第77回毎日映画コンクール表彰式行われる 日本映画大賞は『せかいのおきく』

第78回毎日映画コンクール表彰式行われる 日本映画大賞は『せかいのおきく』

第77回毎日映画コンクール表彰式行われる 日本映画大賞は『せかいのおきく』

 第78回毎日映画コンクールの表彰式が、2月14日にめぐろパーシモンホール(東京都目黒区八雲)で行われ、作品部門、俳優部門、スタッフ部門、ドキュメンタリー部門、アニメーション部門の5部門とTSUTAYA DISCAS映画ファン賞、田中絹代賞、特別賞の各受賞者が表彰された。

 写真は『キリエのうた』(岩井俊二監督)で俳優部門「助演賞(女優)」を受賞した広瀬すずが受賞の喜びを語る

 「毎日映画コンクールは、1946年(昭和21年)に毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社によって創設された歴史を持つ映画祭。その歴史や伝統と、質の高い選考が高い評価を得ている。多くの新人作品の発掘にも尽力するほか、映画制作に欠くことのできない専門職アーティストであるスタッフへの表彰も行ってきている。

 『キリエのうた』(岩井俊二監督)で俳優部門の「助演賞(女優)」を受賞した広瀬すずは、「この度はこのようなすてきな賞を頂きうれしく思います。『キリエのうた』は、岩井(俊二)監督と主演のアイナ・ジ・エンドさんが共鳴し合いながら作った作品だと思っています。だから私のできることはアイナ・ジ・エンドさんを支えることしかできないなと思っていたのですけど、その中で女優助演賞(の受賞は)、すごく自分を支える賞になりました。とてもうれしいです。ありがとうございました」とあいさつ。

 「(岩井)監督は、監督もやるし、カメラマンもやるし、照明もやるし。手作り感満載の中で岩井組ならではの特有な空気感があるのですけど、その中は本当に自由で、アイナさんと自由に動いてしゃべって笑っているのを監督が切り取ってくれてくださる現場だった」と楽しかった撮影の当時を振り返った。

 アニメーション部門「大藤信郎賞」はスタジオジブリ作品『君たちはどう生きるか』の宮﨑駿監督が受賞した。特別賞にはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが受賞。宮﨑監督の代理と自らの受賞を兼ねて鈴木プロデューサーが登壇した。

 「この大藤信郎賞は、長い歴史・伝統がある賞で、ジブリに宮﨑監督以外にもう一人、高畑勲監督が、亡くなってしまったのですけど、これを欲しがっていたのですけど。残念なことに『風立ちぬ』の時に取れなくて悔しいと言っていたことを思い出します。個人的には、『君たちはどう生きるか』が賞に選ばれて本当にうれしく思っています。なにしろスポーツニッポンっていうのは、若いときに受けたことがあって落っこちたのです。どうもありがとうございました」と感謝の気持ちを言葉にした。

 自らが受賞した「特別賞」の受賞については、「スタジオジブリという会社は、かって徳間書店の社長だった徳間康快と言う社長が作ってくれたんですよ。その人がですね、実は出版だけじゃなくて映画にも非常にいろんな映画を作った人で、この特別賞を彼はもらったんです。あの徳間社長がもらった賞を僕ももらうことができて嬉しいです。ありがとうございます」と話した。

 脚本賞と日本映画大賞を『せかいのおきく』が受賞した。江戸の下肥(しもごえ=ふん尿)にかかわる物語を通してサステナブルな江戸時代の高度な循環型社会までも描いた作品。阪本順治監督は、「普段からできるだけ低いところから世の中を見て脚本考えたり映画を作ったりしようと心がけていますが、今回はあの汚いところから世の中を見てやろうと、きれいな言い方をしましたけど。クソまみれの映画を作るっていうこともみんなで覚悟して多少業界に喧嘩を売ったようなところもあります。くそ真面目に、やけクソで、何クソと思って、下手くそですが書かせていただきました。現代の映画ではどうしてもスマホが出てきたりパソコンの画面を撮ったりしなきゃいけないんですけど携帯電話やパソコンもない時代を書くのは本当にえ楽しかったです。ありがとうございました」と受賞の喜びを語った。

第77回毎日映画コンクール表彰式行われる 日本映画大賞は『せかいのおきく』
第77回毎日映画コンクール表彰式

 『第78回毎日映画コンクール』の受賞は以下の通り。
 日本映画大賞:『せかいのおきく』(阪本順治監督)
 日本映画優秀賞:『ほかげ』(塚本晋也監督)
 外国映画ベストワン賞:『TAR/ター』(トッド・フィールド監督)
 男優主演賞:鈴木亮平『エゴイスト』
 女優主演賞:杉咲花『市子』
 男優助演賞:宮沢氷魚『エゴイスト』
 女優助演賞:広瀬すず『キリエのうた』
 スポニチグランプリ新人賞(男性):アフロ『さよなら ほやマン』
 スポニチグランプリ新人賞(女性):サリngROCK『BAD LANDS バッド・ランズ』
 監督賞:石井裕也『月』
 脚本賞:阪本順治『せかいのおきく』
 撮影賞:鎌刈洋一『月』
 美術賞:上條安里『ゴジラ-1.0』
 音楽賞:ジム・オルーク『658km、陽子の旅』
 録音賞:志満順一『せかいのおきく』
 アニメーション映画賞:『アリスとテレスのまぼろし工場』(岡田麿里監督)
 大藤信郎賞:『君たちはどう生きるか』(宮崎駿監督※崎=たつざき)
 ドキュメンタリー映画賞:『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』(寺田和弘監督)
 TSUTAYA DISCAS 映画ファン賞・日本映画部門:『劇場版 美しい彼~eternal~』
 TSUTAYA DISCAS 映画ファン賞・外国映画部門:『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
 田中絹代賞:薬師丸ひろ子
 特別賞:鈴木敏夫(スタジオジブリ プロデューサー)

第77回毎日映画コンクール表彰式行われる 日本映画大賞は『せかいのおきく』
「徳間社長がもらった賞を僕ももらうことができて嬉しい」と話すスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー
第77回毎日映画コンクール表彰式行われる 日本映画大賞は『せかいのおきく』
「この時代を描くのは本当にえ楽しかった」と話す日本映画大賞『せかいのおきく』を受賞した阪本順治監督
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