女優・寺島しのぶ(40)が9日、都内・テアトル新宿で行われた映画『千年の愉楽』(監督:若松孝二/配給:スコーレ株式会社、若松プロダクション)初日舞台挨拶前の囲み取材に俳優・佐野史郎(58)、井浦新(38)、高岡蒼佑(31)、高良健吾(25)、染谷将太(20)とともに出席した。
中上健次の代表作『千年の愉楽』を若松監督が映画化。紀州の路地に生を受け、女たちに圧倒的な愉楽を与えながら死んでいく中本の男たちの誕生から死までを見つめ続けた路地の産婆・オリュウノオバ(寺島)の生涯を描いている。昨年10月、交通事故で死去した若松監督(享年76)の遺作となった。
同作は第69回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門招待作品、第17回釜山国際映画祭特別上映作品となり、注目を集めている。
主人公の産婆・オリュウノオバを演じた寺島は「初日は緊張します」と表情を強張らせたが、「きょうは監督がいらっしゃると思います」と、亡くなった若松監督に思いを馳せた。
そして、オリュウが初めてとりあげた中本の男・半蔵役の高良は「監督がいないことは寂しいけど、初日を迎えられたことが嬉しい。存在していても観られなかったら、その人にとってはないものなので、一人でも多くの人に観てほしい」、半蔵の従兄弟・達男役の染谷は「初日を迎えられて嬉しいですし、ずっと公開し続ける作品だと思うので、そのスタートがきょう」と、それぞれコメント。
半蔵の父親・彦之助役の井浦も「監督は晴れ男だったけど、きょうも見事な晴天ぶり。ここから始まるんだなという気持ち。現場では愛を持って厳しく接していただいた。役者は負けじと芝居でケンカを挑んで、信頼関係が生まれていきました。今回の映画で初めて参加した人たちもそうなったと思う」と、若松監督を思い意気込んだ。
改めて、報道陣から若松監督の存在について聞かれた寺島は、「ボスですよ、ボス。監督業はもちろん、スタッフさん、役者さん全部を包み込んでしまう大きな海のような大きな心の優しいボスでした」と返答。自身の役どころについては、「私は見守る役なので、そうそうたるメンバーの役者さんのお芝居を見ることに徹した」とし、共演者については、「皆さんそれぞれポリシーを持って監督に挑んでいたので、楽しいシーンが撮れました。凄くエネルギッシュな現場でした」と、ロケを振り返った。
オリュウの夫・礼如役の佐野は、若松ファミリーを“一座”と表現し、「バンドのツアーみたいな感じだった」と笑顔。さらに「監督の身体はここにはないけど、魂はスクリーンに入っている。ともに生き続けていると思う」と語ると、半蔵の腹違いの叔父・三好役の高岡も「一座という気持ちを持たせていただいた。凄くまとまった気がする」と、うなずいた。
寺島は昨年9月、第1子となる男児を出産。撮影時はまだ子供が生まれていなかったこともあり、生まれた後に同作品を観て、「違うでしょうね。監督もおっしゃってくださいました」と、気持ちに変化があったよう。また、寺島は「僕の映画に出た人は、必ず子供が生まれるんだ」と、若松監督が寺島が出産することを予言していたことも明かし、「『人間は鬼気迫るものを感じると子供ができるんだ』とおっしゃっていた。『千年の愉楽』が終わってから『寺島さん、絶対できるよ！』って言ってくださったら本当にできちゃったので、監督は喜んで一番最初に電話くださいました」と、若松監督との心温まるエピソードを披露。
井浦も「自分もそうでした」と、若松監督の作品出演後、子供が生まれたと同調し、寺島が「『キャタピラー』の後、大西(信満)君も生まれた」と続けると、佐野も「俺もそうかな。『寝取られ宗介』のとき」と、若松監督のジンクスを証明すると、寺島は「ほらね」と笑い、「自分の子供に関しては、監督に感謝したい」とした。
さらに寺島は「来年のアカデミー賞は『千年の愉楽』がいくんじゃないかな」と目標を掲げたが、若松監督は「僕はアカデミー会員じゃないからノミネートされないよ」と、自身の作品は日本アカデミー賞と縁がないと発言していたよう。だが、「私が賞をいただいたときに監督が来てくださったんです。『シャンパン美味いな～！』って飲んでらっしゃいました(笑)」とこぼし、報道陣も爆笑！ 8日に行われた日本アカデミー賞授賞式で同席し、『へルタースケルター』で共演した沢尻エリカ(26)とは、「髪の毛が金髪だね」と、会話したことも明かした。
また、弟で歌舞伎俳優・尾上菊之助(35)の新婚生活について聞かれ、「自立されて、別のところに住んでいるので、幸せにやっていただきたい」とコメント。菊之介の妻の瓔子さんについても「話しました。私にアドバイスできることはありません」と、語った。
9日よりテアトル新宿ほか全国公開。
