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大竹しのぶ勘三郎さんへ涙の弔辞…「哲さん…大好きですよ」

大竹しのぶ勘三郎さんへ涙の弔辞…「哲さん…大好きですよ」
勘三郎さんへの思いを弔辞で読み上げた大竹しのぶ

 歌舞伎俳優・中村勘三郎さん(享年57)の本葬が27日、東京・築地本願寺で営まれ、女優・大竹しのぶ(55)が4人目として弔辞を読み上げた。

 ■大竹しのぶ弔辞
 哲明さん。あなたがいなくなってから、3週間と少しが経ちました。私たちはまだその事実を受け入れることができず、ただただ、途方に暮れた日々を過ごしています。

 (遺骨の方を向き)そんな小さな白い箱を蹴破って、「冗談じゃないよ!まったく」。そんなことを言いながら、あの世界一チャーミングな笑顔で、私たちの前に現れてくれる。その方がずっとずっと現実味があるのです。

 暑い暑い7月の終わり。私は手術後、2日目のあなたを訪ねました。私に見せるためと、痛み止めを打ち、「効いた?効いた?」とせっかちなあなたらしく、看護師さんを困らせながらICUの廊下を歩いてくれました。たくさんの管をつけ、点滴を引きずりながら。ゆっくり、ゆっくり、けれど確かな足取りで歩くあなたに、まるで花道を歩いているあなたに向けるように、大きく熱い拍手を送りましたね。

 ほめられることが大好きなあなたは、嬉しそうに、ちょっと恥ずかしそうに笑い「大竹しのぶに拍手もらっちゃったよ」と、もちろん、支えてくれた看護師さんへの感謝も忘れませんでした。

 それから4ヶ月。本当につらい、苦しい、闘病生活が始まりました。あんなにたくさんの人を幸せにして、あんなにたくさんの人に愛されてきたあなたが、なぜ、こんな目に遭わなければならないのか、どうしても理解できない、苦しい4ヶ月でした。

 それでもあなたは、まじめに、一生懸命病気と闘ってくれました。数値的にも、状況的にも絶望だと言われたときも、あなたは何度も何度も奇跡を起こし、私達に光を与えてくれました。大きな厚い壁が突然下ろされても、あなたは諦めることなく、強い肉体と精神力で自らその壁を押し上げ、次の光へ導いてくれていました。

 私達だけでなく、先生方も一緒でした。「こんなすごい人はいません。僕達が教えられます。だから、この人のために何とかしたいと思うのです。本当になんとかしたいと思うのです」と、涙を浮かべておっしゃったことがありました。

 病室でのあなたは、あいかわらず皆に愛されていました。思うように体が動かせなくても、表情と手首だけで見得を切り、看護師さんから拍手をもらっていました。意識が少しクリアでないときも、芝居の話をすると大きく目を開き、私達の話を聞いてくれました。そして、話したいことがたくさんあると。

 肺があまりうまく動かないとき、『哲さん、芝居のときのように大きく息を吸ってやってみて』というと、大きくゆっくり深呼吸ができましたね。

 これは先生の言葉です。「やんごとなき心臓を持ち、やんごとなき精神力を持ち、恐るべし中村勘三郎」。でも、それはあなたが生きていたいと思ったからですよね。生きて行かなければならない人だからですよね。

 あなたと、なぜ、いまこの別れをしなければならないのか、当分私たちはこの答えを見つけることができないと思います。天日坊を観た時、「あいつら良かったでしょう?まだまだだけど、俺のスピリッツは受け継いでくれたかな」と言っていた6月。

 そう、あなたの魂を受け継いだ勘九郎がいます。七之助がいます。七緒八(なおや)くんがいます。その答えを、彼らが出してくれる日まで私たちは頑張っていきます。

 前よりも、もっともっと大きな力を持った哲明さん。この3人を、そして(前田)愛ちゃんを見守ってください。そして何よりも、あなたの愛してやまない好江ちゃんにも力を貸してあげてください。

 哲さん…、大好きですよ。(涙声になり)いまも、これからも。ありがとう。またね。

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