歌舞伎俳優・松本幸四郎(70)が2日、東京・六本木の東京ミッドタウン内でスペシャルトークショー『~私と歌舞伎のこれから~』を開き、MCは草野満代(46)が務めた。
今年4月の第5期歌舞伎座新開場を記念したトークショー。
幸四郎はイベント前に、現在開催中の歌舞伎展『歌舞伎‐江戸の芝居小屋‐』を鑑賞し、先代の活躍を見てきたことに、自身の父である8代目のことを振り返り、「病床の父は襲名の“めい”は“命”の“めい”だよと言われて命をつないでいくということをひしひしと感じました。400年先人の血がつないでくれたものだと思います」と、感慨深げ。
ただし、いまの歌舞伎界には思うところもあるようで、「われわれの中にあるのは伝統にぶら下がってしまっている部分があります。慢心やら甘えやらがあって、自分たちの本当の指針を忘れてしまうことがあるんです」と、戒める一面も。
さらに、現在では人気演目となった『勧進帳』の秘話についても明かすこととなり、「最初は人気がなかったんです」という幸四郎。その後、曲の素晴らしさ、物語の素晴らしさが認められ、7代目が全国巡業したことで人気演目となったそうで、「あるときは映画館に電源を引いて、演奏と合わせて3人で演じたこともあったそうです」と、歴史をひもといていた。
今後は後進の育成も期待される立場だが、「いろんな方法があるんです」と前置きした上で、「70になりましたけど、先輩や後輩を指導し、歌舞伎を指導するというのは私はいっさいそういう気はない。歌舞伎の芸は教えるというより教わるものの心ひとつです。歯を食いしばって汗水たらして自分の芸を見せようと思うんです。それを見ていた若い後輩たちがあの芸いいなと思ってくれるだけでいいと思うんです。死ぬまで舞台の上で汗水流して、少しでも良い舞台を見せたいと思うんです」と、熱弁。
「生身の舞台は一瞬で消えてしまうんです。みなさまの御心の中に残るんです。だから一瞬を永遠にしたいです」と、思いを語る幸四郎。
4月の歌舞伎座開場へは、昨年、中村勘三郎さんや、今年に入って市川團十郎さんが相次いで亡くなったことに、「歌舞伎は苦しいことになっています。自分はその苦しみを勇気に悲しみを希望に変えて行きたいと思っております。新しい歌舞伎座に向けて精進していきます。応援を頂きたいと思います」と、呼びかけていた。