初春新派公演『明治一代女』（演出：斎藤雅文）鏡開きが2日、東京・日本橋三越本店で開かれ女優・水谷八重子（74）、波乃久里子（68）、歌舞伎俳優・市川春猿（43）、俳優・佐藤B作（64）に登場した。
明治20年6月に実際に女の意地とすれ違いが生んだ刃傷沙汰の悲劇の事件を題材にした作家・川口松太郎氏原作の作品で、明治時代に生まれた演劇文化の新派による伝統の公演となる。
まずは、水谷から、「やっと夢がかないました。7回この三越劇場で新派がもっておりますけど、ささやかに、ささやかに劇場のロビーのなかでこれまで鏡割りをやっておりました。どうして、華やかなこの正面の像（『天女（まごころ）像』）の前で、やらせてもらえないのかなと、常々思っておりましたけど、今年、初めてここで、鏡割りができます。これを機に、三越劇場の方に続々とお集まりくださいますようよろしくお願いします」と、あいさつすることとなった。
市川は、「初春の新派の公演は初めてで緊張しておりまして、大先輩方の胸をお借りしたい。私、普段は（歌舞伎俳優として）女形ですので、こんな（男らしい）格好をするのが初めてでございますが、ちょっと面映いやら恥ずかしやらでございます」と、初の男性を演じることに、少々の戸惑いのある気持ちを語ることとなった。
無事、鏡開きを終えた後の囲み会見では、本作の見どころについて「（クライマックスの）殺しでしょうね」と語り始めた水谷。「殺されてしまうB作さんがすごく情熱的なんで、そこのところが、ほかの『一代』と違う気がします」と、胸を張ると、佐藤は「やっと1年始まったかと思うと、新年早々殺されてしまいますからね。実際にあった話が元ですからね、心に忠実に生きようとしてすれ違ってしまう。悲しいお話ですね」と、笑い飛ばすことに。
一方の波乃の役どころについては、「ストーカーであるB作さんに殺されそうになってしまう。相思相愛の仲を裂くというのが見どころ。三角関係の中で、いろいろドロドロしたものがありますが、悪人は出てこない」と、アピールし、市川も「この日本橋界隈の事件ですからね」と、さりげなく本作との縁の深さを語った。
続けて市川は、「女になることには慣れておりまして、男をやることはまったく慣れていないので恥ずかしいですよ」と、実感を話していた。
本作のけいこについては、美しい日本語の使い方が難しいと口をそろえる4人。しかも、全員が全員昨年12月は別々の舞台に出演していたため、その最中の夜にけいこしていたというが、波乃は「それでもけいこ不足ではないですよ」と、自信の程を見せた。
また、元日の過ごし方を問われると、波乃は、「お墓参りをしていました、先祖のお墓を全部周って午後6時までかかりました。そのなかに、弟も入ったから、『私のことだけは考えなさい！』と言っておきました」と、一昨年12月に亡くなった弟の第18代目の故・中村勘三郎さん（享年57）の墓参りをしたことを語っていた。
ほかにも、年玉を誰かにあげたかと問われ、波乃は、「20歳過ぎたらうちは、あげなくて済むんです。でも、それこそ、弟（中村勘三郎さん）とか妹（千代枝）に孫ができたでしょ。その子たちにはあげなくちゃいけないけど、赤ちゃんにはあげなくていいかな」と、甥っ子の子供らへ思いをはせていた。
初春新派公演『明治一代女』は2日から26日まで東京・三越劇場にて上演！
■STORY
柳橋の芸者叶家お梅（波乃）と人気役者の沢村仙枝（市川）は将来を誓い合う仲だった。仙枝は来る正月に三代目・仙之助襲名披露が控え、披露に必要な費用をお梅は手助けしようとする。そこに、仙枝を独り占めされ面白く思わない権勢をほこる秀の家の芸者・秀吉（水谷）によるお梅への嫉妬が絡み、辛らつな言葉を投げかけることに。そこにお梅を慕う箱屋の巳之吉（佐藤）が近づき、結婚する代わりに私財を投げ打って金銭を工面するとお梅に呼びかける。愛と義理に苦しむお梅がそのとき取った行動とは…。
