アニメ『ドラえもん』の初代ジャイアン役や『ヤッターマン』のトンズラー役などで親しまれた声優・たてかべ和也さん（享年80）の葬儀・告別式が24日、東京・青山葬儀所で営まれ600人が参列した。
通夜はお酒が好きだったたてかべさんのため日本酒による献杯という形となったが、この日は焼香という形で、たてかべさんの旅立ちを見送ることとなった。
開式前に葬儀委員長を務めるケンユウオフィス代表で人気声優・堀内賢雄が報道陣向けに囲み会見を開き、弔辞を読んだ肝付兼太らから周囲から“長男”と呼ばれていることに、「たてかべさんは結婚されていなくて、30数年来ずっと一緒、酒飲むのも一緒にいました。私としては長男というよりも弟子という認識なんです。“長男”といったらほかにも60人はいると思いますよ」。
たてかべさんについては「豪快で、まあ酒が好きだった。亡くなる4、5日前でも（医者に許可を取って）飲んでて焼酎だったんですが、『まずい。やっぱ日本酒じゃないとだめだな』と言って。そのとき日本酒がなかっただけなんですけど、1つ心残りだったかなって」と、酒豪エピソードとともに心情を。
「いっぱい怒られました。若手とかも。なぜみんなそれでもついていくかというと、あの人の中の優しさみたいなものがあって、その後のフォローとかもあって、あの人の中の優しさみたいなものがあって、その後のフォローもあって、優しい言葉を後で投げかけてくれる。私も1週間くらい落ち込んだことがあったけれど、またすぐ会いたくなる。そういう人でした。まさにジャイアンです」
さらに、たてかべさんからは「亡くなる5日前にマネージャーと3人で話せたんですが、『お前とは俺の人生でいっぱいしゃべったな』って。私にとっては人生の師匠です。『すべてたのむ』とおっしゃってたんですが“すべて”が何なのかは僕には分かりませんが…」と、“何か”を託されたことも話し「“恩の順送り”という言葉が好きでした。必ず恩を返しますと言ったときに、『そういうのは後輩に贈るんだ。恩は次の人に送っていくんだ。それが次の人につながっていく』と言っていました」と、思い出を披露していた。
その後、開式となり、昨夜と同じく弔辞に立った55年来の親友である肝付は、「きのうの通夜まではまだ側にいるんだという気持ちで余裕がありました。でも一夜明けて本当にお別れなんだと思うと、本当に悲しいです。通夜でも言いましたが、55年友だちでいてくれてありがとうございました。僕の自慢の親友です。親友としてお礼が言いたいのは、かべさんの自慢の“息子”堀内賢雄ご夫妻。それと、ケンユウオフィスのすべてのみなさん。本当にありがとう。かべさんは喜んでいます。そのように感じました」と切り出す。
「きのうの通夜でかべさんのチルドレンたちがうまいことを言っていました。『酒と女は2合まで』これ今度どっかで使わせてもらいます（場内が沸き返る）。こんなことを言って明るいことをしなけりゃつらすぎます」と、心情を話し、「『ドラえもん』の26年は本当に楽しかったです。ありがとうございました。何年か前、僕の尊敬する千葉耕市さんという先輩がいました。かべさんにもご縁がある人です。千葉さんがある日、死の境を彷徨っていたらしいです。そのときに後ろから『耕市！耕市！』というお母さんの声が聞こえたらしいんです。いままさに、三途の川を渡ろうとしたときに、呼ばれて元に戻ったという話を聞きました。僕もちょっと呼んでみたいです。ダメかもしれませんが大きな声で呼びます。ジャイア～ン！！ありがとうございました」。
焼香を終えた後、声優・山寺宏一が報道陣の囲み会見に応じた。山寺は2008年にアニメ『ヤッターマン』（日本テレビ系）で、たてかべさんと共演しているが、その縁はデビュー当日からだったそうで、「30年以上前にデビューしたその日だったと思うんですが、僕のことは新人で何も知らないはずなのに、『お前いいな！』と紹介してくださった。目をかけて頂いた。数年後、後輩を『こいつどうだ？いいだろ！』と紹介されてて」と、思い出を語る。
ほかにも山寺は、「本当にこの仕事はすばらしいなと思いました。たてかべさんは人を育てるという意味において素晴らしい人だと思っています。本当に人が好きなんだな。この仕事が、業界が大好きなんだなというのをたてかべさんから感じていました。この仕事をしていられるのもたてかべさんのおかげです」と、途中何度も涙ぐみながら故人を偲んでいた。
式は滞りなく終わり、最後にあいさつに立った堀内は、「心から、心からありがとうございます。肝付さんが『ジャイアン！』と呼びかけて戻ってくるなら、僕は…かべさん！！！かべさん！！！！」と、涙声思いの丈を遺影の方を向いて絶叫し、「日本一の私の師匠でした。みなさんどうもありがとうございました」と、頭を下げた。
そして出棺となり、白い鳩を模した風船を飛ばしながら、参列者から「たてかべさん！」「ジャイアン！」「ありがとう！！」などの温かい声がかけられるなか、たてかべさんは旅立っていった。
