立てるように活動を続けていきたいなという風に思っていますので、ぜひ皆さん応援のほどよろしくお願いします」と今年の抱負を。
最後に、田口は、「映画『僕の中のブラウニー』は、とても本当心温まる作品だと思います。見ていただいた方には、この相馬監督、そして三浦先生が込めた思いっていうのが伝わると思います。この映画が流行るのを僕たちはただ信じればいいと思います。なので、皆さんぜひたくさん宣伝していただいて、またぜひこのスクリーンに見に来てほしいなという風に思います。ありがとうございます」と、あいさつした。
この日の舞台あいさつで、自分が話すときや子供たちが話しているとき、たびたび子供たちの方に顔を向けると、まだ役柄に入り込んでいるのか、自然とそうなってしまうのか、父親のような優しい表情というか、温かい包み込むようなまなざしを何度も見せていたのが印象的だった。
映画『僕の中のブラウニー』は、映画『明日の記憶』(06)で第30回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した三浦有為子が脚本を担当。震災で妹を失った一人の小学生の少年とその父親が、どう現実に向き合い、今を生きていくのか…そのお親子の姿を、温かいまなざしで描いた、感動のヒューマンドラマ。障がいやヤングケアラー、学校内のジェンダー問題など、【子供と社会の問題】を題材に、数々の短編映画を制作してきた相馬雄太監督による初の長編映画。
<STORY>
数年前、津波で妹を失った森本和樹(11)。は小学五年生。ラーメン店を経営するシングルファザーの葉介と共に新天地で生活を始めたが、学校や周囲に馴染めないでいる。そんな中、妖精・ブラウニーを知った和樹は、「妹は死んだのではなくブラウニーに連れ去られた」と信じ、探し始める。戸惑う周囲の人々。だが、クラスメイトの和泉東子だけが気にかけ、翻訳家の親族・和泉大輔と共に和樹を手伝う。
ヤングケアラーの聡太の嘘をきっかけに、ブラウニー探しの旅にでる和樹。不登校児・雅人と共に東子・聡太も和樹を追う。旅の果てに彼らがたどりつく非常な現実。だが、そんな子供たちに大輔がくれたある言葉がきっかけで、和樹は変わり始める。その変化は周囲にも影響を与え、そして、小さな奇跡を起こすのだった……。
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