俳優の中村蒼(22)が4日、都内で映画『東京難民』(監督:佐々部清/配給:ファントム・フィルム)一般完成披露試写会の舞台挨拶に登場した。出席者は大塚千弘(27)、青柳翔(28)、山本美月(22)、中尾明慶(25)、井上順(66)、佐々部清監督(56)、歌手の高橋優(30)。
実家から仕送りをもらい、東京の大学に通う一人暮らしの大学生・時枝修(中村蒼)。彼は父親が借金のため蒸発したことをきっかけに、なすすべなくホームレスになってしまう。学籍も、友人も、家も、金も、携帯も失った彼が見た“難民”の世界は……
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現代の若者の貧困を正面からとらえ徐々に注目を集める同作に、会場には時枝と同世代の大勢の人々が集まった。最初に高橋による主題歌『旅人』がサプライズで披露。バンドを従えステージに登場した高橋は「生きていくって痛いんだな、苦しいんだな。でも誰かと『痛かったね』『苦しいよね』と話せたら、その瞬間につらい思いが安らいだり、助けになって力になる。暗闇の中に指す光のことを考えながら作りました」と話し『旅人』を熱唱した。
主演の中村は「完成した作品をみて、どうしても“あの時もっとこうしておけばよかったな”と思うことはあるんですけど、当時の僕でしかできなかったことをやったし、120%の力でお芝居をした自信は持っているので、今日はがんばりたいです」と真剣なまなざしで語った。
主人公・時枝がおちいる境遇に「想像できなかったですけど、今まで当たり前と思ってたことが全然当たり前じゃないと思った。修と僕は同い年ぐらい。家や携帯とか無くなっても、果敢に生きて、逃げないで正面からぶつかっていく精神力の強さが素晴らしいな。もし僕がそうなったら修のように生きていきたいです」と語った。
中村と本格的なラブシーンに挑んだ大塚は「ドキドキしながら撮影にのぞみましたね。前日に監督から『大丈夫だから』と電話をくださったりして、(役の)茜のつもりで楽しんで、じゃないですけど、大切なシーンなので大切に演じました。けど、緊張しましたよね」とにっこり。逆に、中村は「(緊張)しましたよね。でも僕には監督からの電話が無かったので寂しいです」と笑いを誘った。
時枝が勤めることになるホストクラブの常連客を演じた山本は「監督は初めてお会いした時は、怖い人なのかなと思ったんですけど、現場では全然そんなことなくて。セリフを噛んだりすると監督がイエローカードを1枚ずつ出すんですよ。いつかレッドカードを出されたらどうしようと思ってました」と笑顔で語った。
去年3月に女優の仲里依紗と結婚した中尾。「楽しい現場で“ザ・映画”という現場。でも、今日も雪が降ってますけど、大宮のロケで雪で1日帰れなかったことも。監督はきっと天候に恵まれない人なんだな」と話すと、佐々部監督は仲が10月に出産したことに「撮影は去年の1月にやってたんですけど、子供が生まれたのが10月。そう考えると、あの大変な撮影中に……」と場内を爆笑させた。
また、主題歌を披露した高橋は「僕はすごく映画が大好きなんですけど、佐々部監督の映画は(デビュー作の)『陽はまた昇る』から全部ずっと拝見させていただいてます。(自分に)同じタイトルの曲があるのは、自分の中であの映画で大事なシーンが沢山あるし、励ましてくれるものがいっぱいある」とコメント。佐々部監督も「素敵な楽曲を提供してくれて感謝です」と語った。
最後に中村は「どうしても良い事ことは“先”にあると思ってるんですよね。僕もそう思ってたんです。でもこの作品をやって、前向きとか後ろ向きだけじゃなく、横にも右にも左にも、上も下も360度見回せば身近な幸せっていっぱいある。当たり前のことを幸せに思えれば、自然と道は切り開けていけるんじゃないかな。本当に今日はありがとうございました」と観客に呼びかけた。
『東京難民』は2月、ロードショー。