映画『藁の楯(わらのたて)』（監督:三池崇史／配給:ワーナー・ブラザース映画）トークショーが19日、都内で開かれ身辺警護などを請け負う株式会社ビーテックインターナショナルの凄腕セキュリティ・牧村博一氏が登場した。
作家・木内一裕原作の『藁の楯』を三池監督が映画化。連続殺人犯の清丸国秀（藤原竜也）に孫娘を殺害された日本の財界を牛耳る蜷川隆興は、「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします」と、全国民に10億円の懸賞金をかけた。48時間のタイムリミットで、1200キロという移送距離を銘苅一基（大沢たかお）、白岩篤子（松嶋菜々子）らSPたちが、清丸を殺そうと襲い掛かる日本国民たちから身を挺して守り続けることとなるのだが…。
イベントにはビックコミックスピリッツの4コマ漫画や、日本一多くのハリウッドスターを警護するなど本職の牧村氏がトークすることに。トム・クルーズやジョニー・デップらを警護したこともある牧村氏だが、「いつもは500人でも1000人でも大丈夫なんですけど、本日はいささか緊張気味です。普段ですと、端っこの方にひっそり立っているので」と、慣れないトークショーに表情も硬い。
しかし、暴漢が要人を殺そうとしているという設定で、司会が要人役に飛びかかろうとすると、柔和な表情の牧村氏が一変。カッと目を開き身を要人の前に体を投げ出し、目にも留まらぬ速さで手首を押さえる早技を見せ、場内を沸かせることに。
本作を鑑賞してみての感想は、「警護対象者を見た時に瞬間的に人を守るという部分が描かれていてリアルだったと思います」と、プロからしても納得の演技だったそう。どんなところで、大沢や松嶋の演技にリアリティを感じたのかについて、「目の前にした時に人を近づけない誰も近づけないといいうスイッチに入ったのが分かった」という。
日常生活から「いまやっている70％の力を次の行動を予測しています。普段から自分が身辺警護人だと思って気を使ったりしています」という牧村氏。イベント中も、「きょう帰る動線をどうしようかなとか考えるんです」と考えていたのだとか。
SPとは体を鍛えているイメージが強いが、牧村氏は「無理すると仕事に響きますのでしていないです」と、意外な返答。どちらかというと、メンタル面を鍛えることが多いそうで、「長時間外に立っていたり、全く動きがない場合、10時間外に立ちっぱなしとかになったときに、精神的にくることがあります。食事なんかも24時間以上摂れないときがあり、そういうときは人間て怒りやすくなったり自分思っている以上の状況なんです」と、訴える。
このため、部下の教育も「追い詰めて追い詰めて、そのときにどういう回答をしてくるかなと思って教育しています」としているそう。その辺りから牧村氏の言葉に熱が入り、「自分の体を張らなきゃいけない。命を失うかもしれない。実際に殉職した社員もいます。警護対象者を愛すという気持ちになるようにしています。ご家族、恋人と変わらない人を守っているんだという気持ちです」と、熱弁していた。
ほかにも、SPの裏話については、「知ってちゃいけないことは忘れるようにしています」と、苦笑いでかわした牧村氏だが、一例を挙げてもらうと「ある映画のプロモーションで車を降りて左側に行って行かなければ困るシチュエーションで、逆の方向に道路を渡っていかれてしまって行った先々で守るのが仕事なので関係当局からお叱りを受けました。取る行動の部分で守っていかなければならないというのがあるので」と、相手に行動に振り回されたという思い出を。
また、本作にちなんで、警護対象者に10億円の懸賞金がかけられたらという話になった際は、牧村氏は、「実際に10億円が魅力的なものか分からないくらいですけど、いままでコツコツ続けてきた職業を自分で否定することになると思うので、きれいごとではなくて、そこ（殺人）に行くことはないと思います」と、プロフェッショナルとしての矜持を見せていた。
映画『藁の楯（わらのたて）』は4月26日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー！
