歌舞伎俳優・中村勘九郎(32)、七之助(31)兄弟が10日、都内で歌舞伎座「十月大歌舞伎」、新橋演舞場「十一月新派特別公演」の合同製作発表に出席した。
祖父・十七世中村勘三郎の二十七回忌、父・十八世中村勘三郎の三回忌の追善興行として行われるもの。「父が祖父の二十七回忌を企画していたのに、まさか僕らがここにいるなんて思ってもみなかった。(父の死で企画が)なくなってしまうこともあるのに、やらせていただいてうれしい。お客さんに楽しんでもらえるように一生懸命やる、それしかありません」(勘九郎)、「2カ月にわたってやらせていただけるなんて…。父が生前、『兄弟仲良くしろよ。2人がいい役者になれば2倍になる』と口酸っぱくいっていましたが、2人いて本当によかった。祖父も父もどれにしようかと悩むくらい演目があるので、2人は偉大な役者だったんだなと思う。精いっぱいやらせていただきます」(七之助)とそれぞれ意気込んだ。
「十一月新派特別公演」では兄弟ともに新派へ初参加。十七世、十八世とも出演していた「鶴八鶴次郎」の主人公、ヒロインを勘九郎、七之助が夫婦・恋人役として演じるが、舞台に掲げられた2人のポスターを見て勘九郎は「この写真を見たら父は喜んでくれると思いますよ。自分たちの力でできるレベルではありませんが、みなさんのお力添えをいただいてがんばりたい。(2人で)倍返し。”半沢直樹”の言葉、子どものときから知ってました。『倍返しするんだよって』、もしかして、父の口癖をとったのかもしれません」と茶目っ気たっぷり。
女形を務める七之助も「2人でやれることはうれしいが、新派は照れくさい。兄弟に見えないようにしたい。気持ち悪くなっちゃうので。これまでは女性ではなく、女形という生き物と考えて演じるスタンスだったが、これでまた一歩踏み出すチャンス」と意欲満々だ。
互いの存在については、勘九郎が「隣に彼(七之助)がいることによって自分が保てている。とくに直してほしいところもない。父もそうだったが、芝居のことしか考えていないので、芝居がよければいい」といえば、七之助も「長年いろんな相手役をやっているので、あうんの呼吸がある。いまは30(歳)も過ぎているので、ケンカしていても気持ち悪いし、直してほしいところも特にない」と兄弟ならではの信頼関係がある様子。
今作では勘九郎の長男・七緒八くんは出演しないというが、「朝から晩まで立ち回りをしている。いろんなものを見て表現できるようになったのがうれしいのかな?」と父親のまなざし。叔父・七之助も「叔父バカかも。最近は舞台にも出ているし、日に日に役者になっているのがビックリ。親目線になってきている。父もそういう気持ちだったんだなって」とあたたかな笑顔。
自身は未だ独身だが、「30(歳)を過ぎるといわれる。でもいま、(甥の)七緒八と哲之を見て自分は(子ども)いらないかなとも思っていたけど、(子ども)いらないというと怒られるのでがんばります。結活します」と苦笑いしていた。