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【編集長コラム】ベーヤン、涙でチンペイさんに感謝!チンペイさん、「2つの初恋が成就したのがアリス」

 日本を代表するフォークグループ『アリス』が10月31日~11月2日の日本武道館3DAYS『アリスコンサートツアー2013~It’s a Time~武道館ファイナルライブ』を終え、日本全国47都道府県をワンツアーで巡る全国ツアー64公演を完走。26年ぶりに出したニューアルバム『ALICE Ⅺ』からと『チャンピオン』『遠くで汽笛を聞きながら』など、至極の名曲たちを織り交ぜ、2時間30分で27曲を熱唱した。

 コンサート中盤、3人がそれぞれソロで歌う前に“語り”を入れるシーンがあり、キンちゃんは、「オイル(老いる)ショック」とダジャレで時の流れを語り、ベーヤンは、「僕は、ボーカリストとしての谷村新司を尊敬しております。あの人がいたから、僕はこんなに頑張ることができ…」と、涙を浮かべ、声を詰まらせた。チンペイさんは、「堀内(孝雄)の声とキンちゃんのリズムに、初恋をしました。初恋が2つも成就した。それがアリスなんだな」と、感慨深く語った。

 アリスは、1971年に“チンペイ”こと谷村新司(64)、“ベーヤン”こと堀内孝雄(64)、“キンちゃん”こと矢沢透(64)の3人で結成されたフォークギター2本にドラムという編成のバンド。46歳の私(編集長)が、30年前の高校生の頃に、初めて親にギターを買ってもらい奏でたのがアリスの曲だった。

 チンペイさん(谷村新司)のツバ付きの帽子を目深にかぶり、ウエスタンブーツというスタイル。ベーヤンの歌い終わった後の「サン キュゥー」という言葉などが、カッコよくて憧れた。

 そんな学生時代がよみがえり、あの頃は、行きたくても行けなかった、アリスのコンサートに、今回、日本武道館の2日目(11月1日)を観に行くことができた。ビデオやテレビなど映像でしか見れなかったアリスのライブ。ワクワクしながら日本武道館に向かった。

 これまで、さまざまなイベントやライブ取材で足を踏み入れてきた日本武道館。この日は、見渡す限り、46歳の私(編集長)と同世代やその上の世代の人たちが大半を占めていた。それでも、みんなの目はキラキラ輝きワクワクしているようだった。

 午後6時過ぎ、ステージが暗転し、バックバンドたちが入ってくると、自然と手拍子が起こり、徐々に大きくなっていく。3人が下手の階段を上がり、ステージに姿を現すと、歓声と拍手がひときわ大きくなる。それに、笑顔で大きく手を振り応える3人。

 赤いラインの入ったハットをかぶり、黒のベストに黒のパンツスタイルのチンペイさんと、黒いベストに黒いパンツ姿のベーヤンがギターを抱え、「永遠のセンター」(チンペイさん)であるキンちゃんが、光沢のあるベストに白のシャツを着て、ドラムセットに座る。

 1曲目がスタートするとアリーナだけでなく、スタンド席でも早くも立ち上がる姿が見られた。インタビュー(http://japan-newslounge.com/archives/99171参照)で、チンペイさんが、「2人のキーが一緒になってきて、以前から(2人の声は)似ていたんですが、今回は輪をかけて似てきたかも」と言っていたように、2人の似たような声質でのユニゾンやハモリを聞くと、気分は高校生になっていた。

 ベーヤンが歌いだすと、チンペイさんが首や身体を横に振って、ベーヤンを見つめる姿やチンペイさんが、ギターを縦にして弾く姿など、映像で見てきた光景が目の前に広がっていく。1番から間奏に入るときや間奏から2番に入る合間にベーヤンの「ハッ!」「ウォウォ」などの声が入れるのも、「そうそう、これこれ」と、1人で何度もうなづく。そして、1曲目終了から、ベーヤンの「サン キュゥー」が、武道館に響く。2曲立て続けにニューアルバムからの曲を奏ると、MCへ。

 チンペイさんが、「みんなぁ~、ただいまぁ~。今年アリスは5月3日から47都道府県、すべての街に歌を届けるというツアーをスタートしました」と、語りかけるように優しい声で語り出し、「今日は、悔いないように思いっきり弾けて行こうなぁ~」と言うと、「いくぞー、いくぞー、いくぞーブドウカーン(武道館)」と、盛り上げる。3曲目の『冬の稲妻』のエレキギターのイントロが奏でられると、会場の半分ちかくが立ち上がり、口ずさみながら、体でリズムを刻みながら手拍子をとって盛り上がる。

 ベーヤンが、歌う前のわずかな間に、みんなが歌いやすいように次の歌詞だけを先に言う。これも懐かしく、ベーヤンやチンペイさんなどがよくやっていたのを当時、映像で見ていた。そして、最後はベーヤンの決めゼリフ!「サン キュゥー ジョニー」と、次の曲も紹介。アリスの名曲たちが次々に飛び出し、会場の盛り上がりも、それに合わせてヒートアップしていく。

