東京・六本木で開催中の『第25回東京国際映画祭』の特別オープニング作品として上映された『JAPAN IN A DAY（ジャパン・イン・ア・デイ）』（監督：フィリップ・マーティン、成田岳）が22日、東北会場（東北大学）と東京会場（六本木ヒルズ）を結んで行われたパネルディスカッションを開催した。
東京会場には、フジテレビアナウンサーの“カトパン”こと加藤綾子（27）とプロ陸上選手の為末大（34）、フィリップ・マーティン監督、成田岳監督、コーディネーターのショーンＫが出席。東北会場には、早川敬之フジテレビプロデューサー、東北大学教授の川又政征、『シネマエール東北／NPO法人20世紀アーカイブ仙台』理事長の坂本英紀らが出席した。
同作品は、東日本大震災から1年後の2012年3月11日の映像をつのり、日本を中心とした世界12カ国から『YouTube』を通して寄せられた約8000件、総計300時間におよぶ映像を編集。3・11に思いをはせる人々の姿や、ありふれた生活、プロポーズ、出産など世界中の人々が送る日常がつながり、1つの物語をつむいでいく。
フジテレビのプロデューサーで、被災地の宮城県出身である早川敬之が、投稿映像で作り上げた、ソーシャルネットワーク・ムービーの『LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語』（2011年）を監督したリドリー・スコットに、「共同制作しませんか」と提案した一通のメールから始まった。
マーティン監督は、「何百時間、何千本という膨大な量の映像が送られてきて、それを見ることから始めた。それから、ストーリーをどうやって形作っていくかが大変な挑戦でした」と、製作過程を振り返った。
気をつけたポイントとしては3点だという。
・素材を見ている時に、自分たちに何が響くのか。自分たちが泣いたり、ハッピーになったりといった反応があるのか。
・3・11あれから1年を踏まえているが、過去だけを振り返る作品にはしたくなかった。振り返りつつ、前を見る作品にしたかった。
・“共同監督”と呼んでいる“投稿された方々”の希望、情熱を反映させたい
一方、成田岳監督は、「切りとり方によっては意図的にメッセージを流せるので、中立を保ち、バランスを取ることに苦心した。（共同監督の）代表として1本の映画にしたてる重要な任務があるが、（それぞれの思いを）投影しない訳にはいかない。そうすると、どうしてもおしつけがましく、感じてくださいになってしまう。この映画を感じてくださいという“落とし”にはしたくなかったので、バランスのとり方を一つ一つ検証していった」と、とにかく、中立でバランスに最新の注意を払ったという。
その結果、被災地の家族が出てくるシーンで、姉弟が外で遊んでいるが、姉は放射能を理解しているので、「外で遊んではダメよ」と言われると、部屋に入るけど、弟は「なんでダメなの」と泣いているシーンがある。これなどは、今の被災地の現場をわかりやすく取り上げられているいい例である。
また、犬の散歩をしているシーンがある。これは、「あぁ、瓦礫が片付いて、犬の散歩ができるまでになったのか」と、映像の裏側に1年間の歴史を見る人もいれば、日常過ぎて、全く何も感じない人もいる。でも、「メッセージは見る人の数だけある」と、いうスタンスのいい例で、本当に日常の何げないシーンを観た人がどう感じるか。できるだけ編集者側のファクターは取り除いた。
2013年、2014年の『JAPAN IN A DAY（ジャパン・イン・ア・デイ）』と続編はとの問に、早川プロデューサーは、「来年もう一回というと俗っぽい」と苦笑いしたが、マーティン監督は、「継続していくと素晴らしい企画になる。日本の“ある1日”のスナップ映像は面白い。ストーリーは完結しているわけではありません」と、継続すべきと語った。
同映画は、11月3日よりロードショー
