
「京都・舞鶴港」を舞台に舞鶴市の全面協力を受け、望月龍平シアターカンパニーが日本戦史の一端を描くRYUHEI MOCHIZUKI THEATRE COMPANY最新作『音楽劇「君よ生きて」』の公開ゲネプロが19日、東京・新宿区サンモールスタジオで行われた。
仕事も半年で辞め、恋人からも振られ、自転車であてのない旅をするトモキは、小樽から着いたフェリーで夜の舞鶴港に降り立った。そこへ、亡くなったはずの「シベリア抑留者」である曾祖父・善吉が現れ、トモキをシベリアへ時空を越えた旅へと誘われる。時は第二次大戦後、シベリアのラーゲリ(収容所)でトモキは善吉として、生きることになり・・・。
楽曲提供には多くのファンを魅了し続けるシンガーソングライターのユウサミイ氏。脚本にはミュージカル『KACHI BUSS』等の脚本・作詞・作曲・まきりか氏。ピアノ、ヴァイオリン、ギターの生演奏に実力派豪華俳優陣を迎え、望月龍平が魂を込めた演出で創り上げる音楽劇だ。
曾祖父・善吉が現れ、トモキをシベリアへ時空を越えた旅へ飛ばすまでは、(おそらく)ゆとり世代といわれるいまどきの若者像を投影させたトモキの言動や周りの登場人物とのやりとりなどはギャグと軽妙なトークで展開し、随所に笑いが起きる現代劇。
ところが、一転、第二次大戦後のシベリアが舞台になってからは、ドキュメンタリーのように、筆舌に尽くしがたい極限状態の「抑留生活」が再現されていく。もちろん重苦しいだけではなく、笑いも含まれるが、すすり泣きが何度も場内に響きわたる。そして、胸深くに染みわたる音楽と歌声、時に物悲しく、時に力強く明るい歌声が流れる。
出演者を通して、当時の「抑留者の方々」の感情が、実体験しているかのようにリアルに伝わり、観客が一緒に泣き、笑い、興奮するシーンが続く。そして、また物語は真鶴港の現代へ。「温室」から抜け出し「過酷な体験」をしたトモキは、「命のバトン」がいつの時代でも、その時代をどんな状況下でも懸命に行きた人々によって繋がれてきたことに気づかされる。

望月龍平シアターカンパニー主宰で演出家にして、NPO法人OOBJ主宰の望月龍平氏は、今回の舞台の発露について、「3年前の東日本大震災というのはすごく大きかったですね。今まで板の上に立って感動する舞台を提供したいというのはあったんですけど、命のあり方、当たり前なことはひとつもないんだということを震災で思い知らされました。ずっと戦争というのは、日本人として引っかかっていたことではあったんですけど、震災が大きな引き金となって、生死の一端を描くような作品をやりたい、やるべきだ」と、思ったという。
戦争というテーマは3年前ぐらいからあったそうだが、その中でも「シベリア抑留」に焦点を当てたのは、1年ほど前だったという。「特攻隊の悲惨さはだんだん認知されてきてはいましたけど、シベリア抑留に関しては、まだまだそんなことがあったのと、わからない人たちが多いと思うんですよね。だからといってこれを風化させてしまうのは危険だなと思いますし、引き揚げ開始70年ということで、抑留されていた方たちや語り部の方たちもだんだん亡くなられてしまう。シベリア抑留や戦史を描くには、いまから動かないと最後のチャンスになってしまうのではないかというところが大きかった」と、述べた。
トモキがタイムスリップしたシベリア抑留シーンは、劇を観覧されたシベリア抑留体験者の木内信夫さん(90)が、「たったこれだけのイスだったのに、当時の状況が全部見えた。私は痛いこと苦しいことで泣いたことはないんです。帝国軍人だとの思いがあって、男は泣かないと。でも、今日は泣かされた。実際、この通りのことを見てるんですよ。亡くなった方は、今やった劇を天国で見ててもうれしいと思います。私も行ったら君たちのことは、後世の人が演ってくれて犬死にじゃないよと、天国で胸張って話してあげたいと思います。自信を持ってやってください。この(舞台の)通りだったから」と、涙ながらに語っているほどリアリティーがある。

