
大林宣彦監督(75)、評論家・滝本誠氏(64)、細越麟太郎氏が14日、都内で映画『ヒッチコック』(監督:サーシャ・カヴァシ/配給:20世紀フォックス)公開記念イベントに登場した。
『鳥』や『ダイヤルMを廻せ!』などの名作を世に送り出し“サスペンスの神”とうたわれた男アルフレッド・ヒッチコック監督と、その彼を支えた妻アルマ・レヴィルによる映画『サイコ』成功に至るまでの知られざる物語。映画『サイコ』という作品は『羊たちの沈黙』のモチーフとなったエド・ゲインが描かれた作品として、ヒットを飛ばした作品として知られる。このたび3月15日を“サイコ(315)の日”と制定されることが決定し、その前夜祭と銘打ったものとなった。
大林監督が部類のヒッチコック好きなことからゲストとして招待され、なぜか話の導入部は『AKB48』の2月20日発売の『So long!』MVを撮影したことから入り、「『サイコ』を撮ったのと同じ事なんです。大監督のヒッチコックがテレビのスタッフとテレビ的に作ってやろうと言ったのが『サイコ』なのね。俗悪なものを大芸術家で撮ったらどうなるかだった。それと同じで、AKBで俺が撮ったらどうなるか。だまし絵のあぶり出しが、ヒッチコックの演出だったから、俺も想像力で見るものにした」と話すと、観客からも笑い声が。

糟糠の妻であるアルマ夫人について3人のなかで唯一、来日した生のアルマ夫人と面識があるという細越氏は、「影武者で主役がヒッチコックですから。パーティーでも、後ろの方にいらっしゃるような感じでした」と、感慨深げに語ると「自分が出たらヒッチコックイメージが壊れると思っていた人ですよ」と、大林監督もうなずく。
映画『サイコ』好調な裏には当時の映画では珍しいことをしていたそうで、大林監督は「この映画は途中から観ないでくださいという触れ込みだった。当時は途中から観るのが当たり前の時代だった」「大スクリーンにトイレが出てきた史上初の映画。当時は食事のシーンすらも排泄の逆だからと禁止されていたくらい厳しかった」と、ヒットの要因などを分析しつつ、「こんな映画がヒットするようじゃといわれた。(ヒッチコック作の)『めまい』で終わりだと」と、後に評価されたヒッチコックの実像などを交え語った。

さらに、ヒッチコックを演じたアンソニー・ホプキンスにも言及した大林監督は、「ヒッチコックと似てないけどね」とチクリとやりつつも、「ヒッチコックのコンプレックスとかの内面を見せてた」と、絶賛する一幕も。
最後に「こんなエレガンスな3人があつまって下品な話をしています」とおどけた大林監督だったが、「ヒッチコックが生涯一番撮りたかった『メアリー・ローズ』という映画があるんです。若い美男美女が恋愛の極致のときにある島に行きます。ある日女がいなくなり、男はしょんぼりと帰ってきて老人になる。死ぬ前にもう一度と思って島に行くと、18歳のブロンドのままの彼女が蘇ってきて、彼女が言うんです。『たとえあなたがハゲでデブになっても私は一生あなたに恋します』って。実はそういう映画を作りたくて『サイコ』のようなスキャンダラスな映画を作っているという虚実のロマンチストを支えたアルマさんの映画なんです」と、しっかりPRしていた。
また、降壇時にも、足を止め、「ヒッチコックを愛してくれる若い人が増えるだけで映画は不滅だと思っています。ありがとう!」と、熱い胸の内を見せていた。
映画は4月5日からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!





