映画『希望の国』(監督:園子温/配給:ビターズ・エンド)初日舞台あいさつが20日、都内で開かれ俳優の夏八木勲(72)、大谷直子(62)、村上淳(39)、神楽坂恵(31)、清水優(27)、梶原ひかり(19)、でんでん(62)、園監督(50)が登壇した。
『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』などメッセージ性の強い作品を打ち出し続ける社会派の園監督最新作。東日本大震災以降の日本で大地震が起こり、原発事故が起こったという設定。酪農家の小野泰彦一家の家は区域から外れたが、道路を1本隔てた鈴木家は強制的に避難させられてしまう。かつての東日本大震災における原発事故時の政府の対応を思い出し、小野泰彦(夏八木)は息子夫婦(村上と神楽坂)を避難させることに。原発の状況が最悪の事態へとむかっていくなか、それでも希望の未来があるのかどうかを問う作品となっている。
午前の早い時間帯のあいさつとなったが、でんでんが、「できれば政治家、東電の方とかに勧めてください」と、目の覚めるようなパンチの効いたあいさつをし場内一同、和んでからスタート。
本作が、『第37回 トロント国際映画祭』で『最優秀アジア映画賞』を受賞したことに園監督は、「僕は一見さんお断り映画と言ってて、日本人のために作った映画なんです。海外の人には不親切だと思っていた」と、切り出す。これは、津波などの描写を省略しているからだそうだが、「海外では意外や意外、僕達以上に3.11にみなさん詳しくて、全然一見さんではなかった。すごく評価がされてこんなに賞までいただけてビックリしました」と、率直な感想を口にすると、夏八木も、「言葉の違いも越えて通じるものは通じるんだと感じました」と、うなずいた。
この反響を受けて、フランス、ドイツ、イギリス、台湾での配給も決定したとアナウンス。園監督も「フランスは日本以上の規模になるらしいですよ」と、原発大国の1つである同国での公開をしみじみと語った。
東日本大震災の被災地で取材したという被災者の生で聞いた話もセリフに散りばめられているという本作だが、大谷から、「みなさんの魂を込めてやっていましたけど肩に力は入っていません。ドキュメンタリー映画のようにこの人達ここに住んでいたというようなお便りもいただいたんです」というエピソードも。
また、17日に交通事故によるけがのため亡くなった若松孝二監督(享年76)に、MCからコメントを求められた園監督は、「次回作は原発の映画だと言っていたんです。東電を題材に…」と、声を落とす。最近は、今月4~13日で開かれた釜山国際映画祭に行く最中、空港内の税関で会ったそうで、「大声で肩を叩いてくれて、みんながビックリでした。税関だったんである意味危険な人だと思いつつ…」と、笑いを交えて振り返る。
悲報を聞いた際は、「驚きました。最後の戦う映画監督と僕は思っていました。僕はあれほど戦えるのかなって」と、自身と対比した思いを。「そういう意味ではぜひとも若松監督にこの映画を観てもらって、『こんなんじゃ甘いぞ!』とか言ってもらって、『俺は東電を叩きのめすぞ』というのを言って、シビアな映画を撮ってほしかった。惜しい人を亡くしたと思います」と、悼んだ。
さらに思いは止まらず、園監督は「(若松監督の)遺志を継いで行きたいと思います。釜山空港で空に旅立っていく若松監督の姿を見たような気がします。若松監督の燃える闘魂を注入していきたいと思います」と、続けた。
映画『希望の国』は20日より公開!