俳優・山田孝之（29）、ピエール瀧（46）、リリー・フランキー（49）、女優・池脇千鶴（31）が21日、都内劇場で映画『凶悪』（監督：白石和彌／配給：日活）初日舞台あいさつに白石監督とともに登壇した。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴き、真犯人逮捕への道筋をつけたノンフィクション作品の映画化。死刑判決を受けながら自らの余罪を告発する須藤（ピエール）が、雑誌記者の藤井（山田）へ“先生”と呼ばれるすべての事件の首謀者・木村（リリー）の存在を伝えることから物語が始まり、人がどこまで凶悪になれるのかを暴き出す…。モントリオール世界映画祭への正式出品も決まるなど、日本映画界に一石を投じそうな様相も呈している。
まずは、上映後に白石監督から、「本当にこういうふうな形でできていいなと思っていますし、実際の事件だからハンパな気持ちでできないなと思っていました。自分が凶悪にならないと作れないと思って。スタッフ・キャストに無理を言いながら作りました」と、本作に対しての思いを。
そんな思いの中渡された台本を読んで山田は「読み終わってすぐにやりたいと思いましたね」と、即答だったそうで、「藤井の気持ちの変化があるのを見て、これはやりがいがあるのでやりたいなと思いました」と、出演を決めた理由を明かすことに。
死刑囚を演じたピエールは、原作者で現在『週刊新潮』の副部長を務める宮本太一氏からのメッセージで、「全身に悪のオーラをみなぎらせた、実物の死刑囚よりはるかに凶暴な人物になっていました」と、評されるほどの熱演を見せたが、「間接的に関係を持つ遺族の方も入るというのに関係を持つのは正直嫌でした。でも、監督はすごい決意を持っているし、それでやるはめになりました」と、裏腹な思いを持っていたのだとか。
リリーも、「僕と瀧にとなった時点で、シリアスな犯人像じゃないんだろうなというのを2人でぶっこでんみたんです。そうしたらいつもの俺と瀧みたいな感じだったな」と役作りについて振り返る。
どこのシーンがキツかったかについては、リリーが「この映画は楽しいシーンがないんです」とぶっちゃけると、観客らもしみじみうなずくことも。ピエールは、「濡れ場をやっているところがあるんですけど、横に子供を置いておくということをしていて、カットで割ればいいのにワンカットで撮ってて、国が違えば訴えられますよと思いました」と、エピソードを話すと、白石監督はこれに、「一応ことが見えないように気をつけました。私も父親なので」と、映像的に工夫しているものになっているという。
さらに藤井の妻を演じた池脇もその話題に乗り、「私は2日間しか撮影してなくて、おばあちゃんと対峙しているかとかのシーンだったので息が詰まりました。しんどかった。そんな中でも、山田くんは楽しそうでした」と、言い出す。そのシーンは取材活動で極限まで疲弊した藤井が捕まり警察署内で妻と面会するというものだったそうで、「あなた（取材活動が）楽しかったんでしょ」と指摘され、感情をむき出しにやりとりするというもの。
山田は「面会のシーンがすっごく楽しかったですね。映画っていいな！役者で良かった！芝居ってこんな楽しいんだ！って1シーン1シーン終わるごとに、にやけてました」と役者冥利に尽きるものだったといい、「僕が言ったら（池脇が）ふわ～って顔してくれて、言いがいがあるという感じで」というと、池脇も「イジメられてたみたいな」と、振り返っていた。
ほかにも、宮本氏から山田へ殺気迫るものがあったと絶賛のメッセージが寄せられると、「今泣きそうです…嘘です」と、山田ならではのおちゃめさを見せつつ、「良くも悪くも比較されることがあるますから、原作者の人も楽しんでもらえてよかったと思います」と、胸をなでおろしているようだった。
最後に、白石監督から「本当に今こういう映画がなかなか作りづらくなっている。こういう映画が本当にヒットしてくれればいろんな作品が作りやすくなると思います。『凶悪』面白かったと思う人は応援をよろしくお願いします」と、メッセージを寄せていた本作は21日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー！
