リスクマネジメントコンサルティングを手掛けるニュートン・コンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:副島 一也)は、BCP(事業継続計画)策定済みの企業に所属する方1,000人を対象に、BCPの現状と課題を調査しました。
1. 調査の背景
日本におけるBCPの策定率は、東日本大震災を契機に年々向上しています(※1)。しかし、未曾有の大災害から13年が経過し、2024年の元旦には能登半島地震をも経験した今、その実効性という観点からもBCPの現状を捉えなおす必要があるでしょう。
本調査ではBCP策定内容や活動とともに、その実効性に関する状況と意識を調べ、有事に際して「本当に機能するBCP」には何が必要なのかを考察しました。
※1 内閣府「令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
※調査レポート「BCPの事実と真実」の詳細は https://go.newton-consulting.co.jp/20240306report/ をご覧ください。
2. 調査結果サマリー
1) 半数以下しかBCPが機能すると思っていない
2) 機能するBCPにするための課題は、社員の取組み意識の低さとBCPに関するノウハウの不足
3) 機能するBCPにはトップの関与が欠かせない
4) 機能するBCPには企業風土が影響する
1) 半数以下しかBCPが機能すると思っていない
BCP策定済みの企業に所属する回答者のうち、BCPが機能すると回答した割合は48%と半数以下にとどまっています。
自社のBCPは想定する危機が発生した際に機能すると思いますか?(全体)
また、「BCPが機能する」とした経営者・役員が63%、BCP事務局が62%と半数を超える割合となっていますが、事業部門は43%、コーポレート部門は42%と大きな隔たりがあります。
自社のBCPは想定する危機が発生した際に機能すると思いますか?(役職・役割別)
2) 機能するBCPにするための課題は、社員の取組み意識の低さとBCPに関するノウハウの不足
「社員の取組み意識が低い」と「BCPに関するノウハウが足りない」という回答が1位、2位となり、3位の「予算が足りない・少ない」以下を大きく引き離しています。
現状のBCPに対する課題について教えてください。
BCPが機能すると回答した組織と機能しないと回答した組織で最も差があるものを順位づけすると、1位が「社員の取組み意識が低い」であり、2位が「BCPに関するノウハウが足りない」「経営陣の取組み意識が低い」という結果となっています。
現状のBCPに対する課題について教えてください(BCPが機能すると回答した組織との比較)
3) 機能するBCPにはトップの関与が欠かせない
BCPオーナーが社長または事業責任者である組織の回答者のうち、61%が「BCPが機能する」と回答しており、BCPオーナーが社長または事業責任者ではない組織の回答は44%と大きな差が生じています。BCPのオーナーが社長または事業責任者のほうが「BCPが機能する」傾向が強くなっています。
自社のBCPは想定する危機が発生した際に機能すると思いますか?(BCPオーナー比較)
4) 機能するBCPには企業風土が影響する
企業風土は以下の4つに分類されることが多いといえます。
「伝統強制・組織不活発型(イヤイヤ型) ―働きにくい風土」
「伝統自由・組織活発型(イキイキ型) ―働きやすい風土」
「伝統強制・組織活発型(シブシブ型) ―管理者の統制が強い風土」
「伝統自由・組織不活発型(バラバラ型) ―集団としてのまとまり・帰属意識が弱い風土」
ついては、本調査においてもこの4分類を採用し、企業風土と機能するBCPの関連について調査しました。
「伝統自由・組織活発型(イキイキ型) ―働きやすい風土」に属する回答者のうち、64%が「BCPが機能する」と回答し、「伝統強制・組織不活発型(イヤイヤ型) ―働きにくい風土」に属する組織の回答者で「BCPが機能する」と回答した割合は44%にとどまり、20%の差が生じています。働きやすい企業風土を持つ組織のほうが、「BCPが機能する」と実感しているといえます。
自社のBCPは想定する危機が発生した際に機能すると思いますか?(企業文化・風土別)
3. まとめ
機能するBCPを備えている(と実感する)割合は48%であり、さらに組織のなかでどの階層がそのように実感しているかという点について分析すると、明確な傾向がみられました。経営層やBCP事務局はBCPが機能すると感じる割合が6割を超え、事業部門やBCPに関与しないコーポレート部門は約4割にとどまっています。階層別の実感には大きな乖離があることがわかります。
また、機能するBCPを備えている組織には、共通の特徴があることも明らかになりました。それは、BCPに対し経営層が関与する組織、伝統的な決めたことを順番にこなしていくいわゆるウォーターフォール型の組織ではなく、起きたことに都度対応していくアジャイル型の組織、働きがいのある企業文化や風土を備える組織です。
BCPは有事が発生しないとその真価を発揮しません。そして有事が起きることは稀であるが故に、BCPは形骸化しやすく、活動を継続しないと実効性は失われていくといえるでしょう。「我が社にBCPがある」ではなく「我が社のBCPは機能する」という社会の実現に向けて、本調査が少しでも役に立つことができれば幸いです。
注)数字の合計はパーセンテージの端数処理のために100%にならない場合があります。
【調査概要:BCPの策定内容・活動(事実)と実効性(真実)に関する状況・意識調査】
調査対象者 : BCPを策定している企業で、自社のBCP関連業務に携わっている方
サンプル数 : 1,000名
調査方法 : ウェブアンケート
調査期間 : 2023年7~8月
調査結果の詳細: https://go.newton-consulting.co.jp/20240306report/
【ニュートン・コンサルティング株式会社 概要】
https://www.newton-consulting.co.jp/
社名 :ニュートン・コンサルティング株式会社
所在地 :東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビルディング5F
設立 :2006年11月13日
資本金 :30,000,000円(2023年12月末時点)
代表者 :代表取締役社長 副島 一也
事業内容:リスクマネジメントに関わるコンサルティング
【サポート実績】
内閣府、内閣サイバーセキュリティセンター、経済産業省、一般社団法人全国銀行協会、東京ガス株式会社、三菱商事株式会社、積水化学工業株式会社、武田薬品工業株式会社、ヤフー株式会社、デル・テクノロジーズ株式会社、他、約2,000社の支援実績を有する
~お客様事例~