歌舞伎俳優・中村翫雀(かんじゃく、55)が四代目・中村鴈治郎(がんじろう)を襲名するにあたり14日、都内ホテルで記者会見を開いた。
翫雀は、父は坂田藤十郎(三代目・中村鴈治郎)、母は女優・扇千景(80)として知られ、祖父の二代目・鴈治郎が急病で休演した際は『曾根崎心中』の徳兵衛の代役などを務め話題となり、その後、海外公演も数多く体験するなどしている。2015年1月より大阪松竹座を手始めに、「中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露」を、東・西各地で行う予定となる。
上方歌舞伎の名跡となる鴈治郎となることへ翫雀は、「成駒屋にとっては鴈治郎は大事な名前です。鴈治郎という名前は憧れでしたし、好きな名前でした。鴈治郎という名前はこれだけは誰にも譲りたくないというような気持ちでした」と、喜びもひとしお。
父が三代目・鴈治郎から藤十郎を襲名した際にも、この襲名話が出ていたそうだが、「近くすることになると、鴈治郎と藤十郎がつながっていくととられるということに気持ちの上で抵抗があった。それに、(当時)私自身の未熟さもありまして、機が熟すのを待つというのもありました。今回、こうして、鴈治郎を継ぐという状況になったんだと思いました」と、裏話を明かしつつ、「(父が)藤十郎になってくれたお陰で鴈治郎を継げると」と、しみじみ。
鴈治郎の襲名披露が大阪からのスタートとなることへは、「鴈治郎という名前の襲名はやはり大阪でしょう」といい、「大阪の居を引っ越しまして、一度大阪に税金を払おうと思いまして」と、決意を明かし、「大阪に根付く役者に、『鴈治郎はん』と言われるようになりたいと思っています」と、思いを。
それだけに、大阪には親しみを感じているそうで、「ハッキリ言って、大阪の方が温かい。面白かったら笑うし、つまらなかったら、『つまらん』て言うてくれる。声をかけられるのも大阪のおばちゃんが多くて」と、柔和な笑みを見せた。
目標とするところは祖父の二代目・鴈治郎だそうで、どこが良かったのかと問われると、「芝居をしているのかしていないのかわからないですけど、役になってる。映画に出演した際も、孫とかくれんぼしてて、自分が鬼になったら、愛人に会いに行くというシーンがあるんですが、後ろ姿を見ているだけで愛人のところに行こうとするのが分かるという、リアルであるような芸というか、そういう役者は素敵だと思います。だから、何があっても、役になり切ってセリフが出てくる人だったと思いますね」と、口にした。
この襲名に、扇からはとくに何もなかったそうだが、藤十郎はわざわざ、翫雀の自宅まで来たそうで、「おめでとうと言ってくれました」と言うと、続けて、「父と私の間では、鴈治郎という名前に考えの違いがあるんじゃなかと思っております。私が鴈治郎になることは喜んでくれていると思います。山城屋と成駒屋が両方存在しているということをいい意味で認識してもらえれたらと思いますし、お互いが役をやっていけたらいいなと思っております」と抱負を口にした。
ちなみに、この鴈治郎襲名を待ち望んでいた人物がほかにもいたそうで、「鴈治郎という名前が10年外に出てないというのは、もう少し早くという気持ちはありました。友達にもいつまで待たせんのと言われました」と話し、一泊置くと、「それは藤山直美です」と、自ら明かし、報道陣の笑いを誘う一幕もあった。
■「中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露」詳細
○平成二十七年一月大阪
大阪松竹座『壽初春大歌舞伎』
○二月大阪
大阪松竹座『二月大歌舞伎』
○四月東京
歌舞伎座『四月大歌舞伎』
○六月九州
博多座『博多座六月大歌舞伎』
○十二月京都
南座『當る申歳 吉例 顔見世興行 東西合同大歌舞伎』