作曲家・新垣隆氏（45）とチェロ奏者・海野幹雄氏が8月25日、都内スタジオでサイレント映画『シロナガスクジラに捧げるバレエ』（監督：坂口香津美／配給：スーパーサウルス）完成発表会見に登壇した
震災後の世界を生き抜く11歳と8歳の姉妹の7日間の物語を描いたサイレント映画作品。新垣氏と海野氏は本作の音楽を担当し、作品の世界観を大きく広げている。
海野氏は、一昨年の秋ごろにオファーがあったそうで、内容に共感したことから快諾。その際に、新垣氏を誘ったことから2人で音楽を担当することになったという。新垣氏は「海の波に寄り添う形で作りました。ゆったりした流れだったり、映画とこれから私たちがどうするかという考えの大事な映画です」と、作品への思いを語る。
新垣氏といえば2014年2月に『週刊文春』（文藝春秋）で佐村河内守氏のゴーストライターとして音楽を提供していたことを発表。大騒動となったが、本作の録音予定時期もちょうどそのころにかぶっていたそうで、新垣氏と10年以上の付き合いで気心の知れている海野氏は、「彼は“会見”で忙しかったから」と、新垣氏をイジる様子も。
イベントでは、4曲を演奏。なかでも、本作の楽曲は海野氏によると、「万全の準備をしてはいたんですが、基本的には約70分即興で弾いていたんです。ですので、記憶を頼りにしか再現できない（苦笑）。だから、いま聴いたものは本編では違うかもしれません」と、ジャズのような感じなのだとか。実際に演奏が始まると、目の前で寄せては返す波のような、ときに強く、ときに優しい繰り返すような音色が場内を包むこととなった。
さらに、坂口監督は、2人が何つながりで仲良くなったのかと尋ねると、新垣氏は「スターウォーズつながりで」と、笑うと、海野氏は「それだけじゃなくて、食べるの大好き、話すの大好きで、ほかは共通点はないんです。あとは音楽が共通項で、2人とも音楽でしゃべれるかもしれない人です。公私とも楽しい関係ですよ」と、語った。
そこで、ゴーストライター騒動前と騒動後で新垣氏に変わったところはないかと海野氏へ質問が飛んだが、「鼻毛が出てない小綺麗な新垣さんになった（笑）。（騒動前は）着ている服ももっとヨレヨレだったんです。そこが一番かな。頭は変わってない。（新垣氏が）テレビに出ているというのはいろんな方から聞いていて、あっち側（芸能方面）の人になっちゃったのではと心配になったんですが、電話をして話すと本質は変わらないですね。でも、ゆったりした時間がないとしたらと思うと、すごく心配してます」と、心情を。新垣氏は、「映画の録音があったというのは自分では本当に救われる思いでした。大事な仲間と、大事なものを感じています。こういう機会を頂けるというのは本当に嬉しく思っています」と、しみじみだった。
ちなみに、坂口監督から本作への楽曲を担当してほしいという話をされたときに、お金が出ないと言われながらのものだったそうだが、新垣氏は「さすがにそれはないだろうと思いました（苦笑）。でも、監督の事情と趣旨とを話して、話し合って、みんなでいいものを作れればと思って」と、真面目な思いを話し、海野氏は「これで無料の仕事をいっぱいもらうようになっても困るんですが、必ずしもお金じゃなくても得るものがあるものに、意外に音楽家って食いつくんです」と、うなずいていた。
また、海野氏から、「今後、彼（新垣氏）とユニットを組んでみようと思っているんです。名前とかはまだ決まってないですが、年明けには。コンセプトは即興ができるということです」とも。ユニット名について、海野氏に尋ねると、「いいのが思い浮かばないので考え中です。わーっとやっちゃうとすぐ終わっちゃいそうなので。年内には必ず」と、話していた。
この日はほか、松下華菜、大久保妃織、新倉真由美、橘春花、山下直、落合篤子プロデューサーが登壇した。
映画『シロナガスクジラに捧げるバレエ』は9月19日より東京・渋谷のユーロスペースにて全国順次公開！
