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押井守監督「友人というのがいたためしがない」…想像した若者の不安とは?

押井守監督「友人というのがいたためしがない」…想像した若者の不安とは?
押井守監督が思う若者とは?

 『機動警察パトレイバー』やアニメ『うる星やつら』などを手がけ人気の押井守監督(63)が11日、東京・下北沢のヴィレッジヴァンガード下北沢店で書籍『友だちはいらない。』(東京ニュース通信社)発売記念イベントを前に報道陣の取材に応えた。

 鬼才と呼ばれる押井監督が、友だちというものへの考え方を自身の体験などを通じて、披露している著書。長年の仕事仲間で言いたいことを言い合える映画ライター・渡辺麻紀氏のインタビューという形式でつづられている。新しい学校や、職場などで“ぼっち”といった人間関係に悩んでいる人にオススメの仕上がりとなっている。

 本を出すきっかけについて、誰かから要望がとくにあったというわけではないそうで、「麻紀さんがガーガー言わなかったら出なかった」と、渡辺氏の勧めがあったからなのだとか。

押井守監督「友人というのがいたためしがない」…想像した若者の不安とは?
押井守監督

 『友だち』というものに対しての押井監督のイメージとしては、「いる、いない以前に、いかがわしいと思う。友だちという言葉で何を語りたいのか、何を求めているのかと思うという動機の部分からしてすでにいかがわしいと思う。家族とか恋人とかあからさまに、存在しているんですよ。じゃあ友人ってなんなんだとなったときに、そのへんから話が始まった」という。

 インタビューの際に感じたことはないか尋ねると、「昔、子供のときは友だちいたなと。でも、高校生くらいから顔が思い浮かばないというのに気づいた。たぶん、こうやって聞かれなければこういう本は思いつかなかったと思う。友だちということに対して普段何か考えてたかというと、何も考えてないんで。なぜ考えてないかといえば、(友だちが)いないから。そういうことなんですよ。友だちっていうのは『いるものだ』とか『必要なものだ』というところから話を始めちゃうとそっから先何もいかない。考えてみると、僕は40年か50年か分からないけど、友人というのがいたためしがないと。(書籍では)真面目に検討してみましたけど、検討した結果、やはりいらないとなった」と、結論も披露した。

押井守監督「友人というのがいたためしがない」…想像した若者の不安とは?
アイドルのサイン会かのごときサービスも見せる押井監督

 書籍の中で、友情とSNSの関係についても論じているが、当の押井監督はTwitterもLINEもやっていない。その理由は、「やる必要もない、意味もない。知らない人と言葉のやりとりをしたいとか思わない。仕事上でも別に不自由していない。もしかしたら、僕は不自由は感じてないけど、周りは迷惑をしているかもしれないけど(苦笑)。僕のアドレスを知っている人間は5人くらいしかいないかも。メールも1日3通も来ないし。知らない誰かに何かを語るのは仕事だけで十分だと。いま風に言うと、発信する動機がない」。

 さらに、押井監督は「なきゃないで済んじゃうと思う。ネットなんていつ不通になってもおかしくない。震災のときにはほとんど誰とも連絡が取れなくなったけど、みんなそのときに携帯が使えなくなっても公衆電話を探してなんとかした。ああいう事態が割と簡単に起こる。ネットだって電気があってのものだから、変電所に何かあれば使えなくなる。脆弱なものを根拠にしたくないというのが基本的にあります。GPSとかだって一番必要なときに使えないと思う」と、展開する。

 「誰かとつながっていたいという欲求自体がよく分からない」と言い切る押井監督。それでも、「想像はできるんだけど…。たぶん、不安なんだろうなって」と、想像を巡らした結果で理解しているそうで、「根拠がないところでいくら不安を感じてても何の解決にもならないし、むしろなくて当たり前だと考えた方が楽ですね」と、本著に通じることを話す。

 現在公開中の映画『THE NEXT GENERATION ―パトレイバー― 首都決戦』の話題へ。テロを描いている本作では、若者が感じているであろう不安という部分が押井監督にとってはテロを不安に感じているというところから始まっているようで、「どういうところから、テロが出てくるのか?テロリストを出すとしたらどういう人間なんだと。自分が考えていること、信じていることからはできない。だから映画でも描いていますが『よく分からない』『理解できないもの』自分の中の何かが壊れる、人間が壊れる瞬間という怖さが、若い人にはあるんじゃないかなと思う。逆に60(歳)を過ぎちゃうと、癒やし難く壊れない自分しかいない。そうなったら楽なのになと思っている。若い人があるとき壊れるのは根拠があるような気がして。小説を書いたり、映画を撮る人間には考察に値すると思いますね。作品ではそれを描いていると思います」と、込めている思いを。

 押井監督作品では、テクノロジーが描かれることも多く、未来にこんなことが起こるのではないかという“予言”めいたものもあり、それが本当に現代で起こったりすることでも話題となる。「技術というものへの興味はずっとある。私の場合は、軍事方面からで。最近は軍事ベースと民間ベースとの差がほとんどなくなってきた。ドローンなんていうのは出てきた時に僕が真っ先に思ったのは、これはテロの有効な手段になると思った。『パトレイバー』の現場でも撮影の最初から使ってた。技術にかんする興味ってそういうことなんです。日常の延長とか、好奇心から出発させるものなので、大上段に構えて考えるものじゃない。具体的に考える興味が全体につながっていく」と、発想法とともにコメント。

 そんな、さまざまな思索を約20分の会見の間に語った押井監督だが、会見終盤に友だちというものへの自身の考えについて、「たぶん、世の中の9割は賛同しないと思う。いやもっとかな?」とも話していた。

 書籍『友だちはいらない。』は833円(税別)で好評発売中!

押井守監督「友人というのがいたためしがない」…想像した若者の不安とは?
 
押井守監督「友人というのがいたためしがない」…想像した若者の不安とは?
集まったファンとサインも
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