作家・中沢けい氏と鈴木卓爾監督が7日、都内で映画『楽隊のうさぎ』（監督：鈴木卓爾／配給：太秦）トークイベント付き親子試写会を開いた。
中沢氏の同名作が映画化。静岡・浜松の花の木中学校吹奏楽部を舞台に中学生らの青春を描いたヒューマンストーリーとなる。生徒役はオーディションで選ばれた地元の中学生らが、心に迫る熱演を見せていることでも話題となっている作品だ。
まずは中沢氏から「3度観て3回ともおもしろかった。1回目はショーですから、うさぎが出た衝撃というのがありました。中学生時代を思い出しますね」と、原作者として出来に満足な様子を。
鈴木監督は吹奏楽部を舞台にしているため、多数の人数がいるが、その関係性の間に流れる空気感を捉えるため、思い悩むことが多かったそう。「みんなで輪になって、ピンポン球を投げて受け取った人がしゃべろうとか、プロデューサーと試行錯誤していたんです。『この状況下だったらなんて言う？』と、交代しながらゲームみたいに探しながらどうしたらいいんだろうというのを考えていたんです」と、手探りで模索して作り上げたという。
さらには、中学生のキャストならではの悩みもあったそうで、鈴木監督は「相当背が伸びるのが早くて」と苦笑いしつつ、「そんな成長期のときに映画がそばにいて、そんな成長していく過程という感じが映ると素敵だなと思って。子供って、僕達大人と時間の経ち方が違って、変化の度合いが激しいから、発散しているものがすごいなと思うんです。子どものみんなで映画を作りたいとなったときには、まずはカメラの前で生き生きとしていてくれるのが映画の準備としては正しいものなのかなと思いました。ただ、画面比おかしくないってにもなりましたけど」と、笑いを誘うことも。
本作へ込めた思いについて、「僕の中学校時代の放課後に聞こえていた吹奏楽部の音の源泉を映画にしたなと思うんです」という鈴木監督。それでも、「僕は音楽に音痴で、楽器を弾けないと思っていました。僕は音楽監督を頼って音楽の部分を撮っていたんです。でないと僕はこんなに素敵にみんなのことをこうやってちゃんと見れなかったんです」と、音痴であることを告白。
すると中沢氏も、「私も、小学生のときに、あなたはお口を開けているだけでいいって音楽の先生に言われました。それで、母親がピアノ教室に通わせてくれて、伴奏ならできるだろうと。ただ、うちの子からは、『お母さん家庭外でカラオケ禁止！』って言われています。そうすると、音痴同士でこの映画作っちゃったの？」とぶっちゃけ、場内を爆笑させることとなった。
2人の中学生時代の話になると、鈴木監督が当時同じ小学校から同じ中学校に上がった同級生と折り合いがつかず帰るのをずらして帰ったり、知り合った新聞部の同級生からの影響で「ガンダム好きの人で、同人誌とかも作っていて、日曜日も男女集まってガンダムの話をしていたのでオシャレだなと思っていたんです。それで、僕はアニメーションの世界に逃げていったんです」と、告白したり、本当は文芸部に入りたかったという中沢氏がたまたま見学で入ってしまった華道部に入部してしまったものの、「いまでも基本的なお花の扱いは分かりました。入院している時もこうしておけばいいんだと。校長先生から『一生の財産になる』と言われましたけど、そうなりましたね」と、語っていた。
ほかにも、鈴木監督が映画作りについて、「理想はジャズバンドみたいな5人組で、みんなのうまさをアンサンブルをさせて、みんなで掛け算になっていくというのを作れたら最高だろうと思っているんです」と、秘めたる思いを明かすなど、充実の内容となった。
中沢氏から、「音楽の好きな方、吹奏楽を経験なさった方にはぜひ観てほしいと思いますが、その次に観る時は吹奏楽をしていなかった方もお誘いいただきたい」とアピールしていた。
映画『楽隊のうさぎ』は12月14日より全国公開！