 中盤には、アリスの原点に返ったように、バックバンドを最小限にし、フォークギター2本に、キンちゃんのコンガで、しっとりしたバラード系の曲を新譜と名曲からピックアップ。デビュー曲の『走っておいでよ恋人よ』の後、各人のひとりMCからソロで一曲ずつ歌うパートへ。

トップバッターのキンちゃんは、「『走っておいでよ恋人よ』は、42年経った今も可愛くみずみずしく輝きは失われておりませんが、それを歌う3人とのギャップは広がるばかりです。昔の写真を観まして、2人(チンペイさんとベーヤン)とも色は浅黒く体引き締まり精悍な顔つきでしたが、ひとりの若者は枯葉を踏みしめる仙人のようになり、もうひとりの若者はゆるキャラと化し」と、笑いを取る。

 そして、「かくゆう私も、徹夜明けとかお酒を浴びるほど飲んだ後とか、翌朝に鏡を見ると顔は流れ、目鼻はとっ散らかり、こうやって老いていくんだと少なからず衝撃を受けます。これを使い古された言葉で“オイル(老いる)ショック”といいます」と、ダジャレで盛り上げる。

 続いてベーヤンは、「キンちゃんとチンペイさんともいろいろな思い出が折り重なって、よくみんなで支え合ったなぁと思います。アリスはたかだか10年しか活躍していないのに、みんなさんが温かく見守って下さる幸せなバンドだなぁと、つくづく思います。10年で区切りをつけて一人ひとり歩きだしたわけでございます。振り返れば、僕とチンペイさんが会わなければ、チンペイさんとキンちゃんが会わなければ、アリスはなかったわけてすよね。偶然の重なり」と、思いを馳せる。

 続けて、「10年を目途に、『じゃ、またね』と。僕は鳴かず飛ばずの日々が何年か続きました。その間、チンペイさんの歌が覆いかぶさるように聞こえてくる。<♪わ~れわゆく~青白き炎のままに~>(モノマネ調で)と。僕は、ボーカリストとしての谷村新司を尊敬しておりますので、彼のあの頑張りがなければ、逆に僕は頑張れなかった。今もって、ライバルではければ友だちじゃない(永遠のライバルでいるから、友だちでいられる)。あの人がいたから、僕はこんなに頑張ることができ……」と、涙を浮かべ、声を詰まらせる。会場からは温かい拍手が起きる。

 そして、歌唱の後、「改めて僕のアニキを紹介します。谷村新司」というと、チンペイさんは、「末っ子の堀内孝雄です」と、紹介し返す。音楽評論家の富澤一誠氏が、先のインタビューで、「ライブを観させていただいて、3人のバランスが活動休止前は、いびつになったときもあったけど、今は正三角形になっていると思いました」という感想がよくわかった。

 そのチンペイさんは、「ベーヤンの『帰り道』を聴きながら、いろいんなことを思い出しました。ベーヤンと初めてであった神戸。2人ともまだ学生でした。バンドで彼の歌声を聴いて“ひと声惚れ”をしました。歌の世界では、僕にとっては堀内は初恋の人。キンちゃんのリズム。“ひと聴き惚れ”をしました。リズムではキンちゃんが初恋でした。初恋が2つも成就した。それがアリスなんだなと。ちょうどこの武道館は思い出がいっぱいあって、アリスが一番忙しかったころ。僕が体を壊して入院しました。約1ヶ月間、全国コンサートを2人だけで続けてくれました。いま思っても、2人がいてくれなかったら」と、感慨深げに軌跡を踏みしめていた。

 後半は、『帰らざる日々』から『チャンピオン』まで、アリスと言えばという、至極の代表曲の第2弾。今度は、会場がほぼ全員総立ちで、手拍子も激しくノリノリで盛り上がり、アンコール2曲も含め、あっという間の2時間30分のライブが終了。明るくなった会場には、満足しきった、アリスの3人とともに完全燃焼しきった表情で満ちていた。

 ニューアルバムが数曲続き、懐かしの曲が入ると、ベーヤンも、「みなさん、ホッとした表情になってますよ。さっきまでは、このままどこへ行ってしまうんだろう不安そうでした」と、ファンの気持ちを代弁する。ファンの想いも十分承知して満足させ、アリス3人の「現在進行形」で進歩している姿も見せる、新しき曲と古き曲を融合させた、現在のアリスの魅力を全部出し切ったライブだった。

 なお、『アリスコンサートツアー2013~It’s a Time~武道館ファイナルライブ』の最終日(11月2日)の模様を完全収録(予定)したライヴDVD&Blu-rayがユニバーサルより発売決定!

 DVDは2013年12月18日に5250円(税込)で、Blu-ray(DVDの内容に加え、半年にわたるツアードキュメントを加えたスペシャル完全盤の予定)が2014年1月29日に予定価格7350円(税込)で発売予定。

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