舞鶴市の全面支援があり、『舞鶴引き揚げ記念館-引き揚げと舞鶴港-』の展示物などの資料を始め、抑留体験をされた方、舞鶴市を訪れた時に多々見良三市長も含めた有識者の方々の話も含め15人~20人の方に話を伺ったという。
望月氏は、「もっともっとお話を伺えればよかったんですけど、脚本を書いたり、いろいろしていると時間がなくて。この初演で終わらずに、何年も何年も重ねて上演していけるような作品にしてまいりたい。そのためにも、再演をするという段に、いろんな方に時間をかけてお話を伺ったり、文献を深く読み解いたりとブラッシュアップしながら、いろんな人に見ていただきたいなぁ」と、早くも再演への思いが湧いてきているようだ。
いま、望月氏の他の作品に関して、中学校公演とか依頼が増えているそうで、「この話は、子どもたちに見せてもわかりやすく、辛いだけではなく楽しんで頂ける部分も大事にしたかったので、音楽劇にしました。中学校の体育館でも、我々の演出でいうと、道具だけ持って行ってやれるので、劇場という枠にとらわれず、いろいろな場所で演ることで、いろんな人に見て頂ける。できれば3世代で見て頂けるとうれしいと思います。お孫さんと一緒に出かける機会もないでしょうし、同じものを見てどうだったと感想を言い合ってほしい」と、戦争被害、シベリア抑留を風化させないための思いを熱く語った。
全面協力した舞鶴市の多々見良三市長(63)は、「本公演は、引き揚げの街・舞鶴を舞台とし、引き揚げやシベリア抑留をモチーフにした音楽劇だと伺っております。こういった形で引き揚げの史実が継承されますことは有意義なことだと感謝しております。この公演を多くの方がご覧いただき、不幸な時代があったんだ。こういうことを二度としてはいけないんだということが伝わればと思っております。我々の思いが、シベリア抑留者のみなさまの思いが、後世にシッカリ伝わることになれば幸いと思っております」と、あいさつ。
多々見市長は舞台観劇後に、「すでに資料等でたくさん拝見して、資料を読んでるだけでも涙が出てくるぐらい、過去の暗い歴史。それをまさに迫真の演技で演じていただいた中で、これは戦争を知らない世代に戦争の悲惨さがシッカリ伝わる構成になっているなぁと思っています。現代の若者がタイムスリップしてシベリア抑留の世界に入り、さまざまな人間の原点となる感情を経験して、戻ってくることによって変身しているという設定が素晴らしいなぁと。色んなところで上演して、あらためて平和の尊さはありがたいこと。自然にはこないんだ。努力しないといけないんだという思いを若者に持ってほしいなと思っております」と、感想を述べた。
※舞鶴市と引き揚げ、シベリア抑留についての解説は音楽劇「君よ生きて」のキーワード舞鶴港とシベリア抑留!実体験者の木内信夫氏「今日は泣かされた」
【キャスト】青木結矢、伊東えり/岡田静(Wキャスト)、北村毅、小西のりゆき、武田優子、平川めぐみ/水野貴以(Wキャスト)、まきりか、溝渕俊介、武藤寛、ユウサミイ
※平川めぐみはヴァイオリンで全日出演
【スケジュール】3月19日~3月24日まで、全10回公演
【時間】2時間30分(10分休憩)
【会場】サンモールスタジオ(新宿御苑前駅2番出口から徒歩2分)
http://www.sun-mallstudio.com/access.htm
TEL:03-5367-5622
【チケット】(全席自由席・整理番号付)
前売り 5500円
当日券 6000円
※整理番号はチケットご購入順に振らせていただきます
※ステージシート(ステージ上での観劇席)各公演8席のみ(料金同額)
下記URLよりご予約受付中
http://oo-bj.com/reservation/
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