映画監督の周防正行(56)と女優・草刈民代(47)夫妻が24日、都内で『終の信託』×『草刈民代 最後の“ジゼル”』ブルーレイ&DVD発売記念トークショー&サイン会を行った。
2012年度映画賞各賞を受賞した周防監督の最新作『終の信託』のブルーレイ&DVDが今月19日に発売。また、草刈のクラシックバレエ最後の公演を周防監督が映像化した『草刈民生 最後の“ジゼル”』のブルーレイ&DVDもきょう24日に発売されたことを記念し、2人のトーク&サイン会が開催された。
『終の信託』の原作は、現役弁護士・朔立木による同名小説だが、周防監督が文学作品を映画化したのは初めて。映画化の動機について、周防監督は「この小説は物凄い濃密な空気で、それを映画監督としてスクリーンに創り出し、映画館を支配してしまいたいという憧れがあったので、僕の中に深く食い込んできた。読み終わる前から映画にしようと思っていた」と語った。
周防監督から「本を読んでいる間に、この小説の女医さんが草刈と重なるところが多かった。『これを映画にするから読んでみて』と本を渡した」と、主演女優を依頼された草刈は、人気海外ブランド『ヴィクトリア・ベッカム』のえんじ色のワンピースで登場。主人公の女医・折井綾乃を演じるにあたり、「切ないものを背負っていて、読んでいると自分の中にのしかかって、号泣しちゃったんです。撮影中も泣かなくていいところでこみ上げてきたぐらい(笑)」というほど入れ込んだようで、「この小説の主人公を演じることはただごとではないと思ったけど、監督が私でイメージしているというのであれば、どうにかなるんじゃないかと思った」と、夫の周防監督に全幅の信頼を寄せていた。
劇中では、草刈が不倫関係にあった同僚医師・高井役の浅野忠信とのベッドシーンもあるが、周防監督は「妻がみんなの前で裸になることは気にしない。それよりも、この映画の中でこのシーンをどうやって成立させようかということのほうが圧倒的に大きな問題。自分の妻や愛人が目の前で裸になろうが、多分、映画監督みんなそうだと思う」と、プロの姿勢を見せつける。
草刈も「どうにかしなければいけないという思いのほうが強かったので、私が裸だろうがなんだろうが、どうしたらいい形で映せるか、そのシーンが作れるかのほうが頭の中にあった」と、同調していた。
クライマックスシーンでは、大沢たかお演じる検察官・塚原との40分にもおよぶ厳しい取り調べのシーンを演じており、「踊ることは体力と気力が大事。踊っているときと同じようなテンションで、自分を追い込んでいけた。バレリーナ時代のそういう日々が生きたのでは」と、自身の経験が生きたよう。
2009年1月31日、神奈川県民ホールで収録された『草刈民生 最後の“ジゼル”』について、草刈はそのときに着ていた衣装を見つめつつ、「痩せてたな～って(笑)。よく着れたな～」と苦笑い。自身のクラシックバレエ最後の公演を「最後にジゼルを踊った作品が残るのは、一生の記念になる。丸4年経って、こういう風に踊ってたんだなっていろんなことが蘇ってきます」と振り返った。
そんな草刈を周防監督は、「この人は踊ってたけど、ずっと演じてきたんだなと思った」と称賛。撮影していて、「お墓が画面の前にくることによって、自分が舞台にいるような感覚になった。舞台中継でありながらも、『ジゼル』という作品の中に入っていけたのはラッキーだった」という新たな発見もあったようだ。
ファンへのサイン会を挟み、囲み取材へ。トークショーではお互いを苗字で言い合っていた2人だが、報道陣から「普段の呼び方は？」と聞かれ、「タミちゃん」(周防監督)、「マサさん」(草刈)とおどける。
家庭での力関係については、夫婦ともに「ご覧の通りです」と、第三者の感性に委ねたが、夫婦ゲンカは「しないこともないけど、最近してない。楽しくやっています」(周防監督)、「考えても出てこないほど最近してないですね」(草刈)と、最近していないようで、円満をアピールした。
夫婦円満の秘訣について聞かれ、周防監督は「相手が楽しくしているのを楽しく見守るしかない」、草刈は「嫌だなと思うことはなるべくしないように気をつけています」と、それぞれ返答。
以前、周防監督は「お葬式は質素に」と“終の信託”をしたそうだが、草刈は「映画のプロモーションでされたみたいですけど、よく覚えてないです。私はそこまでのイメージができないので、成り行きに任せてお願いします」と、素っ気ないコメント。改めて周防監督は、「僕が死んだ後、決めてほしいことを一覧表にまとめたい。残された人が困らないように考えなきゃいけない」と、死後のことにまで気を配っていた。
