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羽佐間道夫さん声優口演への熱い思い!「ライブの空気感があるというのに醍醐味がある」【後編】

羽佐間道夫さん声優口演への熱い思い!「ライブの空気感があるというのに醍醐味がある」
羽佐間道夫さん声優口演への熱い思い!

 【前編(羽佐間道夫さん 声優口演の準備は半年以上前から!「稽古もちょっとハードなんです」)より】

 ――声優口演には毎年、大物の方のご出演と同時に新人の方の顔ぶれも見ますが、何か意図はあるのですか?
 これは僕の狙いなんです。新しい人たちをベテランの中に交ぜて、同じ目線でしゃべり合うということは気をつけています。われわれは技術を売っているわけだから一度舞台にあがれば、新人も何もない。技術が高まってくれば、それが一番いいことで、古い人がうまくて、新しい人がまずいとは限らないわけだから。逆に、それがみんなの中で、なんか気持ちがリラックスできるという雰囲気につながっているんです。この前の稽古では、小西(克幸)にもう1回ということで、スケジュールを取ってくれと、もう1日呼んでやったことがあったんです。本人はそんな扱いをされたことないと思いますよ。

 ――それだけ作るものには妥協しないということなんですね。その中でも心強い存在などはいらっしゃいますか?
 いままでチャップリンが多くて山寺はほとんどチャップリンをやっていたんです。彼は、シンガーソングライターみたいなもので、書いて歌って自分で台本つくってということをやってきますから、そういう意味では強い味方ですよ。

 ――これまでの声優口演を通してみて何か思いはありますか?
 老若男女が集まるレパートリーってなかなかないんだよね。飛び出たスターは、その世代が支えてて……。たとえば、矢沢永吉と福山雅治の世代ってお客さんの年齢層が違うじゃない。でも、声優口演だけは、下は小中学生から上は、「この作品見たことあるんだよな」というおじいさんとかおばあさんまで孫と一緒に手をつないで来る、どんな世代でも一緒に観られる。家に帰って、「あそこ良かったな」って言ってもらえるコミュニケーションツールになればというのが僕達の一番の願いですね。よく、おじいさんが「若い人の言うことがさっぱり分からない」と嘆いたりするんですが、声優口演で若い言葉をアドリブしたりするとなんのことを言ってるのか分からないというリアクションになることがよくあるんですよ。それで家に帰って若い人に、その言葉を教えてもらう。逆に、若い人が分からなかったらおじいさんたちから教えてもらう。歴史を遡ることもできるし、新しい歴史を目撃することもできるという思いですね。年齢制限なくファンを掴みたいというのが大前提ですよね。

 ――その願いの原動力になっているのは?
 好奇心が湧くような、いろんな年代の人が一緒に和気あいあいと笑える和やかな雰囲気を劇場空間の中に作り上げたいんです。それと、声優で田中真弓とか野沢雅子とかはアニメ世代で圧倒的に人気があって、「あっ!ワンピースの人だ!」みたいに、普段とても接触できない中でのある種の驚きも感じてもらえたらと思っています。

 ――今回のしたコメ声優口演の見どころ、聴きどころはどこになりそうですか?
 10年ぶりに邦画が出てくることだよね。いままで、チャップリンとかハロルド・ロイドとか三大喜劇王を追いかけてきたけど、初めて小津安二郎という日本の名匠といわれた人になっています。ただ、『淑女と髯』が75分あるから長いんだよね(笑)。

 ――それは長いですね!
 75分、1本でつながっているから一気にやりたいと構想しています。スタッフは「途中で休みましょう」と言っているんだけど、途中で休んだらくじけそうなんです。これはみんなの意見を聞いてからとは思うんですけど。山寺宏一とかに聞いてみて、“台本が重くて”とかはあるかもしれません(苦笑)。

羽佐間道夫さん声優口演への熱い思い!「ライブの空気感があるというのに醍醐味がある」
したコメメインビジュアル

 ――そうすると、新たな挑戦になりそうですね。
 そうだね(笑)。今回の『淑女と髯』は、小津安二郎さん20代のときの作品だから外国の空気を取り込んでそれを映像に出そうという洒落た部分が出ているんじゃないかな。その洒落た部分を観てもらいたいかな。その後の、『東京物語』とか『お茶漬けの味』とかにつながっていく、起点のような作品。小津さんってローアングルで撮っているのが特徴でしょ。その走りがあちこちに出てますね。専門家に言わせるといろいろな言い方があると思うけど、東郷青児はこういう絵、ゴッホはああいう絵みたいに、小津さんにはこういう画というのが頑としてあったと思いますよ。

 ――声優口演の今後の展開はどんなことを考えていらっしゃいますか?
 吹き替え番組とかアニメーションが、俳優と声優という枠を取っ払って、俳優が声優の方になだれ込んできている、声優も大塚明夫とか高木渉とかがどんどん大河ドラマに出て行くというような交流というか、枠が外れきていると思う。これからは声優口演ももしかしたら、『吉永小百合さんが来てやりますよ』ということが生まれるかもしれない。そうしたら、もうちょっといろいろ膨らむんじゃないかと思っているんです。劇場でライブで同じ時間帯で、同じ時間を共有しあっているのはとても大切なことでね、録音したものを観るのとはちょっと違うんですよね。やっぱり、そういうライブ感がないと、と思っていて、たとえば憧れの声優が自分と同じ空間で同じ空気を吸っているというのはとても重要な気がするんです。いま起こっている、ライブの空気感があるというのに醍醐味があるんじゃないかなって思っています。

 ――そういった新しいことに次々に挑戦されるというのは、羽佐間さんご自身が胸に抱いている夢、目標といったものなのでしょうか?
 夢……というか、僕もそんなに長く生きてるわけじゃないから、そろそろ次の世代に渡していかなきゃいけないと思うし、それは山寺たちがやってくれるとは思うんだけど……でも、できればそうしていきたいね!

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 『声優口演ライブ したコメmeets 小津安二郎』は9月16日の午後6時30分から浅草公会堂で開催!

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