
『第34回PFFぴあフィルムフェスティバル PFFアワード2012 表彰式』が28日、東京・東京国立近代美術館フィルムセンターで開催され、高橋伴明監督(63)、行定勲監督(44)、写真家・川内倫子氏、俳優・新井浩文(33)、映画プロデューサーの川村元気氏がそれぞれプレゼンターを務めた。
世界最大の自主制作映画のコンペティションで18日から28日まで開催。522作品の応募作のうち16作品の入選作品が期間中は上映された。今年の特徴として8ミリ映画はゼロということや、入選作中、5人が女性監督という時代の流れを伺わせるものとなった。最終日となる28日にグランプリ、ほか各賞が発表されることとなった。
まずは、特別設置された『日本映画ペンクラブ賞』から発表され、ささやかに幸せに暮らす女子大生が悪意の存在により世界を発見するという物語の『Please Please Me』の青石太郎監督(22)が挙げられる。ペンクラブ関係者は、「今この閉塞した社会というのを作品を通じてヒシヒシと伝わってくる思い」「スタンドアローン頼もしいヒロインがいた」と評した。
一般審査員による賞で“映画館で観たい”と思わせる『映画ファン賞』には、孤独な女子高生が初めて見つけた友情、絆、その心の闇に迫った『かしこい狗は、吠えずに笑う』の渡部亮平監督(24)。審査員からは、「教室の中での会話やりとりがよかった。惜しい点は要素を盛り込みすぎて薄くなったけど純粋に楽しめた」と評され、渡部監督は、「すごい多くの人に迷惑をかけたりして、これならやらなかった方が良かったなと思ったりしてましたが、やってよかったな」と、感無量だ。
革新的であり、既存の概念にとらわれることなく、チャレンジしている作品に対して贈られる日活賞の『ジェムストーン賞』は仲良し高校生男女3人組のすれ違う心の揺れを表現した『くじらのまち』で鶴岡慧子監督(23)。賞のコンセプト通り革新的だったとされ、「三角関係をみずみずしく描いている」と評された。
作品の優れたエンタテインメント性に贈られるホリプロの賞『エンタテインメント賞』は『かしこい狗は、吠えずに笑う』の渡部監督。ホリプロ関係者は、「弊社のタレントを使いたいと思う観点から審査しました。心の機微を描きつつもみずみずしい演技を引き出していて引きこまれました。青春映画からだんだん怖さを持っていって予想のつかないクライマックスも抜群の構成力で見る人を飽きさせない」と絶賛。『映画ファン賞』で後悔を語っていた渡部監督だが、このことについて、「役者の方に1ヶ月半でお願いしていたんですけど、2人とも演技経験がなくてけいこをやって僕が絶句しました。無理を言って1ヶ月半を3ヶ月に伸ばしてもらって、とにかく伸ばしてできたからできたと思います。本当にありがとうね」と、2人の女優へメッセージを寄せた。
審査員特別賞は3作。1作目について行定監督がプレゼンターを務め、熊本から上京した大学生の中途半端で空回りする愛しい日々が描かれた『故郷の詩』の嶺豪一監督(22)を読み上げることに。行定監督は、「這いつくばって生きる主人公」を評価した。
2作目はボーイッシュな女子高生を軸に浮遊する「女」のさまざまな一面を描いた『あん、あん、あん』のイノウエカナ監督(22)。プレゼンターの高橋監督は、「最初観だした時は寸止めというか、行き切れないというか、頼りないなと思っていたんです。けど、段々とそのリズムというか空気感というかそういうものに気持よくなっていました。自分のように還暦を過ぎたものには撮れない映画だと思いました。抑制された性欲がこの作品を支えたんだと思います」と評価し、感激のなか登壇したイノウエ監督は、「これがダメだったら死のうかなと思い詰めてました。(主演の役者らに)面白い景色を見せられるんなら生きたいなと思いました」と、個性的なコメントを残すことに。
3作目は、ぱっとしない男子高校生が実は真の姿は深夜ラジオ番組のスター的地位を持つハガキ職人で、下ネタ成分たっぷりな『stay チューン』の伊藤智之監督(26)。プレゼンターの川村氏は、いつか仕事をしたいなという観点から選んだといい、「こちらの評価軸と違うところで押してくる映画だった。最後まで見入ったし、作っている人の声が響いてくる映画でした」と評する。これに伊藤監督は、「選ばれるとは思っていなかった。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ではどんずべりだったので」と苦笑いしつつ、スタッフらへ感謝をささげた。
準グランプリは、工場で働く男たちの中学生男子のような日常を絶妙な距離感で描いた『魅力の人間』の二ノ宮隆太郎監督(25)が選出。プレゼンターの川内氏は、「自分のなかで普通にこの作品が浮かんだんです。監督の強い個性のキャラクターは主役ではないですが、役者としても素晴らしいし、表現者としても素晴らしいものを持っている方ではないかなと。非常に強いモチベーションというのを感じ、次が観たいなと思わせた」と、評すると、呼ばれた瞬間に「よっしゃ!」と声を上げていた二ノ宮監督は、「ファンの方に観てもらえる映画をまた作りたい」と、意気込んだ。
そして、グランプリは、鶴岡監督の『くじらのまち』が『ジェムストーン賞』に続いて輝くことに。プレゼンターに立った新井は、「自主制作とかそういうのはどうでもよくて、面白いか面白くないか、そこです。全作品を観てこんな言い方は失礼かもしれませんが、鼻で笑っちゃうところがありまして、今回の『くじらのまち』だけはあまりそういうのがなかった」と、作品に向き合い自身と同じ土俵の目線から評価。それだけに、「1つだけ穴を挙げれば、ニューハーフの演出が僕が最近ゲイの役をやったんですけどうちの方がクオリティーが高かった」と、本気で自身の作品と競合させる一面を見せ、場内は笑い声であふれた。
鶴岡監督は、「素晴らしい場に立てて胸がいっぱいです。頼りない監督で、この名に恥じないように一生懸命映画作りに励みたい」と、胸いっぱいに抱負を語ることとなった。なお、『くじらのまち』は第25回東京国際映画祭『日本映画・ある視点』部門にて招待上映されることが決定している。
【最終審査員の選ぶ3賞5作品】
◇グランプリ:『くじらのまち』鶴岡慧子監督
◇準グランプリ:『魅力の人間』二ノ宮隆太郎監督
◇審査員特別賞:『故郷の詩』嶺豪一監督、『あん、あん、あん』イノウエカナ監督、『stay チューン』伊藤智之監督
【PFFパートナーズの選ぶ賞】
◇エンタテインメント賞(ホリプロ賞):『かしこい狗は、吠えずに笑う』渡部亮平監督
◇ジェムストーン賞(日活賞):『くじらのまち』鶴岡慧子監督
◇映画ファン賞(ぴあ映画生活賞):『かしこい狗は、吠えずに笑う』渡部亮平監督
【特別設置】
◇日本映画ペンクラブ賞:『Please Please Me』青石太郎監督
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